台湾における会社の「責任者」の義務

By 李立普、陳秋華、潘怡君/フォルモサンブラザーズ法律事務所(台北)
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国企業が台湾に子会社を設立する場合、または台湾企業の主要株主となる場合、執行役会の役員を任命する必要があります。本稿では、台湾会社法に規定されている2種類の「責任者」、つまり取締役と経営層役職員の責任について紹介します。

台湾における会社の「責任者」の義務 李立普
李立普
CEO兼マネージングパートナー
フォルモサンブラザーズ法律事務所(台北)
Eメール: lipolee@mail.fblaw.com.tw

会社の責任者は同法に準じて民事責任、刑事責任、経営責任を負う可能性があります。台湾での投資を実施する前に、外国人投資家は、台湾企業の取締役および経営層役職員の責任について理解する必要があります。

会社の責任者は、会社の業務を忠実に実行し、善良な管理者としてしかるべき配慮を行う責任があります。責任者が本規定に反して行動し、会社に損害を与える結果となった場合、当該責任者が責任を負うものとします。

さらに、会社の責任者は、会社の業務を行なう義務があるため、会社の損害につながるいかなる義務違反も、刑法の信認義務違反の罪となる可能性があります。

会社の責任者が会社の事業を行う一方で、第三者に損害を与えた場合、当該責任者と会社はかかる損害に対して連帯責任を負うものとします。上記の基本条項に加えて、以下の内容は経営層役職員および取締役の責任を説明するものです。

経営層役職員

台湾における会社の「責任者」の義務 陳秋華
陳秋華
マネージングパートナー
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Eメール: chchen@mail.fblaw.com.tw

経営層役職員は同法に基づき会社によって任命されます。経営層役職員は定款または雇用契約に明記されている役職員の義務や権限の範囲を条件として、会社の運営を管理し、会社のために関連するビジネス文書に署名する権限を有するものとします。

経営層役職員は(有限会社の)取締役会の決定、または(株式有限責任会社の)株主総会や取締役会の決定に基づき任務を遂行し、職務の範囲内において会社の責任者であるものとします。

原則として経営層役職員は会社に常勤し、同時に他の会社の経営層役職員を兼務しないものとします。経営層役職員はまた、当該会社と同一の事業を営む他の会社のために(取締役との兼務も含め)事業活動を行ってはならないものとします。ただし、経営層役職員の競業避止制限の免除について、別途(有限会社の)全株主の議決権の過半数の賛同が得られた場合、あるいは(株式有限責任会社の)取締役会の決議により賛同が得られた場合は除きます。

取締役

取締役は会社法に基づいた会社の責任者であり、会社の事業活動を行う最高責任者です。有限会社では取締役は全取締役の過半数の賛成票によって事業活動を行い、法律、会社の定款、株主の決定に従うものとします。

台湾における会社の「責任者」の義務 潘怡君
潘怡君
パートナー
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日常業務については、各取締役は自主的に行動することができます。ただし、他の取締役が異議を唱える事項においては、かかる事項における追加手続きを中断することによって直ちに当該異議に従うものとします。株式有限責任会社では、事業運営は法令や会社の定款の定めるところにより、株主総会の決議に従って履行される事項を除き、取締役会によって採択された決議に従って実施されるものとします。

しかし、取締役会は権限付与条件を策定し、事業の性質に従って特定の人材に意思決定権限を付与することができます。業務の執行は取締役会の決議により決定されますが、決議が会社に損害を与える場合、賠償責任を負うのは、その提案に反対した取締役を除き、決議に参加した取締役です。

取締役も競業避止義務の対象となりますが、経営層役職員に関してはその制限は緩和されています。有限会社においては、取締役が自らの利益のために、あるいは当該会社の事業と同種の事業を営む他の会社のために行動することを意図している場合、当該取締役は全株主に対してかかる行動の重要な内容について説明し、全株主の議決権の少なくとも3分の2の事前承諾を得るものとします。

株式有限責任会社においては、取締役が会社の業務の範囲内において自らのために、または他者のために何かを行う場合、株主総会でかかる行動の重要な内容について説明し、株主の承認を得るものとします。株主総会は発行済み株式総数の少なくとも3分の2に相当する株主の過半数が出席しなければなりません。

また台湾経済部によると、取締役と経営層役職員の競業避止義務は同一の親会社が全額出資した類似の子会社に雇われているか、あるいは同一の親会社が全額出資した子会社や孫会社に雇われている取締役または経営層役職員には適用されない。

例えばA社がB社とC社の株式を100%保有している一方で、C社がD社の株式を100%保有している場合、同時に4社すべての取締役あるいは経営層役職員を務めたとしても、4社の利益が同じであるため、こうした会社で取締役あるいは経営層役職として雇用されても競合とはなりません。

競業避止に加え、取締役は以下のような利益相反を避ける義務があり、また以下のような利益相反の可能性を会社に通知するものとします。

  • 原則として、取締役は自己または他者のために、会社と売買、賃借、またはその他の法律行為を行わないものとします。つまり取締役は同時に自己と会社の代表とはならないものとします。有限会社においては、会社はその他の株主によって代表されるものとします。株式有限責任会社においては、会社は監督者によって代表されるものとします。
  • 株式有限責任会社において、取締役が取締役会の提案に関して個人的利益がある場合、当該取締役はかかる個人的利益の重要点について取締役会に説明し、当該提案への投票を辞退し、他の取締役の代理として投票を行わないものとします。

特別な株主責任

取締役と経営層役職員に加えて、会社法では、実質的に会社を管理している株主や非取締役に特別な責任を付与しています。

親会社は以下の状況に注意を払わなければなりません。

  • 原則として、株主の会社に対する責任は各自が出資した資本金の範囲に限定されます。しかし、株主が法人としての会社の地位を濫用し、会社に一定の負債を負わせ、会社がかかる負債を返済するのは難しいと思われる場合、また当該濫用が甚だしい場合、かかる株主は必要に応じてその負債の返済義務を負うものとします。
  • 取締役に就任していないが実質的に取締役としての業務を執行し、会社の人事、財務、事業運営を事実上管理し、取締役に対して事業経営を実質的に指示している者は、会社法における取締役として民事責任、刑事責任、経営責任を負うものとします。

取締役または経営層役職員が台湾に常駐せずに台湾の子会社の管理・運営を直接行う場合、従業員による会社の法令違反や会社への利益損害が発生した場合、取締役、または経営層役職員がそうした問題を発見することは困難になります。

しかし法令違反を犯した従業員の行動に対しては、会社の責任者として取締役、または経営層役職員が、最終的に上記の責任を負う必要があります。

会社の責任者の責任を理解することは、経営者の地位に適切な人材を任命するうえで不可欠です。台湾において投資を予定している、あるいはすでに投資を行っている日本企業は、自社の取締役および経営層役職員がその職務を果たすための効果的な管理システムを確立しなければなりません。

取締役、経営層役職員、および親会社へのリスクが軽減するよう、会社は、台湾の会社法に関する規制についての教育訓練も提供し、定期的な調査や、外部機関を任命して業務監査を実施する必要があります。

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