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中国証券監督管理委員会(CSRC)は昨年、「上場会社スピンオフ規則(試験施行用)」を公布・施行しました。新規則には、A株上場企業のスピンオフ子会社の国内・海外上場について、スピンオフの条件、実施手続き、情報開示、ならびに仲介業者による確認・管理について、具体的規定が設けられました。

新規則の施行後、A株上場企業23社が、国内証券市場に子会社をスピンオフ上場させる意向を表明しています。このうち、5社が上海証券取引所と深圳証券取引所のメインボードに、3社がスターマーケットに、7社がChiNext市場に、2社が北京証券取引所に上場を計画しており、残りの6社はまだ、上場を計画している市場を発表していません。

2022年以降、子会社をスピンオフし、国内証券市場に上場することが、大半のA株上場企業の第一選択肢になっています。このようにスピンオフが注目を集めるなか、本稿では、現行の規制体制において重視すべき法的問題を分析します。

新規則

Zhu Ning, Chance Bridge Law Firm
Zhu Ning
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新規則の第2条では、上場会社のスピンオフについて、子会社として上場するためにその事業や資産の一部を切り離すことを意味すると、明確に定義されています。したがって、スピンオフとは本質的に、資産や事業の再編や統合です。標準的なIPOとは異なり、スピンオフされる事業や資産は、実際には異なる法人が運営または保有している場合があります。同業種・同業態の企業を、同一システム内に置くことによる商業上のメリットと、水平的競争の解消というコンプライアンス上の配慮を踏まえると、事業や資産の再編は、スピンオフ・上場に必要な要素です。

新規則の第6条では、スピンオフされた子会社の独立性に関し、具体的な要件が規定されています。これには、水平的競争や関連者間取引に関する規制要件の遵守や、資産、財務、組織、人事における独立性の維持、独立性に重大な瑕疵がないことなどが含まれています。

一般の上場企業とは異なり、スピンオフされた子会社と上場企業は、同一の連結決算書と同一の制度に含まれ、通常、人事交流や資本交換、共同仕入・販売、さらには資産や生産管理システムの共有が行われます。

そのため、スピンオフ子会社のIPOにおいては、事業、資産、財務、組織、人事の独立性に関する問題を解決することが一層重要になります。先般、中国の自動車メーカー、BYDが、BYD Semiconductorのスピンオフ上場を中止しました。同社では、営業利益に占める関連当事者への売上の割合が比較的高く、IPO審査においてこの点に疑問や懸念が集中し、上場への障害になりました。新規則の下では、スピンオフ企業のIPOの場合、事業や資産の再編と子会社の独立について一般企業以上に留意する必要があります。

事業再編

Xu Guangzhe, Chance Bridge Law Firm
Xu Guangzhe
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スピンオフと上場の過程では、事業や資産の再編を通じて、上場される資産パッケージが最終的に同一の上場企業に組み込まれ、類似事業の統合や別種の事業の分離が行われます。実務上、資産再編は、株式譲渡、資産譲渡、企業分割、合併などを通じて実施されるのが一般的です。

映像監視機器メーカーのハイクビジョンが、クラウドプラットフォームとスマートホームサービスのプロバイダーであるHangzhou EZVIZ Networkをスピンオフした事例(開示前)では、両社間の資産のスピンオフは、主にオフィス機器、無形資産、生産設備などの資産の譲渡を通じて行われました。譲渡価格は、ほぼ正味帳簿価額で算定されました。

上海電気集団がShanghai Electric Wind Power Groupをスピンオフした事例では、再編は合併を通じて行われ、上場する企業が風力発電装置関連事業を営む他の子会社を合併しました。

これらの事例から、スピンオフと再編の過程には、上場される企業の業歴、重要資産の変化、事業構造の変更などが関係する場合があることがわかります。

法的な観点からは、株式譲渡や資産譲渡および合併の際、特に、資産の譲渡価格が著しく異常である場合や、株式の価格が純資産価額よりも低い場合などは、上場手続きの間に問題が生じる可能性があるため、価格の公平性の問題に特段の注意を払う必要があります。特に重要なのが、再編手続きの遵守です。親会社が上場企業であるため、社内のガバナンス規定に定められた意思決定手続きに従って再編を進める必要があります。

国有企業においては、該当する資産の再編を行うには、国有資産に関して必要な承認、審査、評価、申請手続きを経る必要があります。実際に、適切な手続きを行わなかったために、業歴や資産売却の点で不備が生じることも多いのです。

一方、資産や事業の再編の過程において注意を要するのは、業務契約の譲渡、当座預金の分割、資産の閉鎖と譲渡、従業員の労務関係の譲渡、業務に要する資格の譲渡、特殊な再編の場合の税務コンプライアンス、ならびに資産・事業・人員の分類と効果的な分割についての明確な根拠などです。さらに、新規則では、スピンオフの対象に含められる資産に制限が課されます。

以下に該当するものを、スピンオフ子会社の主要な事業または資産にすることはできません。

(1)過去3会計年度において、上場会社が募集株式や資金調達により実施した出資を受けた事業または資産(ただし、当該子会社が過去3会計年度に使用した調達資金の合計が当該子会社の純資産の10%を超えない場合を除く)

(2)過去3会計年度において、上場会社が重要な資産再編を通じて取得した事業または資産

(3)IPOおよび上場時における上場会社の主たる事業または資産

スピンオフ子会社の独立性

スピンオフと上場の過程は、スピンオフされた子会社の独立性を確立する過程でもあります。証券市場の投資家の安全を確保するため、スピンオフ子会社は親会社から独立して運営され、これにより、不当な関連者取引や重大な悪影響を及ぼす水平的競争、ならびに便益移転、利益移転、債務回避につながる問題を回避します。

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事業、資産、財務、組織、生産、人事においてスピンオフ子会社が独立性を保持していることが、上場の必須条件です。また、独立性に重大な瑕疵がないことは、IPO審査においても焦点となります。

実際、ブランドの連携、不明瞭な資産分割、独立した仕入・販売ルートの確立の難しさなどの要因により、スピンオフ子会社の独立性に関して多数の問題が生じることも多いのです。そのような問題の例には、生産、財務、事務所、人事を管理するシステムの共有、ブランドの相互認証、ドメイン名などの資産の混在、不明瞭な研究開発成果の所有権帰属状況、関連会社売上への大きな依存、高い主要顧客重複率などがあります。

新規則では、スピンオフ子会社の独立性に重大な瑕疵があってはならないと明確に規定されています。しかし、「重大な瑕疵」のテストは、スピンオフ後に役員と財務担当者の相互雇用があってはならないという明確な規定を除けば、かなり漠然としています。

BYDがBYD Semiconductorのスピンオフと上場を中止した事例では、報告対象期間の各年度において、BYD Semiconductorの関連会社売上は営業利益の55%、59%、63%となっており、減少する兆しをみせることなく毎年増加しています。

同じくIPO申請を取り下げた美的集団の子会社であるMidea Intelligent Lighting & Controls Technologyの場合、報告対象期間の関連会社売上は営業利益の34%、24%、21%となっています。また、報告対象期間の終了時において、美的集団との間で多数の顧客が重複していました。

電池材料メーカーのGEMがJiangxi Green Recycling(GER)のスピンオフと上場を中止した事例では、GEMは、スピンオフと事業再編後のGERが独立して操業した期間が2年未満になることが、その理由であると公表しました。

留意すべき重要な点

関連事例や過去の経験から判断すると、スピンオフされる子会社は、その独立性の維持のため、以下の点に注意する必要があります。

• ブランドや商号の独立性の維持。独立したブランド、商標、独自に形成された営業権を保有するのが望ましいでしょう。
• 技術・研究開発の独立性の確保。中核技術が親会社のものと混同されることなく、独自の研究開発スタッフが親会社から独立して研究開発、特許出願、技術変革を行っていることが必要です。
• 生産と販売の独立性の維持。独立した仕入れ・販売ルートを確立し、顧客の重複を減らし、生産および事業のために独立した拠点と設備を備え、独立した生産管理システムを保有する必要があります。
• 財務管理の独立性の保持。グループの影響力や管理が及ばない資金を保有し、グループに職務を持たず、グループから報酬を得ていない独立した財務担当者を設置し、企業資源計画や事業の計画・連結などの独立した財務システムを使用しなければなりません。

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インド

インドの資本市場とは、金融市場のうち有価証券の発行と譲渡に関連するものを指し、こうした市場では、株式と債券から構成される資本の発行や取引が行われています。資本市場では、株式、無担保社債、債券などの有価証券を扱い、企業は企業活動に必要な資金を調達するために、資本市場にアクセスします。

インドの資本市場は、さまざまな政府の経済改革や規制措置によって、ここ数年間で発展を遂げてきました。

市場

Sanjay Asher, Crawford Bayley & Co
Sanjay Asher
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資本市場は、相互に依存し合う2つの構成要素である、プライマリーマーケット(発行市場)とセカンダリーマーケット(流通市場)に分けられます。

プライマリーマーケットでは、企業、銀行、銀行以外の金融機関、中央政府、州政府、および公共部門事業などの発行体による、有価証券の新規発行を扱っています。

この市場を通じて、運転資金需要を満たすための設備投資、未開発/開発済みプロジェクト、借入金の返済または期限前返済、一般の企業目的などのために、投資家から企業へと資金が提供されます。

プライマリーマーケットでは、証券の公募は、目論見書として知られる募集要項によって、有価証券を募集する形で行われます。企業は、新規株式公開(IPO)を通じて、初めて自社の有価証券を公開します。IPOに加えて、企業は、適格機関による募集(Qualified institutions placement:QIP)、株主割当発行、株式の第三者割当、私募、追加募集(FPO)、米国預託証券やグローバル預託証券などの発行により資金調達を行っています。

セカンダリーマーケットまたは証券取引所は、最初にプライマリーマーケットで公開され、証券取引所に上場された有価証券を売買するための市場です。

有価証券は、証券取引所に登録されたブローカーやサブブローカーによって、セカンダリーマーケットで取引され、プライマリーマーケットでの最初の購入者が、興味を持つ購入者に対して、互いに了承した価格で、有価証券を再販売することができます。

セカンダリーマーケットは、投資家が有価証券を売買するための連続取引市場を構築することにより、市場にすでに存在する有価証券に対して、流動性と市場性を提供します。このように、セカンダリーマーケットは、プライマリーマーケットの成長や資本形成を促すため、資本市場の根幹と呼ばれることが少なくありません。

取引活動

Viplaw Kashyap, Crawford Bayley & Co
Viplaw Kashyap
アソシエイトパートナー
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現在、インドでは、ボンベイ証券取引所(BSE)、国立証券取引所(NSE)、マルチ商品取引所、カルカッタ証券取引所、メトロポリタン証券取引所、国立商品デリバティブ取引所、インド商品取引所の7つの証券取引所が機能しています。

2022年末現在、インドでは5313社が、BSE、NSE、およびマルチ商品取引所に上場しており、インド全体の時価総額は283兆インドルピー(3兆4700億米ドル)に上ります。

資本市場の主な参加者には、企業、銀行、銀行以外の金融機関、政府、公共部門事業(PSU)、法定組織、その他の組織などの有価証券発行者、適格機関投資家、アンカー投資家、外国ポートフォリオ投資家、オルタナティブ投資ファンド、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ、エンジェルファンド、個人富裕層、個人投資家、年金基金などの投資家、株式ブローカー、サブブローカー、株主名簿管理人、発行指定銀行(bankers to an issue)、信託証書受託者、発行登録機関(registrars to an issue)、マーチャントバンク、引受業者、預託機関、預託機関参加者、信用格付け機関などの仲介業者が含まれます。

規制

資本市場は、インド証券取引委員会(SEBI)によって規制されています。SEBIは、有価証券における投資家の利益を保護し、適切と思われる証券市場の発展と規制を促進することを目的として、1988年に執行機関として設立され、1992年インド証券取引委員会法(1992年SEBI法)によって、1992年に法的権限を与えられました。こうした施策には、証券取引所やその他の証券市場における事業の規制、不正かつ不公正な取引慣行の禁止、投資家の教育や仲介業者の育成の推進、証券のインサイダー取引の禁止、株式の大量取得や企業買収の規制、仲介業者の登録と規制、仲介業者や自主規制組織の検査、調査、監査の実施などが含まれます。

また、SEBIは、準司法権、準立法権、準行政権に加えて、非公式なガイダンスを発行する権限も有しています。1956年証券契約(規制)法および1992年SEBI法の規定に基づき、SEBIには資本市場のさまざまな側面を管理する規制を制定する権限が与えられています。

有価証券

Aayush Virani, Crawford Bayley & Co
Aayush Virani
アソシエイト
Crawford Bayley & Co(ムンバイ)
電話: + 91 98199 13196
Eメール: aayush.virani@crawfordbayley.com

資本市場の商品は有価証券と呼ばれています。「有価証券」という用語は、1956年証券契約(規制)法に基づいて定義されており、法人企業またはその他の法人の株式、端株株券、債券、無担保社債、無償還社債、またはその他の同等の市場性のある有価証券を含みます。

有価証券の例としては、普通株式、優先株、異なる議決権を有する株式、完全転換社債、非転換社債、および任意転換社債を含む無担保社債、債券、外貨建転換社債、外貨建他社株転換可能債、インド預託証券、派生商品、先物、オプション、ワラント、不動産投資信託、インフラ投資信託、証券化債務証券、地方債、および上場投資信託などがあります。

預託機関とは、株主の有価証券が、株主の要求に応じて、預託機関参加者を通して、電子的形態または証書発行を伴わない形で保有されている会社のことを指します。預託機関では、有価証券の取引に関連するサービスも提供しています。

1996年預託機関法第2条(e)に従い、預託機関とは、2013年会社法に基づき設立、登録され、1992年SEBI法第12条(1A)に基づく登録証明書を付与された会社を意味します。株式の電子管理(Dematerialization)とは、投資家の物理的な証券を、電子的形態の同等数の証券に変換するプロセスを指します。

預託機関参加者は、預託機関の代理人として、投資家への対応や、預託サービスの提供を行います。SEBIの要件に沿って、登録預託機関参加者には、公的金融機関、指定商業銀行、インドで営業している外国銀行、州金融公社、株式保管人、株式仲買人、証券決済会社または決済機構、ノンバンク金融会社、および発行登録機関または株主名簿管理人を含むことができます。

現在、インドには国立証券預託機関(National Securities Depository)と中央預託サービス(インド)〔Central Depository Services (India)〕の2つの預託機関があり、両預託機関が2022年末において保有する登録預託機関参加者の数は、それぞれ289と640となっています。

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