フィリピンの鉱業・エネルギー分野のM&AにおけるESGデューディリジェンス

By Recolito Ferdinand N Cantre Jr・Cristina Marie T Bello・Mikaela V Bernardino/Sarmiento Loriega Law Office
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フィリピンの鉱業およびエネルギー分野のM&Aでは、環境・社会・ガバナンスに関するデューディリジェンス(以下「ESG DD」)が、バリュエーションとクロージングに影響します。意思決定者はESGを取引実行リスクとして捉え、「法的強制措置や操業停止、社会受容性(ソーシャル・ライセンス)の喪失を招くような混乱なしに、このプロジェクトは操業できるのか」と問い掛けます。

鍵を握るのは法務チームです。法務チームがDDの範囲を設計し、リスクの許容基準を設定し、得られた知見を拘束力のある保護条項へと落とし込みます。ESG DDは価値評価のためのデューディリジェンスとして機能すべきです。その結果が価格、取引条件またはクロージング条件に反映されないのであれば、それは単なる報告書に過ぎません。鉱業およびエネルギー分野では、同様のリスク群が繰り返し見られる傾向があります。

まず許認可、次いでその防御可能性

Recolito-Ferdinand-Cantre-Jr
Recolito Ferdinand N Cantre Jr
シニア・パートナー
Sarmiento Loriega Law Office
メトロ・マニラ

許認可が最優先です。ESG DDでは、鉱業法、環境影響評価制度、水質浄化法、大気浄化法などへのコンプライアンスを確認すべきです。

有効性に加えて、主要なリスクはその「防御可能性」です。許認可の取得経緯、コンプライアンス履歴、条件の履行状況を精査します。そして、承認内容が実際の事業区域、生産能力、操業方法と整合していることを検証します。争われ得る許認可は、バリュエーションおよびファイナンス上のリスクとなります。

次に、土地の権利関係および利用可能性を評価します。ESG DDでは、農地改革対象地、保護地域、先住民族の祖先伝来の領域、公有地との重複を特定すべきです。このような重複は、プロジェクトの拡張、譲渡可能性、許認可、ファイナンスに影響を及ぼす可能性があります。

契約が左右する用地リスクと既存リスク

これらの考慮事項に加えて、プロジェクトリスクは土地の権原よりも契約上の取り決めに潜んでいることが少なくありません。賃貸借、地役権、通行権、アクセス道路、ユーティリティ回廊、測量データを通じて、用地の支配権を検証します。拡張を妨げる制限、第三者の同意を要求する制限、請負業者の業務を制限する条項を確認します。

テーリング(鉱滓)や廃棄物を含む既存の環境リスクは、取引上、極めて重要です。監査資料、通知、内部ログ、規制当局との通信記録を収集します。閉鎖および復旧計画、浄化引当金、危険物質と有害・放射性廃棄物法へのコンプライアンスを精査します。

テーリング管理の健全性、廃棄物保管、排水管理に焦点を当てます。操業停止シナリオと浄化費用の見積範囲の提示を求めます。

社会受容性がプロジェクトの進行を左右する

Cristina Bello
Cristina Marie T Bello
パートナー
Sarmiento Loriega Law Office
メトロ・マニラ

地方自治体や先住民族文化コミュニティ/先住民族に関わる固有の事情が、プロジェクトの進行を左右することが少なくありません。許認可を保有していても、地域の支持がなければプロジェクトが停滞する可能性があります。

地方自治法の下では、プロジェクトの実施には協議プロセスと地域レベルの承認が必要です。

祖先伝来の領域に影響するプロジェクトは、先住民族権利法を遵守し、自由意思による事前の十分な情報に基づく同意を含む要件を満たすとともに、国家先住民族委員会による適切な証明書の発行を受けなければなりません。

協議記録、苦情処理のログ、便益提供プログラム、紛争履歴を精査します。社会的受容リスクはクリティカル・パス上のリスクとして扱います。

安全性、データ、取引上の保護

Mikaela-Bernardino
Mikaela V Bernardino
シニア・アソシエイト
Sarmiento Loriega Law Office
メトロ・マニラ

重大事故は操業停止リスクとレピュテーションの低下を生むため、安全システムは重要です。事故ログ、是正措置、請負業者の管理体制、共和国法第11058号に基づく労働安全衛生基準の遵守状況を精査します。これらの基準が現場で実際に運用されているかを検証します。

データの完全性は、いまやESGの領域に位置づけられています。排出量、水、廃棄物、安全性の各指標がどのように収集され、承認され、管理され、監査されているかを検証します。これは、サステナビリティ関連財務情報の開示に関する国際サステナビリティ基準審議会のグローバル基準であるIFRS S1号に照らして重要です。

IFRS S1号は、キャッシュフロー、資金調達へのアクセス、資本コストに影響を及ぼすサステナビリティ関連リスクや機会に関する重要情報の開示を求めています。データが不十分であればバリュエーションが歪み、虚偽記載やグリーンウォッシングのリスクが高まります。

ESG DDで得られた知見を取引条件へ落とし込みます。クロージング前に必要となる証明については、クロージング前提条件を活用します。文書化が可能な事実には表明・保証を用います。拘束力が緩やかな義務は誓約事項(コベナンツ)に移行します。

定量化が可能なリスクには、価格調整、エスクロー、ホールドバック、特別補償を用います。許認可の無効化、プロジェクト用地の支配権喪失、重大な法的強制措置、ステークホルダーからの同意取得の失敗、テーリング管理の健全性の欠如といった取引を困難にする要因については、取引中止のトリガーを設定します。

ESGに関する主張がバリュエーション、ファイナンス、ステークホルダー向けの発信に影響する場合には、グリーンウォッシング対策を追加します。根拠資料、運用記録、定期報告に紐づく、測定可能な主要業績評価指標(KPI)を求めます。これにより、ESG関連の表明の防御可能性が強化されます。

ESG DDは取引の構築に反映されるべき

ESG DDを価値保全とリスク管理として扱います。価格、取引条件またはクロージング条件を変えなければ機能しません。クライアントは、取引法務チームが署名時に保護措置を確立し、クロージング時にその履行を確保し、クロージング後の是正を推進できるように権限を付与しなければなりません。

フィリピンの鉱業およびエネルギー取引において、ESG DDは単なる報告ではありません。バリュエーション、ファイナンス、取引の確実性および操業可能性を管理するための、法務・商業上のツールなのです。

Recolito Ferdinand N Cantre Jr氏はSarmiento Loriega Law Office(メトロ・マニラ)のシニア・パートナー、Cristina Marie T Bello氏はパートナー、Mikaela V Bernardino氏はシニア・アソシエイトです。

Sarmiento Loriega Law Office
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