台湾は、より厳格な規制枠組みによって、重要な半導体技術が国境を越える方法を再定義しようとしています。
半導体が国家安全保障、産業競争力、および技術主権をますます支えている中、台湾は重要テクノロジーの越境移転を規制する法的メカニズムを段階的に強化してきました。本稿では、重要な半導体テクノロジーの越境移転を管理する台湾のアプローチを形作る、近年の政策および、規制の動向を検討します。あわせて、指定された主体を対象とする規制、国家安全法に基づく国家の中核となるテクノロジーの保護強化、新たに導入された対外投資の審査メカニズムにも焦点を当てていきます。
台湾の半導体輸出規制:エンティティ・リスト

アソシエイト・パートナー
Lee and Li
Taipei
Tel: +886 2 2763 8000 (ext. 2539)
Email: tsungyuanshen@leeandli.com
制限手段の中でも、指定された取引相手を対象とする輸出管理は、台湾の技術管理体制における重要な特徴です。
経済部国際貿易署(International Trade Administration:ITA)が公表する輸出取引先管理リスト(「エンティティ・リスト」)に指定された海外の取引先に対し、物品や技術を提供する取引は、軍事用途に転用されるリスクを有するとみなされます。これには、輸出される物品自体の性質にかかわらず、核兵器、バイオ兵器、ケミカル兵器、またはミサイル兵器に関連する用途が含まれます。ですので、このような取引は戦略的ハイテク物資(SHTCs)に関する規制枠組みに基づく審査対象となります。
エンティティ・リストに掲載されている取引先(掲載主体)に対する輸出管理の適用は、最終使用者が取得する最終製品に占める輸出部品の割合に依存しません。台湾の輸出者が最終製品のごく一部を構成する最小限の部品のみを供給する場合であっても、規制は適用されます。
ITAは、輸出者が下流の顧客にある物品を供給し、その顧客がその後、加工を外部委託した上で、加工後の製品をエンティティ・リスト掲載取引先(掲載主体)に移転する場合、当該物品の最終的な仕向地について相当程度の認識があるときには、輸出者に輸出許可の申請が求められる可能性があるとの見解を示しています。
ITAはエンティティ・リストの随時見直し、更新をおこなっており、最近の更新では規制姿勢の強化と、輸出管理執行における取引先ベースのリスク評価の重視が高くなっていることを反映しています。

アソシエイト・パートナー
Lee and Li
Hsinchu
Tel: +886 3 579 9911 (ext. 3206)
Email: rachelchen@leeandli.com
原則として、ITAは掲載主体に対する輸出管理が、有体物にとどまらず、ソフトウェアやテクノロジーといった無体物にも及ぶと考えています。しかし、執行のメカニズムは主として税関通関手続に依拠しているため、実務上は、物理的な物品に組み込まれていて、物理的物品に体現されるテクノロジーに重点が置かれています。
その結果、有体物の輸出制限はテクノロジーの移転を間接的に管理する主要手段として機能する一方、純粋に無体物であるテクノロジーの共有や交換は、現行の執行枠組みの下では相対的に規制が困難なままとなっています。
貿易法13条に基づき、輸出者はSHTCsの輸出について事前承認を取得しなければなりません。事前承認なしに掲載主体と輸出取引を行った場合、重大な結果を導くことになります。貿易法27条により、輸出者は、最長5年の懲役および/または最大300万台湾元(9万5300米ドル)の罰金といった刑事罰、または罰金、輸出入登録の一時停止もしくは永久停止を含む行政処分の対象となり得ます。
台湾の中核技術の保護:国家安全法
輸出管理と並行して、台湾は国家安全法の改正を通じ、「国家核心重要技術」の保護を大幅に強化しています。国家安全法3条は、外国、敵対的外国勢力、またはそれらが設立、もしくは支配する組織のために行為する者、またはそれらの利益を図る意図を有する者が、国家核心重要技術の取引上の秘密に関する行為に関与することを禁止しています。
禁止行為には、不正な手段による当該の取引上の秘密の取得、無断使用または開示、取引上の秘密の保有者による要請にもかかわらず、削除または廃棄しないこと、違法であることを知りながら取引上の秘密を取得し、使用することなどが含まれています。

アトニー
Lee and Li
Hsinchu
Tel: +886 3 579 9911 (ext. 3203)
Email: effiepeng@leeandli.com
「国家核心重要技術」とは、海外移転により国家安全保障、産業競争力または経済発展に重大な害を及ぼすテクノロジーとして定義されます。国防、または重要インフラ保護の観点から管理が必要な技術、または世界最先端の技術を可能にする、もしくは主要産業を大幅に高度化するテクノロジーが対象となります。
2024年末までに、行政院(政府の行政部門)が公表した保護対象の国家核心重要技術リストには32項目が含まれています。同リストは、国防、宇宙、農業、半導体、情報セキュリティなど幅広い分野に適用されます。半導体については、14ナノメートル未満のチップ製造プロセス、先端ヘテロジニアス・インテグレーションのパッケージング技術、高性能AIチップ設計、低温半導体回路の設計および製造技術などが含まれます。2025年11月時点では、国防、宇宙およびデュアルユース技術に関連する取引上の秘密の保護強化のため、同リストが拡大される可能性があると報じられています。
2025年8月、国家核心重要技術の取引上の秘密に関する国家安全法違反について初の刑事訴追が行われ、執行上の重要な節目となりました。本件は、台湾積体電路製造(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー/TSMC)の元エンジニアが、日本の半導体装置サプライヤーに入社後、TSMCの現職従業員からプロセス関連の機密情報を勧誘した疑いに関するものです。
検察は、盗取された情報が台湾の産業基盤にとって不可欠な国家核心重要技術に該当し、半導体産業の国際競争力に深刻な脅威を与えるとして、元エンジニアおよび同社の現職従業員を起訴しました。
さらに検察は、日本企業が雇用主として、従業員に対する法定の監督義務を負っていたことを強調しました。同社は、一般的な社内注意喚起以上の具体的な予防措置、およびコンプライアンス措置を欠いていたと判断され、相当額の罰金を伴う法人の刑事責任についても追及されました。
台湾における海外技術投資の規制
台湾によるテクノロジー流出防止の取組みは、対外投資規制の領域にも及んでいる。
重要テクノロジーの移転、および国家安全保障上の潜在的なリスクに関する懸念に対応するため、4月に成立した改正により、産業創新条例第22条に基づく新たな承認制度が導入されました。改正後の規定では、投資額に基づく既存の基準に加え、指定された国、または地域に関わる対外投資、または特定の産業、またはテクノロジーにかかわる対外投資については、実施前に所管当局から事前承認を得なければなりません。
国家安全保障上のリスクや経済発展への悪影響など、特段の事情が認められる場合、当局は承認を全部、または一部を拒否し、または特定の確約を条件として条件付承認を付与することができます。産業創新条例第67条の三に基づく新たな罰則規定により、行政罰としての過料および/または投資の是正命令、投資の撤回命令が追加的に認められています。
これらの規定は未だ施行されていないものの、経済部は、子法規である「公司國外投資處理辦法」(会社の海外投資に関する規則)の改正後に実施される旨を示しています。
市場の注目は、規則がいわゆる「N-1」原則(海外における半導体製造プロセスは、台湾で導入されているものより少なくとも1世代遅れでなければならないという原則)を正式に明文化するか否かに集まっています。現行の規則には明文規定がないものの、当局者は、N-1に関する考慮が既に投資審査において要素として織り込まれており、新制度の発効後には、より明示的な役割を果たし得ることを認めています。
結論
台湾は、国境を越えるテクノロジー移転を規律する規制枠組みを強化しています。輸出の規制、人材移動に関連する中核的となる取引上の秘密の保護、および対外投資の審査を通じて、この枠組みは、物品、人材、及び資本という3つの経路からテクノロジーの流れに対応しています。その結果、ハイテク分野における国境を越えた協業には、台湾の進化する規制・コンプライアンス環境を慎重に見極めながら進めることがこれからもますます求められていくでしょう。

8F, No 555, Sec 4, Zhongxiao E Rd
Taipei 110055, Taiwan
Tel: +886 2 2763 8000
5F, Science Park Life Hub, No.1, Industry E 2nd Rd,
Hsinchu Science Park, Hsinchu 300, Taiwan
Tel: 886 3 579 9911
Email: attorneys@leeandli.com
www.leeandli.com





















