国内で発生する多様な自然災害に対して、実効性のある保護を確立するためには、総合的なアプローチが不可欠です。
インドの広大かつ多様な地理的環境により、同国は世界で最も災害に見舞われやすい国の一つです。インドは、洪水、サイクロン、地震、地滑り、集中豪雨などの自然災害に頻繁に見舞われており、これらは多くの人命を奪うだけでなく、インフラ、住宅、生計にも甚大な被害をもたらし、しばしば社会的弱者をさらなる貧困へと追い込んでいます。こうした災害が定期的に、かつ深刻な規模で発生しているにもかかわらず、インドの家庭やコミュニティの自然災害に対する経済的な回復力は、依然として驚くほど脆弱です。
保険普及率の低さ
インドにおける保険の普及率は、世界平均と比べて著しく低いものです。保険全体の普及率(総保険料のGDPに対する比率)は2023~24年度時点で約3.7%。住宅保険などの損害保険の普及率は1%未満にとどまっています。保険は本来、重要なセーフティネットとして機能すべきですが、十分に活用されておらず、何百万人もの人々が自然災害の経済的余波にさらされています。その理由は以下の通りです。
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Shailaja Lall
パートナー
Shardul Amarchand Mangaldas & Co
ニューデリー
Tel: +91 98 7100 4854
Email: shailaja.lall@amsshardul.com低い認知度と金融リテラシー:一般の人々の間で、災害保険の重要性や利点についての認識が広く不足しています。特に農村部や脆弱な地域の多くの個人やコミュニティは、利用可能な保険商品や、それが災害後の経済的損失からどのように守ってくれるかについて十分な情報を得ていません。
- 費用負担とアクセスの問題:大部分の人々、特に低所得層にとって、保険料は負担が大きいと認識されています。さらに、遠隔地や災害頻発地域では保険サービスへのアクセスが限られており、保険の加入や更新が困難です。
- 信頼の欠如と価値認識:保険会社への信頼感の欠如や、迅速かつ公正な保険金の支払いに疑念を抱いていることが、保険加入への意欲を低下させています。多くの人は、保険金請求の手続きが煩雑で、支払いが十分でない、または迅速ではないと考えており、セーフティネットとしての保険の価値が十分には認められていません。
- 製品のイノベーションとカスタマイズの不備:保険商品は、地域やコミュニティが直面する特有のリスクに必ずしも対応していません。革新的かつ地域特化型の保険ソリューションが不足している状況です。
- 規制面および制度面の課題:災害保険に関する規制枠組みや制度上の支援は、まだ発展途上です。保険の補償範囲にギャップがあり、民間保険会社が高リスク市場に参入するためのインセンティブが限定的で、補償範囲の拡大に向けた官民連携も不十分です。
- 政府による救済への長年の依存:災害後は、政府による救済や人道支援に長年依存してきました。これにより、個人やコミュニティがリスク管理手段として保険を求める緊急性を低下させています。
- データおよびリスク評価の限界:災害に関する詳細なデータが不足しているため、正確なリスク評価や保険料の設定が困難になっています。その結果、保険料が高額になったり、補償が不十分になったり、価格の透明性が欠如したりして、保険加入への意欲を妨げています。
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保護の欠如
インドの保険に関する法的枠組みは、一定の側面では堅固ですが、自然災害に対する包括的な保護という点では明らかに不十分です。2005年災害管理法は、インドにおける災害管理を規定する主要な法律です。同法は災害対応や緩和のための制度的枠組みを定めていますが、補償に関する規定は限定的です。
同法は保険による補償を明示的に義務付けていません。中央政府に対して、災害被害者への「善意の(ex gratia)」給付を行う権限を与えていますが、これは裁量に任されています。補償の適格性や金額を決定するための客観的な基準がなく、統一されず、時には不十分な救済にとどまっています。また、被災者への善意の給付を行うための厳格な期限も定められておらず、同法による救済の実効性が損なわれています。
また、洪水、地滑り、地震やそれに類する災害による損失に対して、保険の補償を義務付けたり標準化したりする専用の法律もありません。法定の保険義務がないため、大規模災害時にはインド保険規制開発庁(IRDAI)が対応しています。
IRDAIは、これまでに幾度も、多くの災害時に、保険会社に対して保険金支払いの迅速化、書類要件の緩和、可能な限り電子手続きによる支払い管理、被災地での特別窓口の設置などを指示する通知を発出してきました。これらの措置は救済を提供するものの、事後的で断片的で、個別の災害に限定された対応であり、包括的な枠組みの一部とはなっていません。
司法判断
インドの裁判所は、自然災害や保険会社と契約者間の紛争など、保険契約の解釈に関する問題を幾度も取り扱ってきました。しかし、自然災害の被害者を保護する手段として、保険による保護を推奨する司法判断は限られています。一般にインドの裁判所は、補償のための客観的な基準を設けたり、保険の適用範囲を含むように法定保護を拡大したりすることを控えてきました。
この慎重な姿勢の代表例として、Reepak Kansal and Ors対Union of India(2021年)での最高裁判所の判決があります。この事件では、申立人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の被害者に対する善意の給付と、そのような災害に対する国の保険制度の実施を求めました。なお、COVID-19は2005年災害管理法に基づいて、適用対象の災害であると宣言されています。裁判所は、このような問題は行政の政策領域に属するものであるとして、介入を見送りました。
判決では、第15次財政委員会がすでに国の保険制度を推奨していることに言及し、政府がこれらの推奨に基づいて行動することを期待すると表明しました。しかし、これらの推奨を現実のものとするための具体的な措置は、現時点で講じられていません。さらに、裁判所は善意の給付のための指針を推奨する責任は国の機関にあるとしつつ、支払われる補償額に関する客観的な基準を定めることを拒否しました。
同様に、Ficus Pax Private Limited対Union of India(2020年)でも、司法はまたも、拘束力のある指針の発出には至りませんでした。代わりに、裁判所は、雇用者と従業員がパンデミック期間中の支払いについて相互に合意できる取り決めを行うよう促し、体系的な解決策ではなく暫定的な措置を選択しました。
S Senthilkumar and another対the Director of Fisheries Department(2022年)では、マドラス高等裁判所が、サイクロンによる被害を受けた漁師夫婦が、中央政府の制度に基づく経済的支援の申請が却下された事件について審理しました。裁判所は、このような申請を評価するための調査の方法について一定の指針を示し、このような場合に法定/政府の制度に基づく補償が、恣意的に却下されてはならないと指示しました。これは注目すべき判決でしたが、このような事例はごくわずかです。
政府の制度
自然災害に対する国の保険制度は存在しませんが、政府はこれまでに、以下のような有効な保険制度を導入してきました。(1)2020年3月に新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対応して開始された「Pradhan Mantri Garib Kalyan Package」では、医療従事者に包括的な個人傷害補償が提供されました。(2)2016年に開始された「Pradhan Mantri Fasal Bima Yojana(PMFBY)」は、自然災害を含む農作物の損失から農家を保護するための、世界最大規模のテクノロジー活用型の農作物保険制度です。(3)「Pradhan Mantri Suraksha Bima Yojna」などの手頃な保険制度は、自然災害を含む個人傷害補償を提供しており、「Pradhan Mantri Jeevan Bima Yojana」は同様のケースでの生命補償を提供しています。
国家災害対策庁の下で、これらすべての制度やその他の災害関連の臨時給付を統合し、すべての自然災害に対して保険補償を提供する統一的かつ将来を見据えた仕組みを確立するため、重要な取り組みが進められています。しかし、洪水、地震、その他の災害の被害者に同様の補償を義務付ける法的または行政的な指示は存在せず、大部分の人々が保護されない状況が続いています。
パラメトリック保険の登場
従来の損害補償型保険の限界を踏まえて、インドは近年、災害リスク管理のための新たな解決策としてパラメトリック保険の導入を検討し始めました。パラメトリック保険は従来の保険とは異なり、実際の損失評価ではなく、一定の降雨量、風速、地震活動などの事前に設定されたトリガーに基づいて保険金が支払われます。この手法には、迅速な支払い、事務負担の軽減、透明性の向上など、いくつかの利点があります。
結論
インドが自然災害にさらされている現実は避けられず、その経済的・人的コストは甚大ですが、同国の保険制度は断片的で普及率が低く、法的保護も限定的で、包括的かつ客観的な補償の仕組みが欠如しています。司法の介入は慎重であり、政府の制度も主に事後的かつ個別の災害に対応したものです。立法に基づき、強固な規制監督に支えられ、グローバルなベストプラクティスを取り入れた包括的かつ将来を見据えたアプローチが緊急に求められています。これにより、インドのすべての人々が、居住地にかかわらず、自然災害の被害から実効性のある経済的な保護を受けられるようにする必要があります。

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