フィリピンにおけるAI支援発明の発明者性、特許性、開示に関するルールが、新たなガイドラインによって明確になりました。

フィリピンでのAI発明の特許取得

人工知能(AI)は、フィリピンのみならず世界中で主要産業に変革をもたらしています。新たな発明を生み出すプロセスにAIを取り入れることが、この数年でますます一般的になっています。

Ramon Emil Olea
Ramon Emil Olea
特許スペシャリスト
Federis & Associates
メトロ・マニラ
Email: rolea@federislaw.com.ph

例えば、銀行・金融分野では、AIを用いたアプリケーションが本人確認を行い、偽アカウントを防止しています。医療分野では、AIを遺伝子データの分析に適用して創薬を加速させることができます。農業分野では、AI支援型の灌漑システムにより水の無駄を減らし、作物の収量を最大化します。

より多くの産業がAIに依存するようになり、発明におけるAI利用が一層普及するにつれて、世界各国の特許庁はAI支援発明の特許取得について具体的なガイドラインを整備する必要性を認識しています。

フィリピンでは、フィリピン知的財産庁(IPOPHL)が2025年7月、AI支援発明の特許性の基準を特許出願人と審査官双方が理解できるようにするため、「人工知能に関連する発明、実用新案、意匠の出願に関する審査ガイドライン」を公表しました。

それでは、AI支援発明とは何でしょうか。上記のAIガイドラインによれば、AI支援発明とは、発明の過程においてAIをツールとして用いてなされた発明をいいます。ここでいうAIとは、コンピュータや機械が人間の学習、理解、問題解決、意思決定、創造性、自律性をシミュレートできるようにする技術を意味します。

AI発明の類型

AIガイドラインは、AI関連発明またはAI支援発明を、その主題に基づいて次の2種類に大別しています。

    1. AIコア技術
    2. AI応用技術

AIコア技術とは、AI技術そのものの進歩や改善に寄与する発明をいいます。例としては、新たなニューラルネットワークアーキテクチャ、新規の学習アルゴリズムや最適化手法、強化学習の改良などが挙げられます。

この種類の発明における発明概念は、AIモデル、学習アルゴリズム、学習方法論の創出や改良にあります。

これに対し、AI応用技術とは、既存のAI手法を用いて技術的課題に対応する発明をいいます。この種類の発明における発明概念は、特定分野(例:医療、輸送、金融)において技術的効果を生み出すために、AIをどのように適用し統合するかにあります。

フィリピンにおける特許適格性

AIガイドラインは、特許性の一般的な要件である新規性、進歩性、産業上の利用可能性を満たすことを条件に、AI関連発明がフィリピンにおいて特許を受けることができるとしています。

ただし、新規性、進歩性、産業上の利用可能性の審査の前に、AI関連発明は、まず特許適格性のある主題に該当しなければなりません。

フィリピンでは現在、AI関連発明またはAI支援発明は、コンピュータ実装発明の下位集合または下位区分として扱われています。したがって、特許適格性のある主題と認められるためには、当該発明が公知技術に対する「技術的貢献」または「技術的効果」を示さなければなりません。

具体的には、AI関連発明が技術的問題に対する技術的解決策を提供しており、単なるコンピュータプログラムの実行にとどまらない外部の技術的効果によってそれが示される必要がある、ということです。

例えば、機械やその他の物理的装置を制御して作業を実行させるよう設計されたAIシステム、または技術的プロセスを改善するために当該装置に組み込まれたAIアルゴリズムは、特許可能と認められることがあります。

AIガイドラインは、実用的な応用または有形の技術的成果を伴わず、単に抽象的なアイデアを実装したり数学的計算を実行したりするだけのものは、たとえコンピュータに実装されていても、特許不可と判断される可能性が高いことを示しています。むしろ、発明は、既存の技術的問題を解決する技術的貢献を示さなければなりません。

AIガイドラインはまた、AI発明の特許適格性を判定するためのテストとして、次の5段階のクレーム分析も提示しています。

ステップ1: クレームはコンピュータ実装発明およびAIを含んでいるか

    • いいえ → 他の主題に適用される基準により特許適格性を判断する
    • はい → ステップ2に進む

ステップ2: クレームは公序良俗に反する事項を対象としているか

    • いいえ → ステップ3に進む
    • はい → 特許適格性のない主題である

ステップ3: クレームは、知的財産法にいう法定の発明分類、すなわち物(product)または方法(process)を対象としているか

    • いいえ → 特許適格性のない主題である
    • はい → ステップ4に進む

ステップ4: クレームは非技術的事項を含んでいるか

    • いいえ → 特許適格性のある主題である。すなわち、クレームは技術的性質を有する
    • はい → ステップ5に進む

ステップ5: すべての要素を考慮した結果、クレームは技術的性質を有するか

    • いいえ → 特許適格性のない主題である
    • はい → 当該発明の新規性、進歩性、産業上の利用可能性の評価に進む

このように、上記5つの質問への回答によって、AI発明に特許適格性があると判断されるか否かが決定されます。

AI特許における開示要件と実施可能要件

特許適格性とは別に、AI発明については、開示の十分性や実施可能要件も満たされなければなりません。

一般的な特許出願の原則として、出願は、当該技術分野の知識を有する者が発明を実施できる程度に十分明確かつ完全な形で発明を開示しなければなりません。

AI発明に関して、AIガイドラインは、出願における詳細な開示の必要性を特に重視しています。その内容には、学習用データセット、学習モデルまたはアルゴリズム、技術的効果、実施例や裏付けとなる証拠を含めるべきであるとしています。

このような詳細な開示により、当該技術分野の知識を有する者がAI発明を十分に理解し、実施できるようになります。

AI特許の明確かつ正確なクレーム

AIガイドラインは、AIシステムや方法が技術的に複雑で、潜在的に抽象的な性質があることから、AI関連発明のクレームはとりわけ明確でなければならないことも求めています。したがって、クレーム内のすべての言葉は、技術的に正確で、範囲が明確で、機能的に定義され、明細書の記載と整合し、曖昧ではないものであるべきです。

出願人の助けとなり、明確性や法的確実性を高めるために、AIガイドラインは、明確に定義された技術的特徴を備えた方法クレームまたはシステムクレームとして、クレームを作成することを提案しています。

AIは発明者として記載できない

AIは、他の技術的進歩と同様に、発明者が発明を創作し、特許出願書類を作成することを支援するためのツールとして機能し得るものです。その結果、AI支援発明や、AIが作成した発明が生じる可能性があります。

しかし、AIガイドラインは、出願人および/または発明者は知的財産権を行使するための人格を有していなければならないため、AIは民事上の人格および法的能力を欠き、フィリピン法の下では出願人および/または発明者として指定できないことを明記しています。

あくまで、AIに発明を生成させるためにプロンプトや指示を入力してAIを使用した個人が適切な発明者とみなされます。これは共同発明の場合も同様であり、すべての発明者は人間でなければならず、AIを共同発明者として指定することはできません。

AIによる意匠は保護されるが、人間の創作者が必要

AIガイドラインは、AI支援およびAI生成の意匠出願の登録可能性も扱っています。

この点に関して、AI支援意匠とは、人間が重要な入力や指示を行い、AIツールの支援を受けて作成された意匠を指し、AI生成意匠とは、人間の関与が最小限または全くない状態で、完全にまたは主にAIシステムによって作成された意匠を指します。

AIガイドラインは、AIを用いてAI支援意匠やAI生成意匠を作成することは知的財産法により禁止されておらず、したがって意匠保護の対象となることを明示しています。しかし、特許における発明者性のルールと同様に、AIは権利を行使するための法的人格を欠くため、意匠出願において創作者および/または出願人として認められません。

AIガイドラインは、発明や意匠の生成にAIを用いること自体は知的財産法により禁止されていない一方で、AIの広範な使用は、著作権、不正競争、侵害などに関する他の関連法の下で独自の法的な帰結をもたらす可能性があるため、倫理的および法的な影響を考慮することが重要であると広く注意喚起しています。

結論として、AI関連の発明および意匠について出願を行う発明者、創作者、組織は、AI発明の厳格な技術要件を満たし、知的財産保護を取得できる可能性を高めるために、出願を知的財産庁のAIガイドラインに整合させなければなりません。

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