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技術進歩の先頭に立ってきた台湾ですが、急速な進化を遂げる仮想通貨に規制当局は対応できるのでしょうか?

2009年に誕生したビットコインは、分散型のピアツーピア決済を行うことで、中央集権的な金融管理を回避しました。仮想通貨の黎明期には、取引を効率化するために、中央集権型取引所が登場しました。

Steven Hsu, HSU & Associates
Steven Hsu
マネージングパートナー
HSU & Associates(台北)
steven.hsu@hsu.legal

現在も仮想通貨取引は主に中央集権型取引所で行われていますが、暗号通貨取引プラットフォームのFTXが破綻したことにより、中央集権型取引所への信頼が損なわれ、分散型金融の重要性が徐々に高まりつつあります。

早くも2013年には、台湾の中央銀行と金融監督管理委員会(FSC)が、仮想通貨は不換通貨ではなく、デジタル「仮想商品」であることを正式に認めました。しかし、仮想通貨の取引が中央集権型か分散型かを問わず、その決済、取引、融資、投資は必ず当事者間で行わなければなりません。

さらに、政府が仮想通貨を認めているか否かに関わらず、仮想通貨は代替金融であり、現実の金融と関連付けられなければならないため、適度な管理が必要であることは否定できません。

現在、台湾の関連法規では、中央集権型金融と分散型金融をあえて区別しておらず、仮想通貨そのものに焦点を置いています。また、台湾の金融管理は、多くの場合、米国の証券取引委員会(SEC)にならっています。

2019年、SECは、デジタル資産が「投資契約」であるかを分析するためのフレームワーク(Framework for “Investment Contract” Analysis of Digital Assets)を公表し、Howeyテストにおいて、米国最高裁が定めた投資契約の基準に照らして、特定のデジタル資産が有価証券であるかを判断することを提案しました。Howeyテストとは、他人の努力により、利益を得る合理的な期待をして、共同事業に資金を出資しているかどうかを判断する基準です。

そのわずか3カ月後に、台湾のFSCは、Howeyテストの基準を満たす仮想通貨は、台湾の証券取引法(Securities Exchange Act)に基づく有価証券とみなされるという指令を出しました。

そのため、セキュリティトークンは証券取引法の規制対象となり、以下のような2つの市場に分類することができます。

Ashley Chao, HSU & Associates
Ashley Chao
弁護士
HSU & Associates(台北)
ashley.chao@hsu.legal

プライマリーマーケット(一次発行市場):3,000万新台湾ドル(10万米ドル)未満の資金調達については、発行者の資格、資金調達の目的、プロセスおよび運営管理について、証券取引法が適用されます。3,000調達対象が仮想通貨ではなく新台湾ドルに限定されていることから、台湾で規制されている有価証券に該当する仮想通貨のセキュリティ・トークン・オファリングによって調達されるのは、不換通貨であることが分かります。規制が厳格であるため、現在申請者はいません。

セカンダリーマーケット(二次流通市場):FSCは、上記の指令に一致させるために、台湾の証券取引法に基づき発行される管理規定を修正しました。例えば、証券会社の設立を規定する基準では、証券ディーラーからの払込資本金を最低1億新台湾ドルとし、証券会社の責任者や関係者を規定する規則では、証券ディーラーに対して台北証券取引所規則を遵守するよう義務付けました(ただし当該責任者および関係者の義務は一部免除されます)。

FSCは、マネーロンダリングとテロ資金供与防止以外には、仮想通貨に関する管理は行っていません。ただし、有価証券に該当する仮想通貨(証券取引法に基づき有価証券と見なされる仮想通貨)は、FSCが管理しています。

米国では、有価証券を管轄しているのはSECですが、先物、オプション、スワップなど現物の有価証券とは関係のない金融派生商品を管轄しているのは、米国商品先物取引委員会(CFTC)です。

従って、フレームワークについてSECが提案した重要点の1つは、SECの規制範囲を明確にすることですが、その範囲はHoweyテストの解釈によって変わります。米国では、その解釈を緩和し、SECの管轄を拡大しようという傾向にあります。

台湾では、FSCの証券期貨局が、有価証券、先物、オプションなどの中央集権型金融取引を管理し、FSCの銀行局が、先渡取引、スワップなどの店頭金融取引を管理しています。

つまり、FSCの規制は金融活動全般を対象としており、SECとCFTCによって管轄が分かれている米国の状況とは異なります。要するに、中央集権型か分散型か、また有価証券に該当する仮想通貨か機能的な仮想通貨かを問わず、台湾のFSCが仮想通貨による代替金融を規制できない理由はありません。

しかしながら、FSCの黄天牧(Huang Tien-mu)委員長は以前に、「海外で発行された仮想通貨は、FSCの監督下にある機関が発行したものではなく」、よって「すべての投資商品がFSCの管理下にあるわけではない」と指摘しました。また、黄委員長は、いわゆるハロー効果により、所轄官庁が当該通貨を推奨していると投資家が考えないように、所轄官庁は新たなテクノロジーの開発初期段階において過度に介入すべきではない、と強調しました。

マネーロンダリング

Kimi Chang, HSU & Associates
Kimi Chang
弁護士
HSU & Associates(台北)
kimi.chang@hsu.legal

仮想通貨には今なおプラスの効果があります。現在、その規制はマネーロンダリングとテロ資金供与の防止・抑制に限定されています。

台湾においてマネーロンダリングおよびテロ資金供与の防止・抑制を担当する所轄官庁は、法務部です。仮想通貨の発展に対応するため、そのプラットフォームや取引は、マネーロンダリング防止法(洗錢防制法)における標準的な範囲内の金融機関とみなされています。

これに対して、テロ資金供与防止法には仮想通貨に関する規定はありませんが、「仮想通貨のプラットフォームまたは取引を扱う事業者に関するマネーロンダリング防止およびテロ資金供与対策を規定する規則

  • 仮想通貨と新台湾ドル、外国通貨、および中華人民共和国・香港・マカオの通貨との両替
  • 異なる仮想通貨間の両替
  • 仮想通貨の譲渡
  • 仮想通貨の保管・管理または関連管理ツールの提供
  • 仮想通貨の発行・販売に関する金融サービスへの関与および提供

分散型金融の性質上、適用されない1番目の活動を除き、他の4つの活動を行う場合、分散型金融は規制対象となります。

上記の規則によって、仮想通貨プラットフォームおよび取引では、顧客の本人確認、リスク管理および取引に関する監視を行うことが義務付けられています。また、顧客の本人確認に関して、上記規則では、事業者は「取引関係の構築・維持のために、匿名口座や架空名義の口座を認めてはならない」と定めています。

従って、仮想通貨のプラットフォームや取引では、メンバーに実名登録制の導入が義務付けられていますが、それが分散型取引や反検閲の本質に矛盾するものとなっています。

技術的には不可能ではありませんが、台湾で分散型金融プラットフォームを立ち上げたり、取引を始めるには、関連するスマートコントラクトに実名要件を追加する必要があります。

完全な分散化を実現するためには、一般的にガバナンストークンの保有者グループが、分散型金融に関する合意内容を決定します。しかし、ガバナンストークン保有者は世界各地に分散している可能性があるため、ユーザーの実名が必要となる合意形成に至ることは容易なことではありません。

今後の見通し

2022年6月、米国の上院議員2名が、「責任ある金融革新法」を提案し、分散型金融と密接な関係にある分散型自律組織(DAO)を規制対象にしようと試みました。本法案が可決されれば、DOAは税法上の営利事業体と定義され、各管轄区域の法律に従って会社またはその他の類似組織を設立することが義務付けられます。

これによって、DAOや分散型金融の反検閲の本質が厳しく問われることになるでしょう。米国で最終法案が可決されれば、今後、台湾でも同様の規制が導入される可能性があります。


Steven Hsuは、台北のHSU & Associatesのマネージングパートナーです。電子メールでのお問い合わせは、steven.hsu@hsu.legal までお願いします。

Ashley Chaoは、台北のHSU & Associatesの弁護士です。電子メールでのお問い合わせは、ashley.chao@hsu.legal までお願いします。

Kimi Changは、台北のHSU & Associatesの弁護士です。電子メールでのお問い合わせは、kimi.chang@hsu.legal までお願いいたします。

HSU & Associates

HSU & ASSOCIATES
4/F, No. 33, Ln. 161, Sec. 1
Xinsheng S. Rd., Da’an Dist.
Taipei, 106090 Taiwan

Contact details:
電話: +886 2 6605 0818
Eメール: attorneys@hsu.legal

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