対台湾投資の実践と動向

By Alex Jih-Ching Yeh、Mark J Harty/LCS & Partners
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2019年以来、世界は、新型コロナ感染症、世界各地で増加する紛争、超大国間の競争の激化などの課題に対峙してきました。しかし、台湾ではこの間好景気に恵まれ、国内外の投資家が新たなビジネスチャンスを追求・開拓しています。台湾でのビジネスや投資活動の拡大に伴い、本稿では、投資機会やビジネスチャンスを求める日本企業のためにその体制や最近の動向についての知見を紹介します。

現地企業の種類

外国人投資家が台湾でビジネスを行う場合、通常、現地法人の子会社、あるいは外国企業の台湾支店の2種類の事業体が検討対称となります。どちらの事業体も台湾の法律に基づき法人格が認められており、事業を行い、財産権(不動産を含む)を取得できますが、相違点があります。

対台湾投資の実践と動向 Alex Jih-Ching Yeh
Alex Jih-Ching Yeh
パートナー
LCS & Partners(台北)
電話: +886 2 2729 8000 (ext. 7658)
Eメール: alexyeh@lcs.com.tw

台湾の現地法人子会社の場合、「株式有限責任会社」または「有限会社」の形態が考えられ、(株式有限責任会社の場合は)株主による株式引受、または(有限会社の場合は)社員による出資によって設立することができます。いずれの種類の事業体も2名以上の株主または社員が必要です。しかし、株式有限責任会社の場合は、法人株主は1名で十分です。

会社の所有権に関する支配権の変更は、株式または出資の譲渡によって実現することができます。社員が保有する有限会社の出資は、取締役以外の譲渡の場合は出資総額の過半数を代表する社員が、取締役の譲渡の場合は出資総額の3分の2以上を代表する社員が承認しなければ、自由に譲渡することができません。

株主が保有する株式は、譲渡を制限する株主間契約がある場合を除き、通常、自由に譲渡することができます。どちらの形態の企業も通常現地の税制が適用されます。一般的に、株式または出資の譲渡には、非常に特殊な事情がない限り印紙税は必要ありませんが、譲渡の種類や規模によっては、有価証券取引税、キャピタルゲイン税、所得税が課される場合があります。

外国企業の台湾支店の場合は、本社と同じ法人格を有しており、株式保有や出資の構造がありません。そのため(1)台湾支店における支配権変更は、資産または事業譲渡取引として構成される必要があり(本社自体を台湾外に売却または譲渡する場合を除く)、(2)株式引受や出資の手続きなしに、本社から支店へ随時運転資金を送金することができます。また(3)本社に利益を送金する場合、源泉徴収税は課されません。(4)現地での取締役会は不要ですが、現地責任者と支店長を現地当局に登録する必要があります(同一人物が兼任でき、台湾人以外でも可)。

台湾支店は、現地の法人税(特別な事情がない限り通常20%)、付加価値税(VAT)(特別な事情がない限り通常5%)および利息やロイヤルティに対する源泉税の対象になります。

外国人投資許可

台湾人以外の個人または台湾以外の事業体が投資を行う場合、経済部(MoEA)の投資審議委員会(IC)に申請し、承認を得る必要があります。投資には以下のものが含まれます。(1)台湾企業の発行する株式の保有、または台湾企業への出資(ただし、台湾証券取引所、店頭売買(OTC)、台北取引所の興櫃市場を通じた公開会社の発行済み株式の一度の購入数が(全発行数の)10%未満である場合、およびPIPE(投資会社が上場企業の私募増資を引き受けること)での株式引き受けが10%未満の場合は含みません)、(2)台湾支店、台湾専有企業、台湾合名会社の設立、(3)上記の出資対象事業に対する1年を超の株主融資または融資。

対台湾投資の実践と動向 Mark J Harty
Mark J Harty
シニアカウンセル
LCS & Partners(台北)
電話: +886 2 2729 8000 (ext. 7735)
Eメール: markharty@lcs.com.tw

科学工業園区(サイエンスパーク)や輸出加工区を拠点とする企業について、外国人投資許可申請を処理する担当当局は、各サイエンスパーク事務局や輸出加工区管理局です。

MoEAの説明によれば、外国人が投資する台湾支店はICによる事前承認が必要となる中国(PRC)資本の企業である場合を除き、事前にICの承認を受けることなく直接設立することができます。

台湾海峡両岸規制(Taiwan cross-strait regulations)に従い、中国資本の外国企業には、中国の国民、法人、組織、団体、公共機関、当局、政府機関(中国人・中国法人)が直接または間接的に株式または資本の30%を保有、出資、または支配(事実上の支配を含む)するあらゆる外国企業が含まれます。

外国人投資家の場合、ICはネガティブリスト方式を採用し、申請すべき事業項目がネガティブリストで制限または禁止されていなければ、申請者は通常、制限なく(またはわずかな制限で)承認を得ることができます。

中国資本の外国企業は中国人・中国法人として扱われるため、ICはポジティブリスト方式を採用し、申請者は厳格な審査対象となり、申請すべき事業項目がポジティブリスト(必要に応じ、特別な基準が追加で必要となる場合もあります)で許可されていなければ承認を得ることはできません。

一般的な慣行では、中国人・中国法人が投資や支配を行わない限り、大半の事業項目は通常、外国人投資家に開放的かつ友好的となっています。これまで厳しく規制されてきた分野(証券、銀行、保険、技術、メディア、電気通信など)であっても、申請者が特定の要件を満たしているかどうかを条件に、中国に関連のない外国投資であれば通常受け入れられます。

多国籍企業のグループ構造の観点から言えば、中国本土と台湾の両方に子会社を持つクロスボーダー企業が増えるにつれ、一方が他方を支配したり支配されることのないよう、再編プロセスを通じて子会社を2つの類似の子会社または関連会社に分離していることに執筆者は注目しています。

M&A

M&Aもまた、外国企業が台湾に投資する一般的な手法です。クロスボーダーM&A取引では、買収構造による特別な事例を除き、一般的に外国人投資許可が必要となります。

台湾の法律では、一般的にM&A取引の仕組みとして、新設合併、資産または事業のすべてまたは大部分の買収や会社の資産・負債の一括譲渡・引受、強制的な株式交換、会社分割(スピンオフ)の4種類があります。

こうしたM&A取引を承認するための適切な基準は以下の通りです。(1)非公開会社の場合は、当該会社の発行済株式総数の3分の2以上の出席を定足数とし、出席株主の議決権の過半数の承認が必要です。(2)公開会社の場合は、当該会社の発行済株式総数の過半数以上の出席を定足数とし、出席株主の議決権の3分の2以上の承認が必要です。(3)公開会社の上場廃止を招く可能性のあるM&A取引の場合は、上場廃止となる公開会社の発行済株式総数の3分の2以上の株主の承認が必要です。(4)会社の新規発行株式数が発行済株式総数の20%未満であり、かつ当該取引に用いられる対価の額が当該会社の純資産額の2%未満である小規模な取引の場合は、取締役の3分の2以上の出席を定足数とし、その過半数による取締役会の承認のみが必要です。(5)親会社と、親会社が90%を超える株式を保有する子会社との間の取引の場合は、取締役の3分の2以上の出席を定足数とし、その過半数の関連親会社および子会社の取締役会の承認のみが必要です。

M&A取引に関連する公開会社の場合は、証券取引法、株式の第三者割当を行う公開企業に対する指示書(Directions for Public Companies Conducting Private Placement of Securities)(第三者割当指示書:Private Placement Directions)、ならびに公開会社の株式の公開買付を定める規制(Regulations Governing Public Tender Offers for Securities of Public Companies)(公開買付規制:Tender Offer Regulations)に基づいて定められたPIPE取引および公開買付の仕組みも、計画されているM&A案件を組成するために検討されます。

現地の慣行では、PIPEは一般的に、戦略的提携、合弁事業、逆買収、あるいは裏口上場において、また敵対的買収への防衛手段として見なされ、用いられています。PIPEによる私募増資を予定している公開会社は以下の制限を受けるものとします。(1)当該会社の発行済株式総数の過半数以上を定足数とし、出席株主の議決権の3分の2以上の承認が必要です。(2)累積損失のない黒字会社の場合、PIPEの引受先は、(a)当該PIPEの発行に、適用法が定める特定の事由により台湾証券取引所または店頭売買(OTC)の承認を必要とする場合、非インサイダー又は発行者の関連会社、または(b)「戦略的投資家」(適用法に定義)に限定されます。(3)価格設定が妥当であることが必要です。オファー価格が、定義された「基準価格」の80%未満であれば、独立専門家の意見聴取が必要です。

株式公開買付けは、上場会社の買収、スクイーズアウト、上場廃止、あるいは逆買収、裏口上場取引でもよく利用されます。50日以内に上場企業の20%以上の株式を購入しようとする個人(あるいは総称して「人々」)は、制定法による公開買付の手続きをとらなければなりません。さらに現在の市場の慣行や動向を踏まえると、M&A法に基づく強制的な株式交換や三角合併も、公開会社が関与する再編・上場廃止取引の実現可能な選択肢あるいは組み合わせの一つとして機能します。

提案されている合併取引が市場シェアまたは売上高に関して一定の基準を満たす場合でも、台湾公正取引委員会による合併(または反トラスト法)審査が必要となる場合があることに留意しなければなりません。

LCS & Partners

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