フィリピン最高裁判所は、商標の混同のおそれを判断するにあたって「全体観察テスト(holistic test)」を明確に放棄し、「主要部分テスト(dominancy test)」を採択することとしました。もっとも、最高裁は主要部分テストが厳格なルールもとに実施されるものではないと明言しており、決まった基準が存在しないことから、当事者はどの要素が商標の「支配的要素」とみなされるのかについて不確実性を抱くケースが多くあります。判例およびフィリピン知的財産庁(Intellectual Property Office of the Philippines、IPOPHL)の判断を検討すると、分析のためにより具体的な枠組みを示すという一定の傾向が見て取れます。
複合商標および図形商標

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複合商標を評価する際、裁判所は一般消費者の注意を最初に引く特徴を抽出します。このアプローチは、実際の市場環境において消費者が商標の細部ではなく、目を引く印象的な特徴に依拠して識別しているという現実を踏まえたものです。分析は、商標間の視覚的、聴覚的、観念的な類似性に焦点を当て、支配的、特徴的、本質的な特徴が比較の中心となります。
競合する図形がデザイン上大きく異なる場合、主要部分が模倣されていないと判断されます。Great White Shark v Caralde事件では、いずれの商標にもサメの図形が含まれていましたが、一方は文字で構成されたカラフルなサメ、他方は単純な輪郭線のサメでした。裁判所は、全体的なデザインおよび商業的印象が異なるとして、混同のおそれを否定しました。
また、Lacoste SA v Crocodile事件では、いずれの商標も爬虫類(saurian)を描いていましたが、視覚的に明確に区別できるとして混同を否定しました。Lacosteの商標は右向きで背中や皮膚の実物のようなディテールを有するワニであったのに対して、Crocodileの商標は左向きで上向きに傾いた鱗模様のワニと、スタイライズされた「Crocodile」の文字を組み合わせたものでした。向き、ディテール、全体デザインの違いによって、両者は異なる視覚的、かつ商業的印象を与えると判断されました。
複数語から成る商標
McDonald’s Corp v LC Big Mak事件では、「BIG MAK」と「BIG MAC」が比較されました。両者は発音が同一であり、聴覚的に混同を生じるおそれがあるとされました。視覚的にも、いずれも6文字の2語から成り、最初の語が同一で、2語目もほぼ同一でした。
一方、語の概念的意味が支配的となる場合もあります。Suyen Corp v Danjaq LLC事件では、「Bond」という語が有名な架空のスパイを想起させるため、裁判所は「AGENT BOND」が「JAMES BOND」と関連付けられると判断しました。主要部分テストは、商標の視覚的・聴覚的特徴だけでなく、観念的連想や全体的印象も考慮します。
記述的であったり、一般名称は独占することができないため、通常は主要部分テストであまり重要視されません。しかし、独特なスタイライズが施されている場合には主要部分と認められることがあります。Mang Inasal v IFP事件では、「INASAL」という語は記述的であるが、「黒い縁取りの太字で赤の字色を黄色の背景に段違いに配置したデザイン」が主要部分を構成し、被告がこれを不正に模倣したと判断さました。
また、Dermaline, Inc v Myra Pharmaceuticals事件では、「DERMALINE」と「DERMALIN」が比較され、Dermaline社がMyra Pharmaceuticals社の商標の特徴的部分「DERMALIN」を流用したとされました。商標に記述的な語根が含まれる場合、その部分は大きく評価されませんが、「DERMALIN」においては接尾辞の「-LIN」に独自の識別力があると判断されました。
単語商標
裁判所およびIPOPHLは、一般に最初の音節または類似する文字列を支配的要素とみなす傾向にあります。Wilton Dy v Koninklijke Philips Electronics事件では、「PHILITES」が「PHILIPS」と混同を生じるおそれがあるとされた。両者は「PHILI」を共有し、聴覚的印象も近似していたためです。
一方、Seri Sombooksakdikul v Orlane SA事件では、「LOLANE」と「ORLANE」に共通する接尾辞「-LANE」は主要部分ではないと判断されました。裁判所は、両者の発音が異なる(LOLANEは「レイン」、ORLANEはフランス語起源の「ラン」)ことを指摘し、IPOPHL長官が「フィリピン人は必ずORLANEを『オーレイン』と発音する」とした包括的判断には根拠がないとしました。
主要部分テストの課題と展望
主要部分テストの批判点として、判断が主観性によって左右されることが挙げられます。どの要素が「主要部分」であるかについては判断者によって見解が分かれ、類似の事案で相反する結論が導かれることがあります。さらに、このテストは支配的要素に注目する一方で、商標全体の印象も考慮する必要があるため、「全体観察テスト」との理論的混乱を招くことがあります。主要部分テストは今後も進化を続けるとみられ、その洗練化は、ブランド保護と商標紛争における公正の均衡を図る上で極めて重要となります。
ERNEST LUIGI A. MANZANARESは Federis & Associates Law Officesのアソシエイトです。

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