安全なデジタル空間が既存の自由を制限する可能性

By Ashima Obhan とShubhanshi Pohani、Obhan & Associates
0
262
LinkedIn
Facebook
Twitter
Whatsapp
Telegram
Copy link

インターネットを規制すべきかどうか、規制するとしたらどのようにすべきかという問題は、長年にわたって各国政府を悩ませており、インドにおいても同様です。2021年、「情報技術(媒介者ガイドラインおよびデジタルメディアの倫理規範)規則」[Information Technology (Intermediary Guidelines and Digital Media Ethics Code) Rules/以下、「IT規則」]が施行され、ソーシャルメディアプラットフォームなどの、インターネット媒介者に対する説明責任が導入されました。IT規則の不備は施行後すぐに明らかになり、ソーシャルメディアプラットフォームやジャーナリストなどが、IT規則に対して憲法上の問題を指摘しています。電子情報技術省は最近、こうした不備に対応するため、IT規則の改正案(以下、「規則案」)を公表しました。

Ashima Obhan
シニアパートナーであり
Obhan & Associates

規制案には、特に重要な改正が2つ盛り込まれており、懸念を生じさせています。一つは、媒介者によるコンテンツのモデレーションとセーフハーバーの保証、そしてもう一つは、苦情処理と政府の監視です。現行法では、媒介者には自らのプラットフォームで送信された素材を確認する義務はなく、侵害コンテンツのホスティングを検知および禁止する独自の権限もありません。媒介者の責任は、プライバシーポリシーやユーザー契約など、掲載された条件にユーザーが同意することを要求することに限定されています。この立場は、2000年情報技術法(以下、「IT法」)第79条(2)(b)と、現行のIT規則第3条(1)(a)および(b)の下で構築され、Shreya Singhal v Union of Indiaの訴訟における最高裁判決と、Kent RO Systems Ltd v Amit Kotak & Orsの訴訟におけるデリー高裁の判決も存在します。

規則案では、IT規則第3条(1)(a)および(b)にそれぞれ「及びその遵守を確保する(and ensure compliance of the same)」「ユーザーにさせる(shall cause the user)」という文言を追加し、媒介者にユーザーが提供するすべてのコンテンツを、投稿やアップロードの前に監視および審査するよう求めることで、媒介者に対する新たな説明責任の要求を提案しています。これは、媒介者をジレンマに陥れます。IT法第79条では、媒介者がコンテンツの投稿を一切妨害せず、単にコンテンツがアップロードされるプラットフォームをホストしている場合にのみ、セーフハーバーの保証が受けられます。もし何らかの妨害をすれば、セーフハーバーの権利を失うことになります。媒介者にコンテンツを監視する可能性を要求するこの規則案は、制定法を無視しています。このような提案は、法案作成の簡単なテストにすら耐えられず、破棄せざるを得ないと思われます。

Shubhanshi Pohani, Obhan & Associates
Shubhanshi Pohani
アソシエイト
Obhan & Associates

2つ目に議論を呼んだのは、苦情処理メカニズムの修正です。明らかに虚偽である、著作権を侵害する、またはインドの品位を脅かすコンテンツの削除に関する苦情は、72時間以内に対処することを義務づける、というものです。現在のIT規則では、この期間はより現実的な15日となっています。不適切なコンテンツの拡散を防ぐ意図があるようですが、ユーザーのトラフィックや多くの苦情が寄せられる可能性を考えると、媒介者が72時間以内にそのような苦情に対応するのは無理があり、非現実的です。72時間の猶予では、媒介者が判断を急ぎ、苦情があっただけで、適切な審査をせずにコンテンツを削除してしまう可能性があります。どのような行動を取るにせよ、媒介者が不注意なミスを犯す確率は、プレッシャーのかかる状況下では指数関数的に増加し、さらに責任を問われる可能性があります。媒介者は、侵害の申し立てを仲裁し、特定の素材が削除されるべきかどうかを判断するための、リソースや能力を欠いている場合があります。

IT規則の下に申立機関を設けることを提案している規則案では、状況はさらに複雑になります。媒介者の決定に不服がある場合、苦情申立人は、苦情申立委員会に異議を申し立てることができます。IT規則は、委員会の構成(政府代表が中心で、業界関係者はほとんどいない)、管轄、手続などの基本事項が不明瞭です。

規則案は、「すべてのインド人にとって安全でアクセスしやすいデジタル空間」の向上を奨励および創造することを目指しています。しかし、この政府の善意の裏には、規則案に見られるように、言論および表現の自由という憲法上の保護を破壊する恐れのある、行き過ぎた規制国家としての意図が存在しているようです。賢明な行政官であれば、改めてインドの民主主義のアイデンティティと憲法上の約束に沿った改正案を起草するでしょう。仮に改正案がこのままの形で可決されたとしても、司法の監視の目に耐えられるとは思えません。

Ashima ObhanはObhan & Associatesのシニアパートナーであり、Shubhanshi Pohaniは同事務所のアソシエイトです。

Obhan & Associates

Obhan & Associates

Advocates and Patent Agents

N – 94, Second Floor

Panchsheel Park

New Delhi 110017, India

連絡先の詳細:
Ashima Obhan
電話: +91-9811043532

Eメール: email@obhans.com

ashima@obhans.com

www.obhanandassociates.com

LinkedIn
Facebook
Twitter
Whatsapp
Telegram
Copy link