フィリピン最高裁判所は、Vallacar Transit Inc v Yanson Jr(2025年11月25日)において、被申立人であるRicardo Yanson Jr氏が法執行から逃亡している限りは、司法的救済を求めることは許されないとして、「逃亡者権利剥奪の法理(fugitive disentitlement doctrine)」を正式に採用しました。

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Ocampo & Suralvo
マニラ
2019年のいずれかの時期に、Ricardo氏とその派閥は、Vallacar Transit Inc(VTI)の社長であるLeo Rey Yanson氏を解任することを決議しました。Leo Rey氏の解任後、Ricardo氏とその派閥は、VTIのバス55台をDynamic Builders and Constructionの構内に移しました。
自動車窃盗事件が提起され、それに伴い逮捕状が発付された時点で、Ricardo氏はすでに国外へ逃亡していました。Ricardo氏は、先決問題(prejudicial question)を理由に、刑事事件の停止というかたちで積極的救済を求めました。しかし、VTIは、逃亡者権利剥奪の法理によりRicardo氏が救済を求めることは許されないと主張して、これに対して争いました。最高裁は、Ricardo氏が逃亡している間は救済を求めることはできないという点に同意しました。
米国の逃亡者権利剥奪の法理の起源
この法理は、米国にその起源を遡ることができます。Molinaro v New Jersey(1970年)において、ニュージャージー州の最高裁判所は、被告が自身に課された拘束から逃走したことは、裁判所に対して自身の主張への判断を求めることについて「権利を失わせる(disentitles)」ものであると正式に判示しました。当初は刑事事件に適用されていましたが、その後、この法理は民事事件の文脈でも用いられてきました。すなわち、この法理の根拠は、事件の性質にかかわらず、「司法制度を無視して逃亡した者が、裁判所の資源を利用することを許さない」ことにあります。
フィリピンにおける逃亡者権利剥奪の法理の採用

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Ocampo & Suralvo
マニラ
Miranda v Tuliao(2006年3月31日)によれば、被告人に対する管轄権は、逮捕または任意出頭によって取得されます。被告人が積極的救済を求めた時点で、たとえ裁判所の拘束下にないとしても、裁判所に服したものとみなされます。
逃亡者権利剥奪の法理は外国を起源とするものの、最高裁は、フィリピンにおいてそれがすでに採用され実践されてきたことを、規則および判例が示していると指摘しました。裁判所規則の第124規則第8条、およびUsares v People(2021年10月6日)により、他国へ逃亡した被告人は出頭するまで、裁判所における当事者適格(standing)を失います。De Joya v Judge Marquez(2006年1月31日)では、裁判所は、出頭を拒む者は救済を受ける権利を有しないと判示しました。
したがって、被告人は、起訴状が提出され、自身に対して逮捕状が発付されたことを知りながら国外へ出ている場合、司法からの逃亡者とみなされます。
上記を踏まえ、最高裁はVallacar Transit Inc v Yanson Jrにおいて、司法制度、および被告人や国家が享受する適正手続の権利を強化するため、フィリピンにおいて「逃亡者権利剥奪の法理」を適用する時が来たと、明示的に判示しました。
フィリピンの逃亡中の元議員による差止め申立て

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フィリピンでは、元議員が最近、自身に対する刑事訴追の提起につながったオンブズマンの決議に対し、一時的差止命令(temporary restraining order)または差止命令(writ of injunction)を発するよう求めて、最高裁に申立てを行いました。本稿執筆時点で、この元議員には3件の逮捕状が出ていますが、2025年半ば以降、国外にとどまっており、フィリピンへの帰国を公然と拒否しています。
この元議員は、本件が「刑事事件における上訴」ではなく、また「[本人]に対して…判決が下されている」わけでもないことから、逃亡者権利剥奪の法理は適用されないと主張していますが、最高裁が同法理の適用可能性についての判断を示すか否かは定かではありません。
Degen v United States(1996年)は、民事裁判所が、権利剥奪という厳しい制裁を適用する代わりに、政府の利益を保護するための代替手段を有することを認めていますが、この元議員は、「逃亡は、[被告人]が自ら拠って立つ手続そのものに対する軽蔑を示し、司法の尊厳を傷つける」(The Fugitive Disentitlement Doctrine, Immigration Litigation Bulletin, US Department of Justice, 2013)とする法理の根拠と対峙する必要があります。フィリピン最高裁におけるこの元議員の申立ては、この法理の適用範囲の限界を示す可能性があります。
Anthony Jacoba氏はマニラのOcampo & Suralvoのパートナー、Carlo Sebastian Chua氏とJerard Emmanuel Afable氏はアソシエイトです。
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