台湾におけるサステナビリティ推進の法整備

    By Eddie Chan・Helen Hai-Ning Huang・Jaeseon Han/Lee and Li
    0
    18
    LinkedIn
    Facebook
    Twitter
    Whatsapp
    Telegram
    Copy link

    メインページ

    日本

    台湾では、政府が2022年3月20日に「2050年ネットゼロ排出ロードマップ」を発表して以降、サステナビリティが政策上の中心的な優先事項となっています。この枠組みの下で、台湾は2050年までの温室効果ガス排出量のネットゼロ達成にコミットしており、エネルギー、産業、ライフスタイル、社会という4つの重点移行分野に焦点を当てるとともに、技術革新と気候関連立法という2つの柱を基軸としています。この政策の方向性は、台湾における気候変動対策の必要性だけでなく、サステナビリティがますます重視される世界経済の中での台湾の戦略的な位置づけも示しています。

    この目標を達成するために導入された規制手段の中でも、カーボンプライシングは中核となる仕組みとなっており、循環経済の推進とあわせて進められています。同時に、サステナビリティへの配慮が、台湾の対外経済関係にもますます反映されつつあります。特に、2022年8月22日に開始された「21世紀の貿易に関する台湾・米国イニシアチブ」は、台湾・米国間の貿易協議において環境・社会・ガバナンス(ESG)原則を正式に組み込んだものであり、これは価値観を重視した貿易ガバナンスとサプライチェーンの説明責任に向けて、より広範な転換を示すものです。

    台湾の炭素費制度の概要

    2023年気候変動対応法の下で導入された炭素費は、温室効果ガス排出のコストを内部化するための台湾の主要な規制手段となっています。この制度は、排出に価格を設定することで排出削減を促進し、企業の行動変化を促すことを目的としています。より広い意味では、国際的な潮流に沿いつつ、産業競争力への配慮とのバランスを取りながら、市場ベースの気候ガバナンスへ移行するという台湾の姿勢を示しています。

    Eddie Chan
    Eddie Chan
    パートナー
    Lee and Li
    台北
    Tel: +886 2 2763 8000 ext. 2139
    Email: eddiechan@leeandli.com

    2024年8月29日、環境部は、炭素費制度の「三本の矢」とも称される3つの主要な規制措置を公布しました。

      1. 炭素費の徴収に関する規則
      2. 炭素費の対象となる事業体に対する温室効果ガス削減目標の指定
      3. 自主的削減計画の管理に関する規則

    現時点では、炭素費は、電力およびガス供給事業者、ならびに年間のスコープ1およびスコープ2の温室効果ガス排出量が2万5000トン(二酸化炭素換算、tCO2e)を超える製造事業体に適用されます。発電事業の直接排出源となる事業体は、電力消費に関連する排出量を証明する書類を提出し、炭素費の対象となる温室効果ガス排出量の控除について環境部に申請することができます。この閾値に基づくアプローチは、小規模企業のコンプライアンス・コストを最小化しつつ、規制負担を大規模排出者に重点的に課すという政策判断を反映しています。

    炭素費は毎年評価され、前年の排出量に基づいて毎年5月までに納付するものとされています。課金対象排出量は年間の総排出量と同一ではありません。適用規則の下では、次のとおり算定されます。

    課金対象排出量 = (年間排出量 − K値)× 排出量調整係数:K値は2万5000 tCO2e(二酸化炭素換算)に設定されています。したがって、規制対象となる多くの事業体では、排出量調整係数を適用した後、この閾値を超える排出量のみが炭素費の対象となります。これに対し、炭素漏出のリスクが高いと指定された事業者(炭素漏出高リスク事業者)ではK値がゼロとなり、全排出量が算定に用いられます。このように区別することで、環境面での実効性と競争力への懸念とのバランスをとっています。

    課金対象排出量が確定すると、その排出量に適用レートを乗じて、炭素費の納付額が算定されます。

    Helen Hai-Ning Huang
    Helen Hai-Ning Huang
    アソシエイト・パートナー
    Lee and Li
    台北
    Tel: +886 2 2763 8000 ext. 2508
    Email: helenhuang@leeandli.com

    炭素費の納付額 = 課金対象排出量 × 適用レート:標準の適用レートはtCO2e当たり300台湾ドル(9.45米ドル)です。規制対象事業体が任意の削減計画を提出し、指定された削減目標にコミットして、環境部の承認を得る場合には、100台湾ドルまたは50台湾ドルの優遇レートが適用される場合があります。これは、義務的な価格付けと成果ベースのインセンティブを組み合わせたハイブリッドな規制モデルを構成し、早期のコンプライアンスと排出削減計画を促すものです。

    炭素漏出高リスク事業者にとって、排出量調整係数は極めて重要な役割を果たします。この係数は、規制の厳格性と産業競争力のバランスをとりつつ、炭素漏出リスクを緩和するよう設計されています。最初の3年間で、係数はそれぞれ0.2、0.4、0.6と段階的に導入されます。2026年1月12日、環境部は、関連する審査ガイダンスの下で、石油・石炭製品、鉄鋼、コンピュータおよび周辺機器製造などの分野に属する事業者を含む17の事業体を炭素漏出高リスク事業者として指定しました。この段階的なアプローチは、より厳格な炭素コストの内部化に向けた明確な方向性を維持しつつ、移行期間における負担軽減を図るものです。

    これらの規則を導入することで、台湾は正式にカーボンプライシングの時代に入りました。炭素費による収入は温室効果ガス管理基金に充てられ、排出削減技術、気候適応措置、より広範な脱炭素化の取り組みを支援することが期待されています。企業にとって、これは新たなコンプライアンス義務であるだけでなく、資金調達や技術高度化の機会ともなり得ることを示しています。

    循環経済への法制度上の転換

    カーボンプライシングと並行して、台湾は直線型の「生産・使用・廃棄」モデルから循環経済へと移行しつつあります。これは、資源効率とライフサイクルへの影響に対処しなければ、排出削減だけでは不十分であるという認識が高まっていることを反映しています。

    Jaeseon-Han
    Jaeseon Han
    アソシエイト
    Lee and Li
    台北
    Tel: +886 2 2763 8000 (ext. 2092)
    Email: jaeseonhan@leeanli.com

    2025年5月29日、環境部は2つの主要な立法案を提出しました。すなわち、2009年資源回収再利用法の全面的な改正(資源循環促進法[RCPA]に改称予定)と、1974年廃棄物処理法の改正です。これらの改革は、「3R」(リデュース、リユース、リサイクル)の原則を製品のライフサイクル全体に組み込むことを目的としており、規制の焦点を、末端の廃棄物管理から、上流の設計や資源効率へと移行させるものです。台湾の行政部門である行政院は、2026年4月9日に提案された立法改正を承認し、今後の審議のために立法院(立法府)に進むことになっています。

    提案されている資源循環促進法は、規制上の義務とインセンティブ型の措置を組み合わせた「アメとムチ」のアプローチを採用しています。規制面では、環境部に対し、製品および建設プロジェクトのグリーンデザイン基準を設定すること、指定製品、包装および容器について削減または再使用の要件を課すこと、環境に有害またはエネルギー集約型と見なされる材料に対する制限または禁止を課すことの権限が付与される予定です。

    提案されている資源循環促進法はまた、遵守とイノベーションを促すためのインセンティブとして、適格製品に対する認証ラベル、ならびに資源循環において高い実績を示す事業者に対する補助金、税制優遇および優遇融資などを導入します。グリーンウォッシングのリスクに対処するため、サステナビリティ・ラベルの無断使用は執行措置の対象となります。

    並行して、廃棄物処理法の改正案は、短期的な経済効率よりも資源最適化を優先し、商業的に採算が取れない場合であっても、特定の廃棄物ストリームのリサイクルを環境部が義務付けられるようにするものです。リサイクルに従事する事業者は、報告、資材追跡、開示要件などを含む、強化されたコンプライアンス義務に直面します。これらの改革は、より介入型の規制モデルへの移行を示しています。

    台湾の貿易政策におけるESG

    台湾のサステナビリティ・アジェンダは、貿易政策の枠組みに、より一層反映されつつあります。これは、台湾における規制枠組みと国際的な経済ガバナンスとの収斂が進んでいることを示しています。

    21世紀の貿易に関する台湾・米国イニシアチブの下では、ESGの要素、とりわけ労働および環境基準が交渉枠組みに明示的に組み込まれました。2023年5月に妥結した当初の合意では、主としてこれまでの貿易円滑化に関する論点に焦点を当てていたものの、同時に、貿易ガバナンスにサステナビリティを統合するという政策の方向性を明確に示すものでもありました。

    この流れは、2026年2月13日に発表された台湾・米国相互貿易協定によってさらに強化されました。同協定は、労働および環境に関する規定を台湾・米国間の枠組みに正式に組み込むものです。労働面では、同協定は結社の自由を含む中核的な労働権をカバーするとともに、強制労働といった新たな懸念にも対応しています。環境規定では、資源効率と環境保護の促進が強調されており、台湾における循環経済の取り組みと緊密に一致しています。同協定は、台湾における規制改革と国際的な貿易上のコミットメントの収斂を示しており、越境経済関係においてESGをますます拘束力のある要素として位置付けています。

    越境貿易に関与する企業は、自社のサプライチェーン、労働慣行および環境パフォーマンスが、台湾の規制だけでなく、貿易協定に組み込まれた進化する国際基準にも整合するようにする必要があります。

    台湾のガバナンス全体に組み込まれたサステナビリティ

    2050年ネットゼロ目標を発表して以来、台湾は、カーボンプライシング、資源循環、ESGを踏まえた貿易政策全体にわたる包括的なサステナビリティ枠組みの構築において、大きな進展を遂げてきました。これらの動きは、事後対応的な環境規制から、経済・産業システムの先見的なガバナンスへと、より広範な変革が進んでいることを示しています。

    取り組みの一部はいまだ立法上の検討段階にありますが、例えば、台湾・米国相互貿易協定と同日に、労働部が企業向け強制労働防止参照指針を公表したことなどの動きは、政府のサステナビリティ・ガバナンスに対する統合的なアプローチが強まっていることを示しています。

    企業は、サステナビリティがもはや周辺の検討事項ではなく、深く組み込まれた法的・規制上の重要な要請であることを認識しなければなりません。コンプライアンスには、進化する法定要件を遵守するだけでなく、サステナビリティを企業戦略、リスク管理、越境事業運営に積極的に統合することも求められます。こうした状況において、規制動向への早期対応と、サステナビリティ対応能力への投資が、競争力を維持するうえで極めて重要になるでしょう。

    LEE AND LI ATTORNEYS-AT-LAW
    8/F, No. 555, Sec. 4, Zhongxiao E. Rd
    Taipei – 11072, Taiwan
    Tel: +886 2 2763 8000
    Email: attorneys@leeandli.com
    www.leeandli.com
    LinkedIn
    Facebook
    Twitter
    Whatsapp
    Telegram
    Copy link