インドネシアにおける外国投資家のための紛争管理

    By Rando Purba・Dimas Satya Nugraha・逢見昂平/MAPS/大江橋法律事務所
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    インドネシアは、東南アジアにおける最大級の投資先の一つであり続けています。外国投資家は、製造業、インフラ、鉱業、エネルギー、デジタルサービス、消費財などの分野に引き続き投資しています。投資活動が拡大するにつれ、紛争が生じることは避けられません。

    外国投資家にとって、効果的な紛争管理には、請求の法的根拠を理解することでは不十分です。当事者は、フォーラム(裁判地・仲裁地)の選択、執行戦略、資産回収、紛争の結果に影響し得る実務上のリスクについても考慮するべきです

    本稿では、インドネシアで事業を行う外国投資家が留意するべき重要なポイントをいくつか取り上げます。

    紛争の状況

    Rando Purba
    Rando Purba
    シニアパートナー
    MAPS
    ジャカルタ
    Tel: +62 21 5223252
    Email: rando.purba@mapslaw.co.id

    インドネシアにおける商事紛争は、一般的に次のことが原因で生じます。

      1. 株主間契約およびジョイントベンチャー(合弁)契約
      2. 建設およびインフラプロジェクト
      3. 供給契約および販売・流通契約
      4. 鉱業および天然資源プロジェクト
      5. ファイナンス取引
      6. 倒産および債務再編に関する事項

    多くの紛争は、インドネシア当事者と外国当事者の双方が関与します。そのため、準拠法を外国法とする条項、海外資産、外国人証人、複数の法域における並行手続といったクロスボーダーの要素を含むことが一般的です。

    正式手続に要する時間と費用を踏まえ、当事者は紛争予防および早期解決の戦略に、ますます注力するようになっています

    紛争解決手段

    当事者は取引きの商業条件に注力する一方で、紛争解決条項への注意が限定的になりがちです。しかし、訴訟と仲裁のいずれを選択するかは、将来の紛争の管理および結論に大きな影響を与える可能性があります

    訴訟インドネシアの裁判所は、当事者が仲裁に合意していない限り、付託された紛争について管轄権を有します。

    裁判手続きは、迅速な裁判所の介入が必要な場合、仲裁合意に拘束されない当事者が関与する場合、または主としてインドネシア国内で執行を行うことが想定される場合に適していることがあります。

    ただし、外国投資家は、裁判手続きでは複数回の上訴審が想定されるため、紛争全体の期間が長期化し得る点に留意すべきです。

    仲裁仲裁は、インドネシアに関連する多くのクロスボーダー取引において、依然として優先される選択肢です。主な利点は、以下のとおりです。

      1. 秘密保持
      2. 手続面における柔軟性の高さ
      3. 関連分野の専門性を有する仲裁人を選任できること
      4. 多くの法域において越境執行が比較的容易であること

    インドネシアはニューヨーク条約の締約国です。そのため、外国仲裁判断は、法令上の要件および適用され得る公序上の考慮に従うことを条件として、一般的にインドネシアで承認・執行されます。

    国際取引では、仲裁条項により、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)、国際商業会議所(ICC)、アジア太平洋国際仲裁機関(APIAC)、その他の公認仲裁機関に紛争を付託することが一般的です。

    執行は早期に検討する

    Dimas-Satya-Nugraha
    Dimas Satya Nugraha
    アソシエイト
    MAPS
    ジャカルタ
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    Email: contactus@mapslaw.co.id

    紛争に勝訴しても、必ずしも回収が保証されるわけではありません。手続きを開始する前に、当事者は相手方に十分な資産があるか、資産がどこに所在するか、担保権が設定されているか、競合する債権者が存在するか、倒産リスクがあるかを評価すべきです。

    実務上、執行計画は、請求提起よりもはるか前から開始すべきです。多くの成功した請求者が困難に直面するのは、紛争に敗れるからではなく、判決または仲裁判断を得た後に回収が困難になるからです。

    相手方の資産状況について早期に評価することは、執行可能性を大きく高める可能性があります

    外国裁判所の判決

    外国投資家は、外国裁判所判決が、一般にインドネシアで直接執行できないことを知って驚くことが少なくありません。原則として、外国判決をインドネシアの裁判所に登録して、そのまま強制執行することはできません。

    その代わりに、当事者はインドネシアで新たに訴訟を提起する必要がある場合があります。状況に応じて、外国判決はその手続きにおける証拠として用いられる場合があります。

    これは、インドネシアの相手方が関与するクロスボーダー取引において、仲裁がしばしば選択される理由の一つです。

    資産回収

    Kohei Omi
    逢見昂平
    アソシエイト
    大江橋法律事務所
    大阪

    資産回収は、紛争戦略の重要な要素となることが少なくありません。手続きを開始する前に、当事者は相手方が保有する主要資産を特定し、それらの資産に対して現実的に強制執行が可能かを評価すべきです。対応が遅れると、資産が移転されたり、回収がより困難になるおそれがあります。

    インドネシアでは、紛争係属中の資産を保全するための保全差押えが認められています。仲裁廷も中間的措置または保全措置を命じることができますが、その実施には裁判所の支援が必要となる場合があります。高額紛争では、早期の段階から資産保全措置を検討すべきです。

    有利な判決または仲裁判断が出た後であっても、執行には実務上の課題が生じ得ます。インドネシアでは、勝訴当事者が執行対象となり得る資産を特定することが一般に求められており、企業の資産記録を提供する中央の公的データベースは存在しません。そのため、資産デューデリジェンスは紛争計画において重要であり、とりわけ強制執行は原則として債務者が法的に所有する資産に対してのみ行い得る点に留意が必要です。

    最終的に、回収戦略の成否は、資産が特定され、保全され、かつ執行可能な状態で確保されていることにかかっています。

    倒産・リストラクチャリングに伴うリスク

    インドネシアの倒産制度は、商事紛争において引き続き重要な役割を果たしています。債権者は、回収戦略の一環として、破産手続または「Penundaan Kewajiban Pembayaran Utang(PKPU)」と呼ばれる民事再生手続きに相当する再建型の倒産処理手続きを利用することができます。重要な点として、これらの手続きは、裁判管轄条項または仲裁合意が存在する場合であっても、なお利用され場合があります

    場合によっては、倒産手続きがより有効な回収手段となることもあります。特に、債務者が財務的には存続可能であるにもかかわらず、支払義務の履行に応じない場合です。倒産手続の可能性は商業上の圧力となり、相手方の関与を促し、リストラクチャリングまたは和解につながることがあります。

    破産手続およびPKPU手続きは、通常、少なくとも2名の債権者の存在を必要とします。そのため、可能であれば、当事者は商取引関係の開始時点から他の債権者を特定しておくべきです。これは、後に回収手段の検討が必要となった場合に重要となる可能性があります

    倒産手続きの存在は、強制執行、係属中の訴訟、仲裁手続き、および回収見通しに重大な影響を及ぼし得ます。したがって、外国投資家は、取引関係の期間を通じて相手方の財務状況を継続的にモニタリングすべきです。早期の対応は、回収結果の改善につながることが少なくありません。

    クロスボーダー紛争

    クロスボーダー紛争では、慎重な調整が求められます。典型的に生じる問題としては、準拠法の相違、管轄に関する課題、送達の問題、海外に所在する証拠、並行手続および複数法域での執行が挙げられます。

    ある法域で有効に見える戦略が、別の法域でも同様に機能するとは限りません。当事者は、関係する全ての法域における法的助言が整合的に調整されていることを確保すべきです。

    紛争の予防

    最も有効な紛争管理戦略は、多くの場合、紛争が発生する前に予防することです。適切な契約書の作成やプロジェクト管理を通じて、多くの紛争を軽減することができます。主な重点分野は以下の通りです。

    明確な紛争解決条項:契約には、準拠法、紛争解決手段、(適用がある場合)仲裁地および手続言語が明確に定められていることを確保すべきです。不十分に作成された紛争解決条項は、しばしば手続上の紛争の原因となります。

    通知要件:契約上、一定期間内に通知を行うことが求められる場合が多くあります。契約上の通知要件に従わないことは、請求または抗弁の追行能力に影響し得ます。したがって、企業は遵守確保のための内部手続を整備すべきです。

    文書化:同時期に作成された記録は、最も重要な証拠のひとつであり、特に、プロジェクトが数年に及び大量の文書を伴うことが多い建設・インフラ紛争において重要です。当事者は、契約および変更契約、書簡・電子メール等の往復書簡、会議議事録、支払記録、進捗報告および社内承認記録を保管すべきです。実務上、現場レベルの協議、指示またはプロジェクト期間中に成立した商業上の譲歩が適切に文書化されないことにより紛争が生じることが少なくありません。これらの取り決めは当時は問題を解決し得る一方で、年月が経過して主要担当者がプロジェクトを離れ、正式手続が開始された後には立証が困難となり得ます。したがって、企業は重要な意思決定、変更および合意を必ず書面で記録すべきです。

    早期の法的評価

    早期に法的助言を求めることは、紛争の深刻化を防ぐ上で有効です。早期評価により、当事者は法的リスクの把握、証拠保全、和解可能性の検討および適切な執行戦略の策定を行うことができます。多くの場合、早期介入はコストおよび事業への支障の軽減につながります。

    主要なポイント

    インドネシアは外国投資家にとって大きな機会を提供しますが、紛争は事業活動において避けがたい側面でもあります。

    紛争を管理する上で有効なことは、問題発生後に請求を追及するだけでは不十分です。投資家は、取引の当初から紛争解決の手段、執行リスクおよび資産回収戦略を検討すべきです。

    また、当事者は、契約が適切に作成され、記録が維持され、潜在的な紛争が早期に把握されるようにするべきです。

    予防措置と周到に計画された紛争戦略を組み合わせることで、外国投資家は利益をより適切に保護し、紛争発生時に穏便に解決に至る可能性を高めることができます。

    MARAMIS, PURBA, SANTI,
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