日本のグリーントランスフォーメーションにおける蓄電池の事業機会

    By 坂本正充・澤田健太郎/シティユーワ法律事務所
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    再生可能エネルギーを主力電源として推進する動きは、日本でグリーントランスフォーメーション(GX)を前進させる中核的な原動力の一つです。2025年2月に承認された「GX2040ビジョン」は、再生可能エネルギーを主力電源として確立することを、供給側のエネルギー分野における取り組みの中核に位置付けています。

    2025年の第7次エネルギー基本計画で示されているとおり、再生可能エネルギーを主力電源とすることは日本のエネルギー政策の重要な柱でもあり、2040年に向けて電源構成の最大シェア(約40〜50%)を占めることが見込まれています。

    2023年GX推進法により具体化された成長志向型カーボンプライシング構想は、2026年に本格的な実施段階に入ります。

    日本のGXが再エネの事業性を高める

    Masamichi Sakamoto
    坂本正充
    パートナー
    シティユーワ法律事務所
    東京
    Tel: +81 3 6212 5579
    Email: masamichi.sakamoto@city-yuwa.com

    一方、2026年に段階的に導入される法定の排出量取引制度と、2028年に開始される炭素賦課金は、化石燃料由来の発電コストを押し上げると見込まれ、再生可能エネルギーの事業性をさらに高めると予想されます。

    エネルギーを取り巻く地政学的リスク、すなわち、近年の中東情勢の緊張を背景とする原油価格の上昇や、2022年以降のロシア・ウクライナ危機に起因する天然ガス市場の混乱も、日本のエネルギー供給構造の脆弱性を改めて浮き彫りにしています。

    脱炭素化への移行に影響を与える逆風としては、洋上風力などの分野における開発コストの上昇やそれに伴うプロジェクトの遅延、さらには主要経済圏における政策上の優先順位の変化などがあります。

    しかし、日本のGXビジョンは依然として重要です。環境政策としてだけでなく、安全性、エネルギーの自給率、経済効率性、環境適合を優先する同国のエネルギー政策「S+3E」の柱の一つである、エネルギーの安定供給を確保する上でも重要だからです。

    蓄電池の役割

    蓄電池は、再生可能エネルギーの変動性に対処し、日本の電力系統の安定性を確保するための不可欠なインフラと位置づけられています。

    2022年、経済産業省(METI)は、日本の蓄電池産業の競争力強化を目的とする蓄電池産業戦略を公表しました。

    再生可能エネルギーの主力電源化に向けた移行を支えるために、蓄電池や揚水式水力発電のような柔軟なリソースを導入する重要性は、第7次エネルギー基本計画およびGX2040ビジョンでも示されています。

    太陽光発電などの再生可能エネルギー源の導入や拡大に伴い、出力制御の必要性が増大していることも、余剰電力を吸収する手段としての蓄電池の価値を一層高めています。

    また、2022年に導入された市場連動型のフィードインプレミアム(FIP)制度は、価格変動に応じた出力調整やタイムシフトを可能にする蓄電池の積極的な活用を促しています。

    日本における蓄電池の自由化

    2016年の日本の電力の小売全面自由化以降、外資系企業はすでに発電事業や小売電気事業への参入を果たしています。1949年外国為替及び外国貿易法に基づき、事前届出や事後報告が求められる場合はあるものの、こうした要件が外国企業の市場参入における大きな障壁となることはありません。

    Kentaro Sawata
    澤田健太郎
    アソシエイト
    シティユーワ法律事務所
    東京
    Tel: +81 3 6212 5700
    Email: kentaro.sawata@city-yuwa.com

    電力市場の自由化、カーボンニュートラル政策の進展、投資支援枠組みの整備を背景に、近年、蓄電池は投資対象として注目を集めています。蓄電池への投資の促進に向けた規制改革も、並行して進んでいます。

    2022年の電気事業法改正を受け、容量1万kW以上の系統用蓄電池を用いて放電を行う事業は、「発電事業」に位置づけられることになりました。

    その結果、発電設備に関するものと同一の系統連系ルール、特に一般送配電事業者は正当な理由なく系統連系の請求を拒んではならないというルールが、系統用蓄電池に関する電気設備にも適用されるようになりました。これにより、当該設備の系統連系へのアクセスが円滑になります。

    さらに、2023年に、FIP電源併設の蓄電池(関連法令上、発電設備の一部として扱われるもの[付帯設備])に関して関係政府審議会で検討が行われたことを踏まえ、一定の条件の下では、これらの蓄電池は併設の発電設備からだけでなく、系統からも充電することが可能になりました。

    これらの蓄電池が放電する際には、再生可能エネルギー源から充電された電力については、市場価格に上乗せしてFIPの支払い対象となりました。加えて、2025年4月以降に発電された電力については、非化石証書(非FIT)の発行を通じて、非化石価値としても認定されます。

    その結果、これらの蓄電池は、再生可能エネルギー源から発電された電力を充電して市場のピーク時間帯に売電できるだけでなく、電力市場の価格差を活用して、系統用蓄電池と同様に収益を生み出す市場裁定取引も行うことが可能となり、稼働率の改善が見込まれます。

    より広い観点から見ると、蓄電池事業の収益性は、エネルギー価値(卸電力市場)、調整力価値(需給調整市場)、容量価値(容量市場)といった複数の市場にまたがっています。

    しかし、従来のFIT型の発電事業とは異なり、蓄電池事業は、単一の長期固定収入に依拠することができず、市場価格の変動や運用戦略に起因する市場リスクに本質的にさらされます。

    そのため、蓄電池事業の成否は、市場参加戦略などの運用能力に左右されます。

    長期オークションが蓄電池の普及を後押し

    投資支援枠組みの整備に関しては、2023年に導入された長期脱炭素電源オークションが、脱炭素電源の新設およびリプレースを支援しています。これは特に、系統用蓄電池、原子力、水素・アンモニア、火力などの資本集約型技術を対象とし、容量市場における収益の予見可能性を向上させるものです。

    この支援のメカニズムは、小売電気事業者が拠出する容量拠出金を原資として発電事業者に容量支払いを行うことで、最長20年にわたる長期契約の仕組みによって、容量市場の枠組みを拡充するものです。

    これにより、卸電力市場や需給調整市場を含む他の市場からの収入との二重計上を防止するための条件を満たすことを前提に、電源に係る固定費相当額の収益回収が可能となります。

    2024年のオークション結果によると、蓄電池は全38件の落札案件のうち27件を占め、付与された総容量の約22%に相当しました。これは2023年と比べて約25%の増加を示し、蓄電池事業の拡大を示しています。

    募集上限量の縮小や要件の拡充により、蓄電池に関する参入障壁は高まっているように見えるかもしれません。例えば、蓄電池について最低6時間の放電継続時間要件が設けられていることに加え、外国製リチウムイオンセルに対する制限や、サイバーセキュリティおよびサプライチェーンの観点から導入されたJC-STAR認証枠組みがあります。

    執筆時点では2025年のオークション結果はまだ公表されていませんが、オークションは事業性を支える補完的な制度として引き続き重要な役割を果たしています。

    外国企業は単独ではオークション入札に参加できませんが、日本で特別目的会社(SPC)を設立するコンソーシアムを通じて参加することは可能です。

    オークションと並んで、再生可能エネルギーの導入拡大、および系統用蓄電池やその他のエネルギー貯蔵システムの支援を目的とする経済産業省の補助金制度も、重要な役割を果たしています。

    2025年12月、同省はこの補助金制度の2025年度の結果を発表しました。この制度の下で、約363億円(2億2,840万米ドル)という過去最高額の交付が決定され、過去最多の37件のプロジェクトが採択されました。これは系統用蓄電池への期待の高まりを示しています。

    さらに、蓄電池を支援する他の補助金制度も、環境省や地方自治体で設けられています。

    蓄電池プロジェクトのプロジェクトファイナンスは、収益の不確実性やその他の課題により制約を受けてきましたが、さまざまな事業モデルにおいて取引件数の増加が見られ、市場が進化していることを示しています。

    EU電池規則が日本を再編する

    欧州では、EU電池規則(2023/1542)の下で、蓄電池のライフサイクル全体を対象とする包括的な規制枠組みが段階的に導入されています。

    同規則は、カーボンフットプリント、再生材料含有率、デューデリジェンスに関する要件を定めており、EU市場に電池または電池を含む製品を供給する日本企業に影響を与えます。

    これを受けて、日本でもサステナビリティの確保とサプライチェーン課題への対応の重要性が高まっており、「バッテリーパスポート」の日本版の開発などの取り組みが進められています。

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