台湾の遺産計画における世代交代への対応

    By Frank H F Lin・Salina Chen・Chaolong Chen / Lee and Li
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    台湾は、プライベート・ウェルスの歴史において重要な転換点を迎えています。世界的に評価される半導体、エレクトロニクス、製造業を築き上げた世代が、グローバルな視野を持つ次の世代へ資産を移転しつつあり、これは台湾の近代史における最大級の世代間資産移転の一つになっています。

    この変化は、台湾内の法制の発展、対外的な透明性基準の強化、そして海外資産構成の複雑化を背景に進行しています。

    個人顧客、ファミリーオフィス、およびそのアドバイザーにとって、台湾固有の法的環境を理解する重要性は、かつてないほど高まっています。

    台湾民法における遺留分制度

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    Frank H F Lin
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    台湾の相続法は民法により規律されており、同法は、強制的な留保分(遺留分)を中核とする法定相続制度を定めています。留保分とは、遺言、生前贈与、または第三者信託によっても侵害できない、相続分の固定された最低保障を意味します。この遺留分制度は、台湾における相続計画全体が前提として組み立てられるべき基本的制約です。

    民法は、相続人の順位を次のとおり定めています。直系卑属、父母、兄弟姉妹、祖父母。生存配偶者は、権利を有する相続人の順位(類型)に応じて、これらと並存して相続権を有します。重要な点として、台湾には、米国、または英国の相続計画で一般的な「生存配偶者控除(配偶者非課税)」に相当する制度がありません。配偶者は他の相続人とともに、法定の比率に従って相続することになります。

    遺留分の権利は法定相続分を基準として定められています。直系卑属、父母および生存配偶者は、それぞれ法定相続分の2分の1を受け、兄弟姉妹、および祖父母は3分の1を受けます。

    遺言または生前贈与がこれらの権利を侵害する場合、影響を受けた相続人は、遺留分返還請求をおこなうことができます。この権利は、遺産が保護される閾値を下回る程度に遺産を減少させる生前贈与にも適応されます。

    遺言の方式について、台湾は5つの方式を認めており、相当規模の遺産については、公証人の前で2人の証人が立ち会って作成する公正証書遺言が強く推奨されています。自筆証書遺言は低コストである一方、争いとなることが少なくありません。複数の管轄地に資産を有する一族については、該当する準拠法(現地法)により規律される並行的な遺言が必要となるため、各管轄地のアドバイザー間で慎重な調整が求められます。

    台湾信託法はオフショア信託を課税対象とする

    Salina Chen
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    台湾は1996年に信託法を制定し、委託者が移転した法的権原を受託者が保有し、信託契約書に従って受益者のために信託財産を管理するという、民法上の信託枠組みを確立しました。

    2000年交付の信託業法は、専門的受託者の免許制度を規律しています。実務上、多くの富裕層は、規制上の監督を受ける地元銀行の信託部門を利用していますが、オフショアの選択肢と比べて、オーダーメイドの柔軟性に欠ける場合があります。

    プライベート・ウェルス・プラクティスで用いられる主要な信託類型は、死亡により効力が生じ、未成年または障害のある相続人のために資産を保有し、時間をかけて分配するために用いられる遺言信託、および委託者が子、または孫の利益のために資産を移転する生前の第三者信託となります。後者は設定時に贈与税が課されますが、その後の値上がり益は課税対象となる遺産から外れて蓄積されるため、長期的な計画上のメリットが大きくなります。

    台湾に関係する多くの一族は、オフショア信託ストラクチャーも構築しており、一般的にはケイマン諸島、英領バージン諸島(BVI)、バミューダ、香港、またはシンガポールで設定されることが多くなっています。これらは通常、海外の投資ポートフォリオ、不動産、またはオフショア持株会社の持分を保有する目的で用いられます。

    もっとも、こうしたストラクチャーの台湾における税務上の取扱いは依然として複雑です。台湾居住の受益者への分配は、課税所得、または非課税の元本返還として分類されるほか、代替ミニマムタックス(ATM)制度により、オフショア信託の所得が台湾の課税ベースに取り込まれる可能性があります(2023年から施行されている台湾のCFC(Controlled Foreign Company)ルールを含みます)。この曖昧さにより、クロスボーダーのストラクチャーについて助言する際には慎重な対応が必要となります。

    台湾の遺産税・贈与税の税率

    Chaolong Chen
    Chaolong Chen
    アソシエイト・パートナー
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    台湾の遺産、および贈与税法は、台湾に住所を有する個人の全世界資産に課税するものです(海外の税額控除による救済の対象となります)。現行は、累進税率であり、課税遺産額が5621万台湾ドル(2億8500万円)までが10%、5621万〜1億1242万台湾ドル(5億7100万円)が15%、1億1242万台湾ドル超が20%となります。基礎控除は1333万台湾ドル(6760万円)です。

    主な控除として、生存配偶者控除553万台湾ドル(2800万円)、直系卑属1人当たり56万台湾ドル(280万円)、生存する父母一人当たり138万台湾ドル(700万円)、葬儀費用として一律138万台湾ドルがあります。

    贈与税は遺産税と同様の税率構造を採用し、台湾に住所を有する個人による生前の無償移転に適用されます。贈与者1人当たり年間244万台湾ドル(1240万円)の非課税枠を活用することで、長年にわたり一貫して実施されてきた体系的な贈与プログラムにより、最終的な遺産税負担を大幅に軽減することができます。

    重要な制約として、クローバック(取り戻し)ルールがある。すなわち、死亡前二年以内に特定の近親者へ贈与された資産は課税遺産に算入し直され、既に納付された贈与税は控除(クレジット)される。この点は、直前の移転ではなく、早期かつ継続的な計画の必要性を強く示している。

    代替ミニマムタックス(AMT)は、基礎所得が750万台湾ドル(3800万円)を超える部分に対して一律20%を課し、100万台湾ドル(500万円)を超える海外源泉所得を計算に含めます。この規定は、オフショア・ストラクチャーを保有する台湾居住者に大きな影響を及ぼしており、海外信託やオフショア会社の利益は、通常の台湾源泉徴収税が発生しない場合でも、AMTの納税義務が発生する可能性があります。海外資産を大きく保有するクライアントについては、毎年のAMTのシミュレーションが不可欠です。

    台湾のファミリービジネスにおける事業承継計画

    台湾の企業環境は一族が支配する企業によって特徴づけられており、世代交代に伴う法務、およびガバナンス上の課題は、実務におけるプライベート・ウェルス案件の中でも最も複雑な部類に入ります。これらの企業は通常、台湾の株式有限会社、ケイマン諸島、または英領バージン諸島(BVI)のオフショア持株会社、場合によっては台湾証券取引所、または台北取引所に上場する事業体を組み合わせた、多層的なやり方で保有されています。

    非上場会社株式を一族内で移転する場合、贈与税、または相続税の影響が生じます。株式評価は一般に、税務当局が定める純資産価額(簿価)方式によっておこわれ、また譲渡益に対するAMTの適用可能性もあります。上場株式の譲渡益は所得税が非課税のままであり、事業承継戦略の一環としてIPOを検討する一族にとって、有意なインセンティブ要因となっています。

    法的文書の整備にとどまらず、洗練された一族は、そのガバナンスの基盤整備、すなわち、正式なファミリー・カウンシル、ファミリー憲章またはチャーターを通じて、共有価値観、意思決定プロセス、メンバーの事業参加に関するルールを明確化する投資を進めています。

    これらの仕組みは台湾法上、法的拘束力を持たないものの、紛争を予防し、持続的な多世代移行を可能にする関係面の「足場」として機能しています。

    台湾におけるCRSと事業承継計画

    台湾における海外税務環境は大きく進化しています。すなわち、BEPS原則の採用、租税条約ネットワークのおよそ35法域への拡大、そしてグローバルな共通報告基準(CRS)の実施です。これによって、従来オフショア構造を魅力的にしていた情報の非対称性は根本的に変化しました。

    CRS参加法域の海外金融機関に口座を有する台湾居住者は、自身の口座データが台湾の税務当局へ報告される可能性に直面しています。

    民法上の制約、会社法上の柔軟性、そして変化する税務実態という錯綜する状況を管理するため、洗練された一族は、2つの現代的な手段を組み合わせて活用している。

    第一に、台湾会社法に基づき、ファミリー企業や事業を保有するために設立されるクローズドエンド型会社は、特別議決権付株式(ゴールデン・シェアや拒否権を含む)を発行でき、また、一族以外への株式譲渡を制限できるため、世代をまたいだ統一的なガバナンスの維持が可能となります。

    第二に、信託法に基づく台湾の信託は、資産を委託者の個人財産から法的に分離できます。これによって、議決権を受託者に集中させ、後継世代の債権者リスクや婚姻・離婚紛争から資産を保護し、時間をかけた条件付分配を構造的に実現できます。

    台湾は永続信託を全面的には認めていないが、慎重に起草された信託設計により、法定枠組内での持続的なガバナンスの目的を達成することができます。

    また、精緻なバイ・セル条項を備えた株主間契約は、利用可能な紛争予防ツールの中でも最も有効なものの一つです。死亡、能力喪失、離婚、または離脱が生じた場合の株式の譲渡、担保設定、または償還の条件を事前に合意しておくことで、強制売却や、望ましくない第三者が非公開の一族保有株主へ第三者が入り込む事態を防ぐことができます。

    透明性の時代における台湾の事業承継プランニング

    台湾の世代間資産移転の局面は、将来の出来事ではなく、いままさに進行しています。これを成功裏に乗り越える一族、アドバイザー、および金融機関は、この局面が要求する法務、税務、およびガバナンスの高度な専門性を総動員して取り組む者となります。

    特に重要な要請は3つあります。第一に、民法の遺留分ルールは、交渉の余地がない制約であり、事業承継計画の当初から把握し織り込むべきで、付随的論点として後回しにすべきではありません。

    第二に、AMT制度(CFCルールを含む)とCRS報告の複合的影響により、オフショア構造のリスクと便益の計算は根本的に変わりました。既存のレガシー・アレンジメントは早急な見直しが必要であり、新たな構造は透明性を前提とする世界に適合するよう設計されなければならなりません。

    第三に、法的文書だけでは不十分です。最も持続性の高い事業承継計画は、遺言、信託証書、株主間契約、およびコーポレート・リストラクチャリングを、人間関係や心理面を含む「資産移転の人的側面」を同じ重みで扱う一族によるガバナンスの枠組みと統合するものです。

    台湾の法制度は、プライベート・ウェルス・プランニングのための、実用的かつ高度化しつつあるツールキットを提供しています。課題であり機会でもあるのは、求められる重要性に見合う先見性、精度、および配慮をもって、それを実装することにあります。

    Lee and Li LEE AND LI ATTORNEYS-AT-LAW
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