本法務ガイドは、日本の投資家に向けて、フィリピンで事業を行う際の実務上の概要を提供します。
フィリピンの外資出資規制

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第一に、外国投資家は、予定している事業が外資出資規制の対象となるかどうかを判断しなければなりません。以下の事業分野の一覧は全てを網羅しているわけではありませんが、外資出資が禁止されているか、または上限が設けられています。
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- 政府資金によるインフラ・プロジェクトおよびコンサルティング・サービス:上限40%。ただし、建設される構造物が、外資40%出資の事業体では十分に有していない技術または工法を必要とする場合、75%まで引き上げられることがあります。
- 公共事業(電力配電、送電、石油製品パイプライン輸送システム、水道パイプライン配水システム、港湾、公共交通車両):上限40%
- フィリピン大統領により「重要構造物(critical structures)」と指定された公共サービス、すなわち、物理的であるか仮想的であるかを問わず、フィリピンにとって極めて重要で、当該システムまたは資産の機能不全や破壊が国家安全保障に悪影響を及ぼすようなシステムおよび資産を所有、使用、運用する公共サービス:上限50%
- 私有地の所有:上限40%
- 払込資本金が2500万フィリピンペソ(40万5700米ドル)未満の小売事業者:上限40%
- 専門職業務(例えばエンジニアリング業務):外資出資は認められない
外国投資家はフィリピンにおける予定事業の内容を法務アドバイザーに詳細に説明しするべきです。これにより、アドバイザーは想定される事業活動に出資規制があるかどうかを評価し、必要に応じて、完全な法令遵守を確保するための事業体のストラクチャリングを行うことができます。
外資の出資上限により外国投資家がフィリピン国民と提携しなければならない場合、取締役会および株主レベルで、例えば次のような少数出資者保護の仕組みを採用することができます。
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- 定足数および通知要件の強化、
- 重要行為(例:定款等の基本書類の改正、新株発行および重要な借り入れ)に対する同意権。
また、外国投資家は、希薄化防止、譲渡制限、タグアロング権など、他の保護メカニズムについても交渉することができます。ただし、これらのメカニズムはいずれも外国投資家に会社の支配権を付与してはならず、また、名義貸しまたは「ダミー」スキームを構成してはなりません。これらはフィリピン反ダミー法により禁止されています。
子会社または支店の選択

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フィリピンで事業を行おうとする外国法人は、現地拠点を設けなければなりません。個人事業またはパートナーシップとして組織することも可能ですが、最も一般的で実務的な形態は会社(コーポレーション)です。
現地法人:外国投資家は、外資出資規制の範囲内で、全額出資または一部出資の現地法人を設立することができます。会社は、フィリピンで事業を行うための別個の独立した法人格を有します。
親会社は、法人格否認の法理が適用される事情がない限り、子会社の債務について責任を負いません。また、子会社は通常、フィリピン源泉所得および外国源泉所得の双方について課税されます。
支店:予定する事業活動が外資出資規制の対象でない場合、外国投資家は、それらの活動を行うためにフィリピン支店を設置することができます。支店は本店と別個の法人格を有せず、支店の債務は最終的に本店の債務となります。また、支店は通常、フィリピン源泉所得についてのみ課税されます。
SEC登録および営業許認可
上記の事業体は、フィリピン証券取引委員会(SEC)に登録しなければなりません。
SEC登録後、事業開始前に、以下を含む他の基本となる登録および許認可を取得しなければなりません。
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- 事業を行う各地方自治体の事業許可、
- 税務登録、
- 雇用関連の登録。
事業体が特別な規制の対象となる活動(例:金融サービス、発電、建設、食品や医薬品の輸入・流通)を行う場合、通常、当該活動を行う前に、関連するすべての許可および承認を取得しなければなりません。
事業体が適格であり、税制上の優遇措置や、その他の財政上の優遇措置の利用を予定している場合、事業開始前に、関連する所管機関(例:フィリピン経済特区庁や投資委員会)にも登録しなければなりません。
必要とされる登録、許認可、所要期間は、事業/プロジェクトの内容および所在地により異なり、フィリピンでの事業運営を計画する際に考慮するべきです。実務上は、行政上の遅延が生じる可能性を織り込んだ余裕を持ったスケジュールを採用することが望ましいです。
土地所有の制限と賃借

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前述のとおり、外国投資家は、土地を所有する会社の持分を最大40%まで保有することができます。ただし、他人が所有する土地の上に存在する建物その他の構築物の所有については、このような制限はありません。
もっとも、外国投資家は投資目的のために、投資家リース法に基づいて通算で最長99年を超えない期間で土地を賃借することができます。賃借物件は、政府が承認し、かつ登録された投資の目的のみに使用されなければならず、また当該投資の目的のために合理的に必要とされる範囲の面積でなければなりません。
土地は、製造、物流およびエネルギー・プロジェクトなど一定の事業の運営において重要な要素です。土地を運営会社自らが所有するのか、または運営会社が他者から賃借するのかにかかわらず、施設/プロジェクトの建設スケジュールと整合するよう、当該所有または賃借が適時に確保されていることが重要です。土地に関する法務デューディリジェンスは、取得契約または賃貸借契約を締結する前に完了していなければなりません。
また、一部のプロジェクトでは、プロジェクトが建設される地方自治体の同意が必要となります。この同意を確保するための具体的手順や想定される所要期間は、プロジェクト全体のタイムラインに織り込まなければなりません。
株式または資産による参入
外国投資家は、別個の事業体を設立することなく、既存のフィリピン会社の株式を取得することで市場に参入することができます。外国投資家は株主として、対象会社の債務について保有持分の範囲でのみ責任を負います。
対象会社の契約および政府登録/許認可に含まれる制限に従うことを前提として、株式を取得することで、外国投資家は対象会社を、対象会社の政府登録/許認可、契約、従業員、資産、負債と併せて取得することができます。
別の方法として、外国投資家は、フィリピンにおける既存会社の資産の全部または一部を取得することもできます。そのような資産取得においては、外国投資家は、資産を取得するフィリピンの事業体を設立する必要があります。そのうえで、取得主体と対象会社は、必要となる第三者の同意を前提として、どの資産、契約、負債を取得するかについて合意します。
政府登録/許認可は一般に譲渡不可であるため、取得主体は、自身の政府登録/許認可を申請する必要があります。取得すべき具体的な第三者同意および政府登録/許認可を特定し、所要期間も明確にしておくべきです。
これらの論点は、資産取得契約におけるクロージング前、クロージング時、クロージング後の当事者の義務を定めるにあたって、織り込まなければなりません。
また、株式取得に係る税務は資産取得に係る税務と異なります。資産取得における税務は、取得する資産(例:設備、在庫、不動産、契約、知的財産、のれん)によって異なります。外国投資家は、最も税務上効率的な取得方法について助言を受けるべきです。
競争法届出とデューディリジェンス
外国投資家は、取得がフィリピン競争法に基づく企業結合届出義務の対象となるかについても、法的助言を受けるべきです。
「当事者規模」および「取引規模」などの届出基準を満たす取得は、フィリピン競争委員会に対して速やかに届出を行わなければなりません。
当事者規模とは、取引当事者のフィリピンにおける資産の合計額、およびフィリピンにおける、フィリピン向けの、またはフィリピンからの売上収益の合計額を指します。取引規模とは、取得される資産の価値および/またはそれらにより生み出される総収益を指し、また取引類型によっては、取得対象事業体の価値および同事業体が支配する事業体の価値を指します。
したがって、当該取得が外国投資家にとって初めてのフィリピン投資であっても、外国投資家の最終親会社および関連会社、ならびに対象会社の最終親会社および関連会社の状況により、届出義務が生じる可能性があります。
さらに、取得に先立ち、財務、税務、業務、法務のデューディリジェンスを実施すべきです。
フィリピンでデューディリジェンスを行う際、特に小規模またはファミリー企業では、記録が不完全または不正確であること、また対象会社がデューディリジェンスのプロセスに不慣れであることが課題となります。そのため、法務デューディリジェンスの目的を対象会社に説明することが重要です。
最後に、外国投資家は、本ガイドが一般的な内容であり、全てを網羅しているわけではないことに留意すべきです。常に専門的な法的助言を求めることが重要です。
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