持続的でコンプライアンスに適合したグローバル・ケイパビリティ・センターの体制の構築
現在、インドには世界で最も多くのグローバル・ケイパビリティ・センター(GCC)が集まっています。Nasscom-Zinnovの“GCC Landscape Report 2026”によれば、インドには現在2117のGCCが存在、約230万人のプロフェッショナルを雇用し、2026年度までに約984億米ドルの市場収益を生み出しています。GCCが長期的な戦略資産となるか、それとも継続的な課題を生じさせる存在となるかを左右する検討事項は、ほぼいつも同じです。すなわち、どの法人形態を用いるのか、センターをどこに設置するのか、雇用をどのように構成するのか、個人データをどのように取り扱うのか、企業間の価格設定が精査に耐え得るのか、という点です。これらは初期段階の設計判断であり、誤った選択をすると、元に戻すのに多大なコストがかかります。
参入形態の選択

共同創業者
LegaLogic Consulting
Email: vikas.agarwal@legalogic.com
インドでGCCを設立する外国企業グループには実務上の選択肢が3つあり、それぞれ法務面および商業面で異なる特徴があります。
完全子会社:インドの非公開会社を100%出資で設立する形態は、現在最も好まれる形態です。このストラクチャは、独立した法人格、有限責任、さらに企業間サービス契約、移転価格のベンチマーキング、インド人従業員向けの従業員持株制度(ESOP)の発行、インセンティブ制度への参加とも親和性の高い枠組みを提供します。
ビルド・オペレート・トランスファー(BOT):外国企業グループが直ちに運営リスクを負うことなく、迅速な立ち上げを実現したい場合、BOTは近年ますます一般的になっています。BOTにおける法務上の注意点は、おおむね共通しています。第一に、BOT期間終了時に従業員を円滑に移管しなければならず、そのためには通常、2020年労使関係法および適用される州法に準拠した、適切に設計された契約更改が必要となります。
第二に、創出された知的財産は単なるライセンスではなく、外国企業グループまたはインド側の譲受法人に譲渡されなければなりません。第三に、運営主体の移転に対して支払われる価格は、独立企業間原則に沿ったものでなければなりません。
EOR(Employer of Record):EOR契約により、外国企業グループがインドで法人を設立することなく、小規模なインド人のチームを活用できるようになります。法的な観点からの課題は、インドの税務当局および労働当局が形式ではなく実質を重視する点にあります。外国法人がEORに雇用されている個人を直接監督する場合、その関係が事実上の雇用(de facto employment)と評価される現実的なリスクがあります。その結果は重大なものになり得ます。
立地戦略
インドにおけるGCCの最初の波は、人件費格差の活用によって牽引されました。現在では立地の選択にあたり、専門人材へのアクセス、エコシステムの成熟度、州別インセンティブの有無が重視されています。
ベンガルールおよびハイデラバード:この2都市は、AI、プロダクト・エンジニアリング、プラットフォーム・エンジニアリング、ディープテック系のGCCにとって、依然として中心的な存在です。豊富な経験が蓄積され、シニアレベルのリーダー人材の層が厚く、ベンダーおよびインフラ市場が確立され、グローバルな運営モデルの仕組みを理解した人材が揃っています。
プネー:自動車および製造業を基盤としてきた同市は、プロダクト・エンジニアリングや応用R&D業務に対応できるエンジニア人材を育んできました。ムンバイに近い立地により金融市場および企業の経営管理機能へのアクセスが可能である一方、プネーは大規模センターに必要な物理インフラも提供しています。
グジャラート州GIFTシティ:金融サービスのGCCにとって、GIFTシティは、2019年国際金融サービスセンター局法の下で運用される専門的な規制枠組みに加え、大幅に強化された税制上のインセンティブを提供しています。このインセンティブは、インドで金融事業を展開する企業グループが、インド本土の規制の適用範囲とは切り離して業務を運営する必要がある場合に、とりわけ有用です。
ウッタル・プラデーシュ州: 2024年ウッタル・プラデーシュ州グローバル・ケイパビリティ・センター政策(2025年実施規則および2026年1月に通知されたSOP-2025と併せて参照)は、非常に手厚いインセンティブ・パッケージを提供しています。要件を満たすユニットは、最大50%の土地補助金、印紙税の100%免除または還付、適格投資額の25%に相当する資本補助金を利用することができます。
近年、増えつつあるのは、主要拠点を人材が豊富な市場に置き、支援拠点はコスト面で有利な、またはインセンティブが充実した法域に配置する、ハブ・アンド・スポーク型モデルです。
労働法典
2025年11月21日付の通知により、2019年賃金法、2020年労使関係法、2020年社会保障法、2020年労働安全衛生・労働条件法が全面的に施行されました。
GCCにとって、特に重要な実務上の影響は3つあります。
非伝統的労働者への適用範囲の拡大:これらの法典は、無期雇用の従業員にとどまらず、有期雇用労働者、契約労働者、さらに社会保障法によってギグ・ワーカーおよびプラットフォーム・ワーカーにも法定保護の対象を拡大しています。多層的な人員配置モデルに依拠するGCCでは、この法定適用範囲の拡大により、契約上の位置づけだけでは、就労関係の法的分類が決まらなくなります。
デジタル化された執行体制:職業安全法および社会保障法はいずれも、電子登録、電子申請、データ駆動型の監督を前提に設計されています。GCCにとってこれは、コンプライアンス上の不備が現場検査ではなくシステム上の照合によって検知される可能性が高まり、それに伴い、正確な給与記録および法定申告記録の実務上の重要性が増していることを意味します。
法定最低基準としての社会保障:社会保障法は、従業員積立基金(EPF)、従業員州保険(ESI)、退職金、出産手当について、正規・非正規の雇用区分を超えた適用を重視しています。部分的またはハイブリッドな人員配置モデルを運用するGCCでは、社会保障上の「従業員」に該当するのは誰かという問いは、もはや給与台帳だけでは判断できなくなっています。
DPDPAに基づくデータ保護
2023年デジタル個人データ保護法(DPDPA)は、立法上の構想段階を経て、段階的な実施へと移行しています。全面的な施行前であっても、GCCは個人データをどのように収集し、処理し、保持し、移転するかについて、より整理された枠組みを確立する必要があります。
データ受託者およびデータ処理者としての二重の役割:典型的なGCCは、外国親会社の指示に基づき外国企業グループの海外顧客に関する顧客データを取り扱う際には、データ処理者として行動します。一方、自社のインド人従業員、求職者、ベンダー、ならびに該当する場合はインドの顧客のデータを処理する際には、データ受託者として行動します。それぞれの役割によって、求められるコンプライアンス要件は異なります。
第17条第(1)(d)号に基づくアウトソーシングの適用除外:DPDPA第17条第(1)(d)号は、インド国内にいないデータ主体の個人データが、インド国外の者との契約に従ってインド国内で処理される場合について、重要な適用除外を定めています。インドの拠点が外国企業グループの海外顧客のデータを取り扱うという、典型的なGCCのオフショア・デリバリー・モデルにとって、本規定は重要です。本規定は、適用除外の条件および範囲内で、海外顧客のデータをインドで処理することを可能にします。
ただし、この適用除外はインド国内のデータ主体には及びません。したがって、インド人従業員、求職者、現地ベンダー、インドの顧客のデータについては、関連する運用上の義務が2027年5月13日に発効した時点から、全面的なコンプライアンス枠組みの下で処理しなければなりません。
移転価格税制
多くのGCCは、コストプラス方式で外国企業グループから対価を受け取るキャプティブ・サービス・プロバイダーとして設計されています。インドにおける移転価格税制上の中心的な論点は、インド法人が独立企業間の営業利益率を得ているかどうかです。
取引単位営業利益法(TNMM)は、IT/ITeSおよび知識集約型のキャプティブにおいて最も一般的に用いられる方法であり、インド法人の営業利益率は、同等の機能を担う企業を基準としてベンチマークされます。マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書の提出義務は、より大規模な多国籍グループに適用され、これらの報告書の内容は、インドのGCCの位置づけと整合していなければなりません。
事前確認制度(APA)は、コストプラス・マージンについて複数年にわたる確実性を求めるとともに、インド当局との移転価格上の争いを減らしたいIT/ITeSおよびR&Dのキャプティブにとって、引き続き有用なツールです。中央直接税委員会は、IT/ITeSおよびR&Dのキャプティブ分野において、二国間および一方的なAPAの締結件数を増やしており、この制度は現在、十分に成熟しているため、手続に要する期間も大幅に短縮されています。
州ごとのGCC政策
インドの複数の州は、一般的なIT/ITeS政策を超えて、GCCに特化した政策へと移行しています。以下の3例から、その新たな傾向が見て取れます。
マハーラーシュトラ州GCC政策(2025年):この政策は2029~30年度まで有効で、5060億インドルピー(53億米ドル)という投資目標を掲げ、400の新たなGCCの設立および約40万人分の高度技能職の創出を目指しています。この政策では、ムンバイ、プネーに加え、ナグプール、ナーシク、チャトラパティ・サンバジナガルといった新興のティア2・ティア3のハブが重視されています。
カルナータカ州GCC政策(2024~29年):すでにインドで最大のGCC集積を擁するカルナータカ州は、2029年までに500の新たなGCC(州内のGCC総数を1000に引き上げる)という目標を設定し、35万人分の新規雇用を創出し、500億米ドルの経済産出を実現するとしています。インセンティブ設計は、“ビヨンド・ベンガルール(Beyond Bengaluru)”パッケージを通じて、マイソール、マンガルール、フバリ=ダールワード=ベルガヴィ、その他のクラスター都市を対象に、ベンガルール以外でのGCC活動の拡大を重視しています。
ウッタル・プラデーシュ州GCC政策(2024年):この政策は前述のとおり、現在利用可能なものの中でも最も積極的なインセンティブ・パッケージの一つです。2026年1月に承認された2025年実施規則およびSOP-2025により、Invest UPを窓口機関とする形で、この枠組みの運用が開始されました。
結論
インドにおいてGCCが事業を行う規制環境は、いまやより明確で、より統合され、検査への依存から、システムによる執行へと移行しつつあります。適切な法人形態、適切な立地、適切に構造化された雇用契約、明確なデータ・アーキテクチャ、独立企業間原則に基づく税務モデル、そして強固なグループ会社間契約の整備を通じて、当初からこの現実を踏まえて設計されたGCCは、規制コンプライアンスをより管理しやすく、予見可能なものにできる可能性が高いと言えます。
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