日本の公益通報者保護法の主な改正点

By 西垣建剛 / GI&T Law Office
0
36
LinkedIn
Facebook
Twitter
Whatsapp
Telegram
Copy link

改正公益通報者保護法は、2026年12月に施行される予定です。数ある法改正のうち、企業実務への影響が特に大きいと見込まれるのは、まず民事手続における立証責任の転換、そして報復的な解雇・懲戒に対する刑事罰の導入の2点です。

立証責任の転換

Kengo Nishigaki
西垣建剛
代表社員パートナー
GI&T Law Office
東京、日本

改正法の下では、通報者が通報後1年以内に解雇または懲戒処分を受けた場合、民事手続きにおいて当該措置は公益通報を理由として行われたものと推定されます。使用者がこの推定を覆すことに成功しない限り、解雇または懲戒処分は無効と判断されることになります。これは従来の実務からの大きな転換であり、従業員側の立証のハードルを実質的に下げる一方、使用者側には相当に重い立証負担を課すものです。

報復に対する刑事罰

改正法は、公益通報に対する報復として行われた解雇、または懲戒処分に刑事制裁も導入します。個人は6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金(約US$1880)の対象となり得ます。法人についても両罰規定により、最大3000万円の罰金が科され得ます。立法目的は明確であり、報復の抑止を強化し、通報者保護を高め、公益通報制度の機能を促進することにあります。

戦略的な公益通報:リスクと警戒すべき兆候

実務上、すべての公益通報が企業不祥事の是正という誠実な目的に基づくとは限りません。とりわけ、成績不良や不正行為により解雇の可能性がある従業員が、防御策として公益通報制度を戦略的に利用する場合があります。

例えば、上司や同僚の不正を申し立てた上で、その後の不利益な人事措置に対し、上記の法定推定を根拠に争うことが考えられます。対立が激しい事案では、懲戒処分が違法な報復に当たると主張し、人事部門や法務部門を含む役員等に刑事責任を生じさせようとすることもあり得ます。

濫用的な公益通報の可能性を示す兆候

    1. 1年以上前の出来事に関する申立てで、これまで問題視されていなかったもの
    2. 事実関係の信用性や裏付けを欠く通報
    3. 実質的なコンプライアンス上の懸念を生じさせない、形式的・技術的な法令違反のみを根拠とする主張

推定の覆し:使用者側の訴訟対応戦略

改正法に基づく法定推定を訴訟で覆すことは、大きな困難を伴う可能性があります。日本では、そもそも裁判所が解雇の有効性を厳格に判断し、使用者に重い立証負担を課す傾向があるためです。こうした状況を踏まえ、企業は次のようなリスク低減策の採用を検討すべきです。

    1. 通報前から存在する懲戒検討の同時的な記録化:解雇や懲戒の検討がある場合は、公益通報が行われる前の段階から、早期に文書化しておくことが重要です。人事担当者から経営陣への報告などの社内連絡も保存すべきです。
    2. 証拠の包括的収集:メール、契約書、社内記録、関係者の陳述書など、懲戒判断を裏付ける客観的証拠を先回りして収集します。
    3. 意思決定記録の整備:解雇・懲戒の理由を、具体的事実と法的根拠に即して明確に記録します。
    4. 外部弁護士の関与:必要に応じて、予定する懲戒措置の適法性を検証するため、独立した法的意見を取得します。
    5. 機能分離(「ファイアウォール」):報復意図の疑いを避けるため、通報調査を担当する者と懲戒判断を行う者を明確に分離します。人事内で役割を分担するほか、調査を法務部門または外部アドバイザーに委ねることも考えられます。

日本の公益通報制度改革:ガバナンスと訴訟リスク

2025年改正は、公益通報者保護を大幅に強化するものであり、コーポレート・ガバナンスおよび雇用実務に広範な影響を及ぼします。

透明性と説明責任の向上を企図する一方で、とりわけ戦略的または濫用的な公益通報が疑われる局面では、新たな訴訟リスクとコンプライアンスリスクをもたらします。

したがって、日本で事業を行う企業は、改正法への適合と、より複雑化する法的環境における懲戒判断の防御可能性の双方を確保するため、社内手続を前広に見直し、強化すべきです。

西垣建剛氏は、東京のGI&T Law Officeの代表社員パートナーです。

GI&T Law Office
23F Marunouchi Kitaguchi Building,
1-6-5 Marunouchi, Chiyoda-ku,
東京
100-0005, Japan
www.giandt-law.com
T: +81 3 6206 3283
E: kengo.nishigaki@giandt-law.com
LinkedIn
Facebook
Twitter
Whatsapp
Telegram
Copy link