各国の税法の比較:中国

    By Wang ZhaohuiとSteve Chen、Jincheng Tongda & Neal
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    2022年上半期の中国の経済成長率は前年同期比2.5%でした。パンデミックの防止・抑制のために、一部の地域で取られた封鎖措置が、第2四半期の経済活動に多大な影響を及ぼしました。しかし、第3四半期以降は、パンデミックが効果的に抑制されるとともに、マクロ経済を支える政策の効果が徐々に表れ、景気の動向は改善しています。

    過去10カ月を振り返ると、中国の租税政策において重視されている3つの主要な方針が明らかになります。売上税の点では、当局はパンデミックとエネルギー危機のために深刻な影響を受けた、製造業界と中小零細企業(MSME)向けの減税や還付金を拡充しました。これに伴い、増値税(VAT)からの歳入が急減し、輸出戻し税の還付が増加しています。

    直接税に関しては、当局は富裕層に対する課税と管理を強化し、所得税による歳入が前年比で大幅に増加しました。また、地方政府の税優遇政策が明確化され、対象が拡大されました。

    これを受け、監督面では、税務当局は、インボイスに基づく管理から、データに基づく管理へと、変革を徐々に実現しつつあります。電子インボイスと税務ビッグデータの広範な活用を可能にする改革により、監督制度の正確性と確実性が向上するとみられます。

    減税・還付

    航空会社および輸送会社の全支店によるVATの前払いは、2022年には中止されていました。2022年2月から書類の日付時点までに前払いされたVATは、還付される予定です。また、同期間において、納税者は、公共輸送サービスの提供により取得した収入についてのVATを免除されました。

    Wang Zhaohui
    Wang Zhaohui
    シニアパートナー
    Jincheng Tongda & Neal(在北京)
    電話: +86 10 5706 8050
    Eメール: wangzhaohui@jtn.com

    さらに、サービスの提供者と消費者は、2022年12月まで追加的なVAT還付を受けることができます。製造業の中小零細企業のVAT支払いの猶予は、当初の3カ月間から、さらに6カ月間延長されました。2022年の4月1日から年末まで、小規模納税者もVATを免除されます。

    2022年4月1日以降、税務当局は、小規模・零細企業および製造業、ならびに科学研究技術サービス業、電力・熱・ガス・水の生産・供給業、ソフトウェア・ITサービス業、生態系保護・環境管理業、輸送・倉庫・郵送業などの関連業種を対象に、VAT控除留保額の還付のための支援策を強化しています。

    また、当局は、先進製造業を対象とする増加VAT控除留保額の還付の範囲も、全額および月額ベースで適格企業(非公開企業や個人所有企業)に拡大し、VAT控除留保額残高を一括還付しました。

    上述の売上税に関する減税・還付政策は、企業に直接キャッシュフローを供与することになるため、技術革新と設備更新の加速を促し、効果的に市場参加者の信頼を高め、企業の発展を促進するでしょう。

    しかし、売上税に関する減税・還付を申請する過程で、多数の企業が売上収益の隠匿、VAT過小申告、虚偽の納税申告書の提出を行っており、このような企業は税務当局の注意を引き、調査を受けることになり、追徴課税、罰金、延滞税、さらには刑事罰を課される可能性があることに留意する必要があります。

    監督の強化

    Steve Chen
    Steve Chen
    シニアパートナー
    Jincheng Tongda & Neal(在上海)
    電話:+86 10 5706 8050
    Eメール: chenyingchuan@jtnfa.com

    2019年、中国では個人所得税法の改正が実施され、初めて脱税防止条項が規定されました。同法は、税務当局に対し、独立取引の原則、被支配外国法人ルールおよび一般的な脱税防止ルールの面から、個人(特に富裕層)の脱税行為の規制に関する、明確な法的根拠を与えています。

    2021年12月21日、国務院は、中央政府の2020年の予算執行およびその他の歳入・歳出の監査において判明した誤りや、税還付政策、富裕層の個人税納入、脱税、個人株式移転の回避などの問題の修正について報告しました。

    この報告では、発生主義において、特定の条件に該当する自営業者とパートナーシップ企業への課税、および脱税と個人株式移転の回避に対する監督強化が提案されました。2022年1月1日以降、自営業者または株式投資を行うパートナーシップ企業は、発生主義に基づく課税の対象になっています。

    中国では、2021年の年末まで、自身にとって有利な租税政策や、みなし主義の還付・課税政策を実施している場所・地域を選択することは、節税策として広く用いられていました。また、異なる国と国の間に存在する税務情報の非対称性を活用して、いわゆる「クロスボーダー税務戦略」を実行することは珍しくありません。しかし、2022年には、単純で厳格な脱税防止措置が(個人所得税法に基づき)導入されるでしょう。

    政策の明確化と対象範囲の拡大

    「海南自由貿易港建設総体方案」(海南方案)が2020年6月に公表されたことを受け、2021年には各当局が多くの政策を次々に導入し、さらに、方案に含まれる企業所得税、個人所得税、関税、海外投資の利便性に関する優遇政策の、具体的な実施規定も公表されました。

    9月27日、関連当局は共同で、海南自由貿易港の奨励類産業ガイドラインに関する補足通知を公表しました。このガイドラインは、市場の期待の安定化、ならびに、自由貿易港の市場参加者による、優れた開発の促進だけではなく、ペーパーカンパニーによる違法な優遇課税政策悪用の防止、ひいては産業に関するシステミックな課税リスクの防止を目的としています。

    補足通知では、自由貿易港における個人所得税優遇政策に基づき、高度人材や不足人材を採用・雇用している企業や法人を、高度人材・不足人材リスト管理暫定措置として明確化しています。

    さらに、海南自由貿易地区における実質的運営の4つの要素、すなわち生産・運営、人事、会計、資産に関する判断基準を拡充しました。また、企業が生産・運営設備を保有していない場合や、登録住所が実際の事業上の住所と一致しない場合、事業上の住所に連絡できない場合など、実質的運営とみなされない状況についての規定も追加されました。

    補足通知によって、追加的な規制要件が明確化されたことにより、実質的運営を行っている市場参加者の管理体制が最適化され、自由貿易地区の優遇政策を受けられるようになるとともに、実質的運営と紛争解決の共同認証に関する実効的な制度が、確立されることになりました。これにより各当局が共同して行う監督やリスクの防止・抑制が強化され、適法な市場参加者の権利や利益の保護につながっています。

    今後の見通し

    2022年第4四半期と、間もなく来る2023年には、中国の租税政策に引き続き以下の点で進展があると考えられます。

    • データに基づく税務管理。税務当局が開発中の金税システム(インテリジェント課税)の第4期は、今年中に完了する予定です。将来的には、税務当局はビッグデータやクラウドコンピューティングなどの、近代的な情報技術の活用を本格化させ、インボイスに基づく税務管理から、データに基づく税務管理へと、監督の精緻化に向けての革新を実現させるでしょう。
    • 2つの炭素目標に関連する税務政策。中国は、史上最短で、2030年までに二酸化炭素排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言しました。これらの目標に関連して、環境保護、新エネルギー・クリーンエネルギーの利用、排出削減と排出量取引に関する租税政策が新たな優先事項になると考えられます。
    • 製造業と中小零細企業に対する減税・還付の継続中国の財政・租税政策の基調は、今後も一貫して、減税と費用引き下げでしょう。これには、製造業への支援の強化や、中小零細企業を対象とする減税、既に実施され、今後も継続するであろう大規模なVAT控除留保額の還付、企業のイノベーションに関連する研究開発費の追加控除の増額などが含まれます。
    • 税法違反の件数が多い地域における、税務調査の継続的強化。税務当局は事業者のための課税環境の最適化を進める一方で、無作為抽出検査の割合を高め、必要に応じて、脱税に関する問題が頻発する地域や業界、個人の公表を増やすために税務監督の精緻化を図り、引き続き税務調査を強化していくとみられます。
    JINCHENG TONGDA & NEAL

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