近年の政治的混乱にもかかわらず、私たちの実務経験から、アジア諸国の多くの企業がロシア市場へ参入、または参入を計画していることが明らかになっています。こうした企業は不要な紛争やコストを回避するために、知的財産権をいかに保護・行使すべきかを把握することが重要です。それでは、アジア諸国の出願人はロシアの商標法とその実務について何を知っておくべきでしょうか?
Q:なぜロシア特許商標庁(PTO)に、使用前に商標を出願することが重要なのでしょうか?
商標法によれば、商標とは「法人または自然人の商品を識別するために用いられる表示」と定義されています。したがって、保護可能なあらゆる語句、デザイン、スローガン、音、記号などが、特定の事業者の商品またはサービスを識別する商標となり得ます。商標として機能し得る表示の種類は限定的ではなく、また、非伝統的商標の登録も認められています。
ロシアは先願主義を採用しているため、使用を開始する前に商標を出願することが重要です。商標法は原則として、先使用権を認めていません(原則として、商標の独占的使用権は国に登録することで初めて発生します)。
Q:アジアの企業が自国の文字で商標を出願することはできますか?

パートナー
Gorodissky & Partners
モスクワ
ロシアの消費者の大多数は中国語、日本語、韓国語などのアジア言語を理解しません。そのため、これらの言語の文字からなる表示はPTOによって図形商標と見なされ、それ自体が識別力を欠いていると判断されることはありません。また、こうした表示の出願に特別な要件はありません。
とはいえ、ある表示が商標として登録されるためには一定の要件を満たす必要があります。特に、虚偽や誤解を招く要素を含まないこと、出願した商品リストに関して記述的ではないことが求められます。
したがって、中国語、日本語、韓国語の文字からなる表示は一般的に図形商標と扱われますが、出願時に意味内容が提供されていない場合は、審査官はその文字の意味内容を照会することがあり、その上で登録可能性について通常の法的基準を適用する可能性があります。
文字商標は口頭での使用が一般的で、消費者が記憶しやすく、発音しやすいことから、アジアの企業はラテン文字版および/またはキリル文字版の出願も併せて検討することが合理的です。これにより消費者がそのブランドを容易に認識できるようになります。また、このように登録することで、法的保護の範囲を強化・拡大し、混同を招くような類似したラテン文字またはキリル文字商標を、第三者が出願する可能性を防止することにもなります。
アジア文字の表示について、ラテン文字版とキリル文字版を登録することの重要性を示す最新の事例の一つが「DOSIRAK事件」です。
ある第三者がキリル文字で「КАРИСОД(KARISOD)」という文字要素を含む結合商標を出願しましたが、この表示は韓国企業のブランド「DOSIRAK」を逆さに並べたアナグラムであり、ラテン文字およびキリル文字で登録されているDOSIRAK商標と紛らわしい類似性があるとして、登録が拒絶されました。
また、商標のラテン文字版とキリル文字版のいずれを選択すべきかを検討する際には、公共の利益や道徳的原則に沿っているかを確認することも重要です。アジア言語の特定の言葉は、発音するとロシア語の下品な表現に似て聞こえる場合があるため、特に重要です。
そのような類似があると、その標章は公共の利益や道徳的基準に反していると見なされ、商標登録が全面的に拒絶される可能性があります。このような問題を防ぐため、商標の出願前にロシアの販売代理店や商標弁護士へ相談することを強く推奨します。
Q:出願後は、どのような手続きが行われますか?
ロシアのPTOは現行の行政規則に基づいて、出願日から約18カ月以内に商標出願を審査することになっています。しかし、PTOは審査期間の短縮に積極的に取り組んでおり、現在では平均6~8カ月で審査が行われています。追加料金を支払うことで、2カ月以内の迅速審査手続きが利用可能です。
Q:同意書は認められますか?
審査官が先行商標を障害として引用した場合、その権利者からの同意書があれば、審査の過程で考慮されることがあります。ただし、同意書を提出したからといって、審査官が無条件にそれを受け入れる義務はありません。同意書の受理は両商標間に混同の恐れがないかどうかに左右されるため、商標同士の類似性が高い場合には、同意書が提出されていても考慮されないことがあります。
Q:審査官による拒絶は最終的なものですか?
審査官の決定が不利なものであった場合、4カ月以内に特許紛争部に対して不服申立てが可能です。この期限を過ぎても、6カ月以内であれば、罰金を支払うことで申立てを再開させることができます。特許紛争部が出願人の主張を認めない場合は、審査官の決定が維持され、その後3カ月以内に知的財産裁判所にさらに上訴することができます。
Q:商標は法律に従ってどのように使用すべきですか?
使用要件の下では、商標は登録された通りに、または本質や識別力を損なわない程度の、わずかに変更した形で使用しなければなりません。したがって、不使用取消審判においては、発行された登録証に基づいて、あるいは本質的ではない範囲の変更で商標を使用していることを証明する必要があります。商標が登録した形態と異なる形で使用をされている場合、その変更は本質的か否かが紛争の焦点となります。したがって、実際に使用する形態で、または将来使用するだろう形態で出願することが推奨されます。
なお、商標の使用は義務付けられており、使用しない場合、利害関係を有する第三者の請求によって商標が早期に抹消される可能性があることにも注意が必要です。
商標登録日から3年が経過すると、不使用を理由とする取消審判の対象となります。何らかの理由で3年以上、商標の使用がなかった場合は、不使用または使用不足によるリスクの可能性の観点から、商標権を維持するために再出願を検討することが推奨されます。
Q:企業が第三者による類似商標の登録を防ぐには、どうすればいいでしょうか?
ロシアには係属中の出願に対する異議申立て手続きはありません。しかし、係属中の出願に対して決定が下される前に、意見書を提出して、類似の商品またはサービスに対して登録されている類似商標に関する第三者の先行権利の存在を、審査官に喚起することが可能です。
意見書は審査段階で、対立する商標の登録を阻止するために極めて有効な手段です。類似商標を特定し、適時に意見書を提出するために、事前にデータベースや商標登録簿を監視する体制を整えておくことが重要です。
Q:既に類似商標が登録されている場合、どうすればよいですか?
発見された商標がすでに登録されている場合は、PTOの特許紛争部に対して、先行権利または誤認を生じさせるその他の理由に基づいて、正式な無効審判請求を行うことができます。先行権利に基づく無効審判請求は公告日から5年以内(期限の延長は不可)に行う必要があり、絶対的理由に基づく無効審判請求は、商標の有効期間中であればいつでも行うことが可能です。
結論として、すべての外国出願人は、PTOでは登録商標弁護士による代理を受けなければならない点に注意が必要です。したがって、商標権者は上記の手続きを行うに当たって、商標の利用可能性や登録可能性、適切な使用方法、新規または追加出願の必要性について助言を提供できる、有資格の商標弁護士から専門的な支援を受けるべきです。商標弁護士はまた、第三者による類似商標の出願の特定をするために、PTOのデータベースを適時監視する業務も行います。
GORODISSKY & PARTNERSB. Spasskaya Str., 25, Bldg 3
Moscow 129090, Russia
Tel: +7 495 937 6116
Email: pat@gorodissky.com
www.gorodissky.com





















