インクルーシブな職場環境:職場公正法

By Matthew Teo • Irvin Ho/Helmsman 
0
80
LinkedIn
Facebook
Twitter
Whatsapp
Telegram
Copy link

シンガポールは職場公正法(WFA)の制定により、反差別の原則を法制化するという一歩を踏み出しました。本稿では、WFAの主な内容として、その適用範囲、保護対象、禁止行為、紛争解決の仕組みについて解説します。

施行日

WFAは2025年1月8日に国会で可決されましたが、雇用主が新たな法的要件に業務体制を合わせる時間を確保できるよう、2027年末までに施行される予定です。

適用範囲

Matthew Teo
Matthew Teo
ディレクター兼雇用部門責任者
シンガポール
Helmsman

WFAは、雇用契約に基づいて働く従業員および求職者に適用されます。公的部門・民間部門の双方の雇用主を対象としていますが、以下の例外があります。

    1. 従業員が25人未満の雇用主は現時点では適用が除外されています。
    2. 船員、家事労働者、自営業者、フリーランサー、プラットフォーム労働者など、特定の個人は対象外とされています。このような範囲設定により、シンガポールの労働力の大多数を保護しつつ、中小企業に柔軟性を認めています。

保護特性

WFAでは、以下の11の保護特性が定められています。

    1. 年齢、
    2. 国籍、
    3. 性別、
    4. 婚姻状況、
    5. 妊娠、
    6. 介護責任、
    7. 人種、
    8. 宗教、
    9. 言語能力、
    10. 障害、
    11. 精神的健康状態。

禁止行為

Irvin Ho
Irvin Ho
アソシエイト
Helmsman

WFAは、雇用主が、保護特性を理由に不利益な雇用判断を行うことを違法としています。禁止される行為は以下のとおりです。

    1. 個人に対する差別:雇用主は、個人の保護特性を理由として、その個人に不利益な影響を及ぼす雇用上の判断を行うことを禁止されています。
    2. 指示・命令・方針による差別:雇用主は、差別的な指示、命令、方針を文書で発出、伝達、公表することを禁止されています。これには、保護特性を理由として、特定の個人に不利益な影響を及ぼす雇用上の判断またはそのような判断全般を雇用主の代理として行うよう、従業員に対して指示する行為も含まれます。
    3. 求人広告や職務記述による差別:雇用主は、保護特性を雇用条件、基準、要件、利点、不利益、または資格喪失の要素として、明示的または黙示的に示すような求人広告や職務記述をシンガポール国内で公表する、または公表させることを禁止されています。

ただし、限定的な例外もあります。たとえば、特定の保護特性が職務遂行上の真正な要件となる場合です。例えば、個人がその保護特性を有していなければ(あるいは、有していれば)合理的に職務を遂行できない場合には、それは当該職務における真正な要件とみなされる可能性があります。

また、WFAは雇用主が雇用の決定において、高齢労働者を優遇したり、シンガポール国民および永住者を優先したりすることも認めています。さらに同法では、雇用主が、職場での差別を報告した従業員に対して報復することを禁止しています。報復行為には、解雇、給与の減額、雇用支援金の支給拒否、再雇用の拒否などがあります。

紛争解決

WFAを補完するため、2025年10月14日に「職場公正(紛争解決)法案〔Workplace Fairness (Dispute Resolution) Bill〕」が提出されました。この法案は、職場で差別が発生した場合に、個人が雇用主に対して申し立てを行うための手続きを定めています。職場での差別によって生じた損害について、個人が雇用主に対して直接救済を求めることができる法定不法行為を新たに定めることで、法的な空白を埋めることを目的としています。

要約すると、3段階のアプローチが採用されています。

    1. 社内苦情処理:従業員はまず、雇用主の社内苦情処理手続きを通じて懸念を申し立てる必要があります。これにより、組織内での解決を促進し、職場での関係の維持を図ります。雇用主はすべての従業員に、社内苦情処理手続きについて文書で通知しなければなりません。
    2. 調停:社内で解決が困難な場合、当事者は調停を試みなければなりません。これは、当事者間で合意に達することを目的とした非公開の手続きです。裁定に進む前に、当事者は必ず調停に出席する必要があります。
    3. 請求の提起:最終手段として、未解決の申し立ては正式な裁定手続きに進むことがあります。職場での差別に関する申し立てのうち、金額が25万シンガポールドル(約19万1600米ドル)以下のものは、雇用請求審判所(ECT)で審理されます。ECTは簡易な手続きで運用され、弁護士による代理は認められていないため、法的な知識のない個人でも利用しやすい制度となっています。25万シンガポールドルを超える申し立てについては、高等裁判所に付託され、弁護士による代理が認められて、正式な裁判手続きが適用されます。

WFAは今後数年以内に施行される見込みであるため、雇用主は人事方針の見直し、管理職の研修、適切な苦情処理体制の整備を進めることが求められます。

Matthew Teo氏はシンガポールのHelmsmanのディレクター兼雇用部門責任者、Irvin Ho氏はアソシエイトです。

HelmsmanHELMSMAN
21A Duxton Hill
Singapore 089604
www.helmsmanlaw.com
Contact details:
T: +65 6978 2078
E: matthew.teo@helmsmanlaw.com
E: irvin.ho@helmsmanlaw.com

LinkedIn
Facebook
Twitter
Whatsapp
Telegram
Copy link