米中貿易戦争は現在、全面的な経済対立へと発展しています。その世界的な影響はワシントンと北京という枠をはるかに超えて、インドなど各国の経済に波及し始めています。
この4月、米国のドナルド・トランプ大統領は貿易赤字の拡大を理由に国家非常事態を宣言し、国際緊急経済権限法を適用しました。そして、米国へのほぼすべての輸入品に一律10%の関税を課しました。それに続いて、インドからの輸出品に対する26%の関税を含め、57カ国に対する相互関税が導入されました。その後、交渉のためにこれらの関税は90日間、停止されましたが、中国からの輸入品に対する関税は一般に145%に上昇し、一部の品目では前例のない245%となりました。これに対し、北京も最大125%の関税を課しました。

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緩和措置として両国は90日間の停止に合意し、その間に米国は中国の輸出品に対する関税を30%に引き下げ、中国も米国製品に対する関税を10%まで引き下げています。この措置は両国にとって大きな安心感をもたらしました。どちらも全面的なデカップリング(切り離し)の準備ができていなかったため、一時的な今回の関税引き下げは、貿易の再開には十分といえます。しかし、この関税引き下げでは、貿易を以前の水準に回復させるには不十分です。むしろ、30%という関税率は依然として高く、貿易の障害となって米国経済を景気後退へと押しやる恐れがあります。
この貿易戦争は世界的に深刻な影響を及ぼすと見られます。JP Morgan Researchは2025年の景気後退率を従来の40%から60%に引き上げました。国連貿易開発会議は、主要経済国での成長鈍化を予測しています。インドのGDP成長率は2024年の6.9%から2025年には6.5%へ、中国は5%から4.4%へ、米国は2.8%からわずか1%へと低下すると見込まれています。
世界的な景気後退はインドに深刻な影響を及ぼし、とりわけ輸出収入の大部分を占めるIT輸出が大きな打撃を受ける恐れがあります。商工省によれば、サービス産業はインドのGDPに最も貢献しており、GDPの約8%、世界のアウトソーシング市場の52%を占めています。長期的な景気減速はアウトソーシング需要の減少、顧客側の予算引き締め、プロジェクト承認の遅延などにより、サービス輸出の成長に大きな影響を及ぼす可能性があります。これは、インドのITサービスの最大の消費者である米国に本拠を置く企業にとって特に懸念される点です。
中国は慎重かつ長期的な戦略で対応しています。報復関税を課すだけでなく、通関手続きの遅延、より厳格な検査、米国製品に対する新たなコンプライアンス要件といった非関税障壁も設けています。これらは特に技術、食品、農産品の分野において顕著です。
中国商務部は、防衛、エネルギー、自動車産業に不可欠な7つのレアアース元素や磁石に対して輸出制限を課しました。中国がこれらの市場を事実上独占しているため、米国の製造業や防衛産業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
中国は補助金、税制優遇、住宅ローン条件の緩和、対象を絞った福祉施策などを提供して、内需の拡大を図っています。有意義な構造的転換を短期的に実現するのは容易ではありませんが、この貿易摩擦はもはや国家の威信に関わる問題です。メッセージは明確です。中国が外部からの圧力に屈することはないでしょう。
インドは微妙な立場にあります。米国との二国間貿易額は年間約1240億米ドル、貿易黒字は370億米ドルにのぼり、リスクは非常に大きいといえます。26%の関税がインドからの輸出品に課されると、仮に一時停止されたとしても、化学製品や自動車部品などの主要産業に深刻な影響を与える可能性があります。
インド政府は現実的なアプローチを採用しています。インドは最近、英国との自由貿易協定を締結し、これによりインド製品の英国市場へのアクセスが拡大する見込みです。また、米国との二国間貿易協定を交渉中で、米国からの輸入品の50%以上、約230億米ドル相当の関税の削減を提案していると報じられています。さらにインドは、アジア、アフリカ、中東との連携を強化し、EUや英国との自由貿易協定を推進することで、貿易パートナーシップの拡大に取り組んでいます。
インドのサービス産業は関税から直接的な影響は受けにくいものの、脆弱な立場にあります。特にH-1BやL-1ビザの規制強化によって、インド人専門家が米国で就労することがより困難になっています。また、データローカライゼーションや越境型デジタルサービスの制限がさらなる障害となり、ITやクリーンエネルギー、輸送分野のイノベーターの競争力に圧力をかける可能性があります。
しかし世界の貿易環境の変化は、むしろ好機にもなり得ます。中国、ベトナム、バングラデシュが米国の高い関税に直面しているため、電子機器、繊維製品、シーフードなどの産業でインドの輸出業者が市場シェアを獲得する可能性があります。これは、企業がサプライチェーンの変化にいかに迅速かつ戦略的に対応できるかにかかっています。
世界の貿易構造の変化は、インドがグローバル・バリューチェーンにおいて、信頼され競争力のあるリンクとしての地位を確立する好機となります。この現状を乗り切るには、明確なビジョン、適切に調整された政策、長期的な構造改革への注力が必要です。一貫した取り組みによって、インドは外部からのショックを和らげるだけでなく、強靭で影響力のある世界的な貿易プレーヤーへと成長することができるでしょう。
Reena Khair氏はKochhar & Coのシニア・パートナーです。

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