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フィリピンは、貧困層の医療利用機会の拡充を図るとともに、医療分野での事業展開や投資を行っています。

世界保健機関(WHO)は、国民全体の良好な健康成果を実現するためには、ユニバーサル・ヘルスケア・カバレッジ(国民皆保険制度)が不可欠であると考えています。WHOは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを、すべての人が、必要な時に必要な場所で、あらゆる種類の質の高い医療サービスを、支払可能な費用で受けられる状態であると定義しています。

WHOは、公平で持続的な健康成果を生み出すことを目的とした保健医療制度に関する課題が増大していることを踏まえ、フィリピンをはじめとする加盟国に対して、多部門にわたるアプロ―チで政府のリーダーシップを発揮するとともに、十分な資金を投入し、ユニバーサル・ヘルスケア・カバレッジを促進する国の政策や計画を実施するよう呼びかけています。

フィリピン政府は、WHOの方針や、国民の健康に対する権利を保護・推進するための国の政策に沿って、共和国法第11223号〔ユニバーサル・ヘルスケア法(UHC法)〕に署名しました。フィリピンのUHC法は、国民全員が質の高い医療サービスを利用可能でなければならないという政府の認識に基づいて制定されました。

同法の目的の一つは、医療費支払制度や財源調達の構造を改革し、さまざまな機関の役割を明確にすることによって、保険医療の財政基盤の状況を改善することです。

特別医療財源

Charmaine Rose Haw-Lim, Gulapa Law
Charmaine Rose Haw-Lim
マネージングパートナー
Gulapa Law(メトロ・マニラ)
電話: +632 8658 7835, 8658 7865
Eメール: charms.haw@gulapalaw.com

フィリピンのUHC法の焦点の一つは、地域医療制度と財源調達の改革です。地方分権化や地域レベルでの管理格差が、同国の医療サービスが分断化されている一因であると、長年にわたって指摘されてきました。

同国のUHC法が制定される以前は、地域医療を改善するにあたっての課題として、各地方自治体の財源が、医療以外の支出に配分・使用される傾向が高いことがありました。

地方自治体(LGU)の施設の管理・自治はすべて各自治体に任されていることを考えれば、その一般財源は地域医療に特定して充当されるものではないため、財源をどの程度医療に充てるかは各自治体によってさまざまでした。2019年の調査によって、各地方自治体の医療費支出は依然として低いことが分かりました。従って、その格差の原因は、地域医療に特定して配分される地方自治体の安定財源が不足していることにありました。

この問題に対処するため、同国のUHC法は、特別医療財源(SHF)の創設を義務付け、医療財源のより戦略的かつ効率的な留保と管理を確実にすること、管理、技術、財政上の統合を達成・維持するために適切なインセンティブやメカニズムを提供すること、医療財源の使用の透明性を確保し適切な説明責任を果たすことを目指しています。

SHFの詳細

フィリピンのUHC法第20条は、州単位(州、町、構成市)または市単位(高度都市化市と独立市)の保健医療制度に、SHFによる医療サービスを目的とした財源の留保と管理を求めています。

また同条には、SHFは、住民ベースおよび個人ベースの医療サービス、保健医療制度の運営費、資本投資、増員した医療従事者の報酬、すべての医療従事者に対するインセンティブの財源として使用されると規定されています。

Dan Kevin Mandocdoc, Gulapa Law
Dan Kevin Mandocdoc
パートナー
Gulapa Law(メトロ・マニラ)
電話: +632 8658 7835, 8658 7865
Eメール: dake.mandocdoc@gulapalaw.com

保健省、予算管理省、財務省、内務自治省、フィリピン健康保険公社(フィルヘルス)による合同通達第2021-0001号(タイトル「SHFの配分、使用、監視、および説明責任に関するガイドライン」)に基づき、SHFは別種の特別財源として扱われるものとされています。共和国法第7160号(地方自治法)第309条に従って、各州市町の公庫に留保されている財源は、その本来の目的のために自動的に充当されるものとみなされます。

同国UHC法の施行規則(IRR)には、関連する州全体または市全体の保健医療制度の州保健委員会または市保健委員会が、関連するSHFの管理の全責任を負うことが規定されています。

本合同通達に規定されているように、保健委員会が負う主な責任は、それぞれの管轄区域内においてSHFが最適に使用され、住民にとって望ましい医療成果が得られるようにすることです。

フィリピンのUHC法第21条には、フィルヘルスの支払いから生じる収入のすべてはSHFに充当され、保健医療制度の改善に限定してLGUによって配分されると規定されています。同法IRRの第21.1条には、このことを明確に示すために、これらの収入は、LGUが所有・管理する保健局、施設、およびサービスに対してフィルヘルスが支払うことで生じると明記されています。

同法のIRR、および合同通達第2021-0001号では、一般歳出法に記載されている中央政府機関からの助成金や補助金、市民社会団体や国際保健パートナーからの資金援助、寄付金、支援、ならびに協力事業のためのメカニズムを通じて、医療を対象としたLGU予算を含むその他の財源も、潜在的な財源であると認めています。

本合同通達では、これらの財源から資金の流れを促進できるメカニズムとして、保健省からの財政的な助成金や補助金に関するパートナーシップ、フィルヘルスからの収入に関する契約上の合意、市民社会団体や国際保健パートナーからの助成金や支援に関する合意覚書などについても言及されています。

SHF制度では、医療目的のために移転された財源の使用目的を限定しなければならず、他の目的や支出に再配分することは禁じられています。上述のとおり、合同通達では、SHFは自動的に医療支出に充当されるものとみなされています。

さらに、SHFは、関連する州または市の保健委員会が決定し、承認した以下の医療関連支出項目に関するLGUの財源強化にのみ使用されます。対象となる医療関連支出は、住民ベースの医療サービス(健康増進プログラム、疾病監視など)および個人ベースの医療サービス(外来診療および入院治療、医薬品など)、資本投資(例:インフラおよび設備)、保健医療制度運営費(救急車のガソリン代など)、保健省が決定した基準に基づき必要とされる人数の医療従事者をLGUが雇用するまでの間に、増員された医療従事者の報酬、関連する保健委員会が決定した配分メカニズムに基づくすべての医療従事者へのインセンティブなどです。

機会

Ann Danzel Albana, Gulapa Law
Ann Danzel Albana
シニアアソシエイト
Gulapa Law(メトロ・マニラ)
電話: +632 8658 7835, 8658 7865
Eメール: ada.albana@gulapalaw.com

上記のとおり、SHF制度では、保健医療の財源を他の支出に再配分することや、別の用途に使用することは禁止されています。従って、LGUはさまざまな医療プロジェクトに限定した財源を確保することができます。

今後、民間事業者が医療関連の契約をLGUと締結する機会が増え、民間企業からの関心も高まることが予想されます。例えば、SHFに請求される正当な費用の一つが保健医療への資本投資であることを考えれば、民間事業者は今後、建設・運営・譲渡法に基づいた医療インフラプロジェクトに関するLGUへの民間事業者提案を、より自信をもってLGUに提出することができるようになるでしょう。

さらに、政府提案型の官民連携医療プロジェクトに着手する費用や、さまざまな医療機器の調達費用をSHFに対して請求することができることを踏まえれば、SHF制度は、各LGUが、こうした取り組みを促すきっかけとなるでしょう。

SHF制度の設立以前は、LGUは医療関連支出を最小限に抑え、限られた財源の大部分を道路や橋などの他のレガシーインフラ関連のプロジェクトに柔軟に割り当てていました。SHFに欠かせない要素である財源は上記の目的だけに使用することができるため、SHF制度の下では、今後、このようなことは起こらないでしょう。

結論

SHFをユニバーサル・ヘルスケアに充当することは、この国の地域医療制度を改革する大きな飛躍となります。SHFの創設により、フィリピン政府は、一歩前進し、支出ニーズに対してより戦略的に財源を配分することが可能になりました。

これによって、これまでの医療セクターの管理能力不足や、国と地方の政府間の調整不足を解消する、持続可能な解決策を達成できる希望が生まれます。

言うまでもなく、フィリピンのUHC法のおかげで、地域医療の財源調達のための制度、全国民が自動的に国民健康保険制度に加入することで、誰もがプライマリケアサービスを利用できるようにする仕組み、また患者に過度な経済的負担をかけずに、地域医療サービスを効率的に提供するための医療機関の財源調達や人員配置の体制、さらに、SHFの管理や、国民に質の高い医療を提供することに責任を負う制度などを改善する道が開かれました。

各段階の達成を効果的に実施することができれば、全国民が必要とされる適切な医療にアクセスできると同時に、財政難という一般的な問題も解決することができるでしょう。

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