特許法の発展の比較 – 日本

    By 多田 宏文、大野総合法律事務所
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    パンデミック下の困難な経済状況において、ビジネスや利益を守るため、特許の価値やリスクを正確に理解して、適切に用いることがより重要になっています。

    ここ数年で、日本の特許権は非常に強くなっており、日本で特許を取得し侵害訴訟を提起することが、選択肢としてとても魅力的なものとなっています。同時に、特許権侵害のリスクも非常に大きくなっていますので、ビジネスを行う場合に、慎重なリスク評価を行うことがとても重要です。本稿では、客観的なデータを用いて、近時のプロパテント傾向について説明します。

    近時状況

    日本では、最近、以前に比べて、特許権がとても強く保護されるようになっています。例えば、特許法の損害額推定規定(特許法102条)が改正され、特許権者による損害額の立証が容易になりました。

    Hirofumi Tada, Attorney at Law, Ohno & Partners
    多田 宏文
    大野総合法律事務所律师,东京
    Tel: +813 5218 2339
    Email: tadah@oslaw.org

    また、特許権者が被疑侵害者の管理下にある証拠を収集するのを容易にするために、査証制度(同105条の2)が新設されました。それ以上に、特許訴訟を専門とする弁護士として、最近、裁判官が特許権者に有利な判断をするようになってきていると強く感じています。

    特許権者勝訴率

    ここ数年で、特許権者の勝訴率が急激に上昇しています。知的財産高等裁判所は、特許侵害訴訟に関して、2014年からの統計を毎年公表しています。

    以下のグラフは、統計の差分をとることにより作成しました。グラフ1は、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所における、特許侵害訴訟の2014年から2017年の判決及び和解の内訳を示しており、グラフ2は、2018年から2020年の内訳を示しています。これらのグラフから、最近、特許権者の勝訴率が大きく上がったことがはっきりと分かります。A-COMPARISON-OF-OF-PATENT-LAW-DEVELOPMENT-各国专利法发展对比-Chart-1-2-Japanese

    認容判決は、2014年から2017年には16%でしたが、2018年から

    2020年では30%に大きく上昇しています。また、棄却判決は、2014年から2017年には45%でしたが、2018年から2020年では39%まで下がっています。なお、和解には原告に有利なものが多く含まれていますので、実質的な特許権者の勝訴率は30%を大きく上回ることにも注意が必要です。

    これらのグラフから、日本の裁判官のプロパテント傾向が分かります。現在、特許権者にとって侵害訴訟で勝つのは以前より容易になっており、一方、被疑侵害者にとっては防御するのがとても難しくなっています。

    金銭賠償額増加

    また、金銭賠償の金額も、ここ数年で上昇しています。グラフ3は、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所における、2014年から2017年の特許侵害訴訟の判決及び和解による金銭支払額の内訳を表しており、グラフ4は、2018年から2020年の内訳を示しています。A-COMPARISON-OF-OF-PATENT-LAW-DEVELOPMENT-各国专利法发展对比-Chart-3-4-Japan

    1億円以上の支払いとなったケースは、2014年から2017年には16%でしたが、2018年から2020年には30%に上昇しています。また、1000万円以上の支払いとなるケースも、2014年から2017年には53%でしたが、2018年から2020年には65%に上昇しています。1000万円未満の支払いで済んだケースは、47%から35%に減少しています。

    これらのデータから、最近、判決及び和解で支払われる金銭賠償の額が上昇していることがはっきりと分かります。

    2019年及び2020年の知的財産高等裁判所大合議判決においては、損害賠償額を増やすことが意図されていたと考えられます。また、特許法も、損害賠償の推定額を大きくする方向で改正されました。上記データは、判決又は和解において支払われる金銭賠償額が、このところ実際に増加していることを示しています。

    プロパテント傾向による影響

    これらのデータから、現在、日本の特許権がより強くなっていることが分かります。この変化は急激に起こったもので、現在の日本の特許の価値やリスクは、数年前とは大きく変わりました。しかし、このことは、まだあまり広く認識されていないように思います。

    現在、日本は、特許侵害訴訟を提起する国を選ぶにあたって、非常に魅力的な選択肢となっています。日本の裁判所は知的財産事件を専門に扱う部を持っており、裁判官は特許訴訟に精通しています。さらに、データが示すように、最近、判断が難しいケースでは、特許権者に有利な判断がなされる傾向にあります。日本における特許侵害訴訟は、特許を積極的に用いて利益を得ようとする会社にとって非常に合理的な選択になっています。

    同時に、現在、特許権侵害のリスクが大きくなっています。アメリカとは異なり、日本の裁判所は、特許権侵害さえ認められれば差止判決を下します。これにより、場合によっては、会社のビジネスにとって致命的な影響が生じることもありえます。また、最近は損害賠償額も高くなる傾向にあります。したがって、日本でビジネスを行うにあたっては、製品やサービスが特許を侵害していないかFTO調査や特許無効調査など、慎重なリスク評価が非常に重要となっています。さらに、場合によっては、近時のプロパテント傾向に鑑みて、特許侵害のリスクを、再度、評価しなおすことも重要になっています。

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