この1年は、人工知能(AI)の分野において重要な法的・規制上の進展が見られた年となりました。政府は、連携先やその他の関係者とともに、イノベーションや競争力といった関連分野にとどまらず、ガバナンスの領域においても、政府横断的なアプローチが必要であることを引き続き認識しています。
フィリピンでは近時、eガバナンス法が制定され、公共サービスの提供において情報通信技術の力を活用し、国家の発展と進歩を推進する必要性が明示的に認められました。これを踏まえ、同法の目的の一つとして、データ分析結果などの関連要素を活用し、政策立案者にとって情報に基づくデータ主導の意思決定プロセスを促進することが掲げられています。

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DivinaLaw
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同法の下で開発または強化が図られる複数の電子政府プログラムのうちには、人的資本管理情報システム(HCMIS)が含まれます。これは、分析を用いて、パフォーマンス管理、予測、昇進および後継者計画といった戦略的人事機能に必要な示唆を提供することにより、政府におけるHR関連業務の自動化を目指すものです。政府はAIの支援を受けた自動化による便益を取り込むことに関心を示しており、その結果として、民間部門との投資および/またはパートナーシップの機会が広がることが可能となります。
本誌に掲載された前回記事でも触れたとおり、同国の国家AI戦略ロードマップ2.0(NAISR 2.0)における7つの戦略的要請の一つは、教育の変革と将来のAI人材の育成です。これを受け、同国の教育省はごく最近、基礎教育における人工知能に関する基礎ガイドラインを発出し、「安全なイノベーション」の原則に基づいて、基礎教育にAIを責任ある形で統合するための枠組みを提示しました。
当該ガイドラインの枠組みは、相互に関連する3つの領域を基盤としている。
- 教育におけるAI:主な特徴として、特に以下を重視します。
- 人による監督:AIは支援ツールであり、専門的判断や学級運営の代替ではないことの明確化。
- 透明性:適切な場合にはAI利用の開示の要求。
- AIについての教育:デジタル・リテラシー、批判的思考、倫理的認識の育成に焦点を当て、教育者および学習者がAIツールと安全に関わり、AIの出力を批判的に評価し、十分な情報に基づく判断を行えるようにします。
- 教育システムのためのAI:教育ガバナンス、計画、モニタリングおよび学校運営を高度化するためのAI利用を対象とします。
この最後の領域(3)に関して、教育省はパートナーシップおよびマルチステークホルダー協働の重要性を認めつつも、潜在的なベンダー/パートナーに対して、とりわけ、同省のデータでモデルを学習させないことに同意するよう求めています。

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DivinaLaw
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ガイドラインの枠組みを支える原則の一つは、リスクに比例した規制です。教育省は、AIの適用・利用をリスク別に分類して、高リスクの利用にはより厳格な管理を適用する一方、最小または限定的リスクのツールによって安全なイノベーションを進めていきます。リスクの分類は、特定の利用者ではなく、システムの目的および利用文脈によって定められます。
AI技術の実装に先立ち、学校はデジタル成熟度評価を受けることが求められ、また利用開始前に、AIシステムは教育省のAI登録リストに登録されなければならなりません。
NAISR 2.0においての別の戦略的要請は、強靭に接続されネットワーク化された環境のの整備です。これに沿って、同国では近時、コネクタドン・ピノイ法が制定されました。
デジタル・インクルージョンの重要性およびデジタル・ディバイド縮小の必要性を踏まえ、同法は、データ送信ネットワークのあらゆるセグメントにおいて、適格なデータ送信産業参加者(DTIP)すべてに対する「オープンアクセス」政策を追求しています。DTIPには、VOIPサービス提供者、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)、ならびに、データ送信サービスに従事する事業の範囲における衛星システム提供者または運用者(SSPO)が含まれます。DTIPに該当する企業は、「議会フランチャイズ」を要することなく、自社ネットワークを構築または賃借することができます。代わりに、DTIPは国家電気通信委員会(NTC)に登録しなければならなりません。
「オープンアクセス」とは、公正、合理的かつ非差別的な条件に従うことを前提に、透明な方法でデータ送信ネットワークおよび関連施設の利用を認める仕組みを意味します。例えば、政府は、アクセス提供者が所有、賃借または運用するデジタル・インフラおよびサービス(アクセス・リスト)の一覧を作成します。そこへのアクセスは、アクセス希望者が競争力ある形でデータ送信サービスを提供するために必要とされるものとして位置付けられます。
リストに含めるための要件として、アクセスは以下を満たさなければならない。
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- 競争ならびに新規参入者の参入および事業拡大を促進すること
- デジタル・インフラの効率的な利用および投資を促進すること
アクセス提供者は、アクセス希望者の申請が技術的に実現可能であることを条件として、アクセス・リストに含まれるデジタル・インフラおよびサービスへのアクセスを、オープン、公正、合理的かつ非差別的な基準で付与しなければなりません。紛争が生じた場合、当該紛争は解決のためNTCに付託することができます。
アクセス提供を拒否した場合、当該拒否が、公開市場料金の不払いに基づく場合、またはアクセス提供によりアクセス提供者の技術運用に悪影響を及ぼすセキュリティ上のリスクにさらされる場合(DICTにより確認された場合)を除き、行政罰金の対象となり可能性があります。
また、法律は以下も求めています
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- パッシブ・インフラの所有者、賃貸人または運営者は、データ伝送ネットワークまたはサービスに必要となる、もしくはこれを支えることができる自前のパッシブ・インフラについて、技術的実現可能性を条件として、オープン、公正、合理的かつ非差別的な基準で、共同設置および共同利用できるようにしなければなりません。
- 当該のパッシブ・インフラは、とりわけ遠隔地、未整備地域および整備不十分地域において整備されるべきです。大手事業者が正当な技術上の、または安全上の理由なくアクセスを拒否した場合、小規模提供者は、執行または調停を求めてNTCに紛争を付託することができます。
「オープンアクセス」政策に起因するサイバーセキュリティ上の正当な懸念に対処するため、法律は、DTIPsに対し、登録から2年以内に信頼できる第三者機関からサイバーセキュリティ認証を取得することを義務付けています。これを満たさない場合、停止または登録取消しとなる可能性があります。
国際的観点からみると、上記の法的・政策的方向性は、フィリピンが2026年1月1日にASEAN議長国を引き受け、「Navigating our future together」をテーマとすることとも整合しており、責任あるAIの発展が今後重要な役割を果たすことが示唆されています。フィリピン大統領は、ASEAN 2026において議長国フィリピンの国内ローンチにおいて、ASEANの3つの柱(平和・安全保障、経済、社会・文化)に関するビジョンを示す中で、この点を強調しました。
フィリピンにおけるGrokの削除はAIのプライバシー・リスクを浮き彫りに
今年初め、DICTは、AIツールであるGrokについて、当事者の認識および同意なく実在の人物(著名人を含む)に関する悪意あるコンテンツや素材の生成を可能にしていることが、同国のサイバー犯罪防止法その他の刑罰法規に違反するおそれがあるとして、フィリピンにおける削除を命じました。しかし数日後、xAI(Grokの開発者)が是正措置の実施を約束したことを受け、当該削除は解除されました。
AIアプリケーションとデータ保護法の規制上の近接性を踏まえ、国家プライバシー委員会(NPC)は最近、他のデータ保護当局とともに、AI生成画像およびプライバシー保護に関する共同声明を発出し、当事者の認識および同意なく、識別可能な個人を現実的に描写する画像・動画を生成するAIシステムと、それにより生じ得る害悪への懸念を表明しました。
データ保護当局は規制介入が必要となり得ることを認めつつ、組織に対し、以下を求めています。
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- 個人情報の不正利用を防止するための強固な保護措置を実装すること
- 許容される利用および不正利用の帰結を含む、実質的な透明性を確保すること
- 個人情報を含む有害コンテンツの削除を求めるための有効かつ利用しやすい手段を、個人に提供すること
- 子どもに対する固有のリスクに対処すること
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