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サンディエゴで開催される2025年の国際商標協会(INTA)年次総会を控え、同協会の新会長であるElisabeth Stewart Bradley氏は、知的財産(IP)に関する課題は多様な視点から捉えることができるとの信念を語っています。Brian Yapが報告します。

バイオ医薬品業界に入る前は消費財業界にいましたので、両方の業界を経験していることが、非常に興味深い視点(レンズ)をもたらしていると感じています」

国際商標協会(INTA)の2025年会長に就任予定のElisabeth Stewart Bradley氏が、自身の経験を語る際にレンズ(optics)という表現を使っているのは興味深いことです。

5月17~21日にサンディエゴで開催される同協会の年次総会を前に、Asia Business Law Journalのインタビューに応じたニュージャージー在住のBradley氏は、世界の全く異なる地域を示す2枚の地図を背に、異なる業界が持つ多様な視点の価値を特に強調しました。

INTAの新代表である同氏は、いくつかの課題は複数の多様な視点から見ることができるという信念を表明しています。

「私はINTAの職員や委員会メンバーに対して、決議を進める際には、できる限り幅広い視点からこれらの問題を見るよう促しています。会員基盤全体から多様な視点を取り入れることで、決議がより十分な情報に基づき、より強固なものになるからです」とBradley氏は述べています。

同氏は自身が持つこの興味深い視点を活かし、1年間の任期中、INTAの多様な会員の利益に可能な限り寄与することを目指しています。

INTAでの役割に加え、Bradley氏は現在、米国に本拠を置くグローバル・バイオ医薬品会社であるBristol Myers Squibbのイノベーション法務担当副社長として、同社のニュージャージー州オフィスを拠点に商標、著作権、ブランド保護の取り組みを主導しています。

同氏の持つ視点は、「全く異なる視点を持つ多様な業界」での数十年にわたる経験から培われたものです。

1990年代後半、バージニア大学ロースクールで法学博士号を、ウィリアム・アンド・メアリー大学で英文学の学士号を取得したBradley氏は、法律事務所のHunton & Williamsでアソシエイトとして弁護士のキャリアをスタートさせ、その後、ニューヨークの法律事務所のMorgan Lewis & Bockiusで、訴訟および知的財産案件を担当しました。

5年間にわたって法律事務所に務めた後、同氏は英国に本拠を置く菓子大手企業キャドバリーに入社して企業内弁護士の世界へと転身し、8年間の在籍中、アメリカ大陸担当副社長兼主席商標顧問として勤務しました。2011年、Bradley氏はBristol Myers Squibbに商標・著作権法担当アシスタント・ゼネラルカウンセルとして入社し、2015年には副社長兼商標・著作権・ブランド保護担当責任者に就任しました。

長年にわたって副会長や理事など様々な役職で貢献してきた組織であるINTAの舵を取ることになり、同氏は現在、リーダーとして何を成し遂げ、どこに注力しようとしているのか、率直かつ明確に語っています。

Elisabeth Stewart Bradley

「INTAの会長という名誉ある大きな責任を負っていることを常に意識していますし、ここ数カ月で、自分にとっての北極星のような指針が見えてきたと感じています。それは、奉仕と価値を軸に私を導いています」と同氏は語っています。

Bradley氏の北極星の中核をなすのが、自身が率いる2025年会長タスクフォースです。これは、企業内法務チームはいかに進化するべきか、変化と変革は企業内法務チームの外部パートナーにどのような影響を与えるのか、この変化と変革の中でINTAが会員を支援する機会とは何か、それらを探求していくものです。

Bradley氏は、法務やビジネスの状況が急速に進化している中で、タスクフォースは、地政学や急速に進化するテクノロジーなど複雑に絡み合った動きがINTA会員に与える影響を注視し、これらの動きが2025年以降どのように継続し、加速していくかを予測できるようにしていると説明します。

「私たちは会員が単に生き残るだけでなく、確実に成長できるようにしたいと考えています」と同氏は語っています。「タスクフォースは現在、事実調査とリサーチの段階にあり、過去数年間に会員の実務に生じた変化について議論するため、多様な会員との意見交換に注力しています」

Bradley氏の目標は、こうして得られた知見を前向きで実務的な施策へと昇華させ、絶えず進化する不確実な環境の中で進むべき方向を示しながら、組織として会員の支援のために実行に移すことです。

タスクフォースは今年11月、INTAのリーダーシップ会議の期間中に理事会に対して調査結果を報告する予定です。Bradley氏は、その時点で最終報告書も準備できている可能性はあるものの、例年と同様に、会長タスクフォースとしての書面での最終報告書は後日発表されることになるかもしれないと述べています。

アジアにおいては、Bradley氏とINTAチームの前にある主要な課題は、中国およびインドの知財当局とのさらなる連携強化です。両国は急速に進化する法務・ビジネス環境の推進役であると同時に、INTA年次総会に多数の参加者を送り出している主要国でもあります。

Bradley氏にとって、中国とインドはアジアにおける注力すべき主要地域であるだけでなく、同氏の会社が特に関心を寄せる市場でもあります。

「バイオ医薬品業界全体がそうであることはもちろん、他の多くの業界も同様だと認識しています」と同氏は述べています。

今年のINTA年次総会では、アジア太平洋地域からの1800人を超える参加者のうち、中国からの登録者が32%以上を占めており、インドや日本など他のアジア諸国を上回っています。

Bradley氏は、中国には共存協定や登録不可能な商標から偽造まで、多岐にわたる分野でIP関連の深刻な課題がいくつかあると述べています。

大手企業ブランドのオーナー、法律事務所、サービスプロバイダー、中小企業などといったINTA会員の代表として、Bradley氏は中国の知的財産当局に対して、さらなる規制の明確化を含む複数の問題への対処を要請してきました。

そうした問題の一つが、潜在的に権利が競合する商標権者同士の共存協定に対して、中国の商標当局が重視していないことです。INTA会長は、このような協定は、商標当局によって登録された先行類似商標に基づく異議申し立てに起因する混同を解消し、登録を促進するための有効な手段となり得ると指摘しています。

しかし、同氏によれば、2021年後半以降、中国の商標当局がこのような協定に以前ほど重きを置かなくなっています。

「2021年後半以降、中国の商標当局は当事者の自主性よりも公益を優先するようになり、それがこの変化をもたらしました…(中略)…私たちは、これらの共存協定を重視する従来の方針を継続することを提案しています」

Bradley氏はまた、中国における偽造問題についても言及し、これは世界中の多くの国が直面している重大な課題であると述べています。同氏は、中国には、さらなる規制の明確化が有益となる重要分野がいくつかあり、法的対応の枠組みもその一つであると強調しています。

「私たちの理解では、現行法では、ブランドオーナーから違反通知を受け取った際に、電子商取引プラットフォームが対応しなければならない期間が、実際には明記されていません」

INTAの新会長である同氏は、中国と同じく、世界各国で起きているのと同様の偽造問題を含め、インドにおける知財権の執行も憂慮すべき課題であると述べています。

インドは今年のINTA年次総会への参加者数の上位国の一つであり、アジア太平洋地域からの全参加者の約20%を占めています。

Elisabeth Stewart Bradley

「私たちは、(インドの)IP当局それ自体が、大幅に審査が滞っていることなどのいくつかの課題に直面しており、これが世界中のブランドオーナーにとって少なからず困難となり得ることを認識しています」

Bradley氏は、インドを偽造に対するグローバルな戦いの重要な法域と位置づけた上で、INTAはインド当局と密接に協力して、インドでのIP執行の強化と近代化、および権利者との協力体制の強化を支援していると語ります。

「2024年だけでも、INTAはインド税関、米国司法省、その他の利害関係者と連携し、主要都市でハイレベルな研修を実施しました。また、税関執行手続きの強化に向けた詳細な提言を提出したほか、インドにおける国家知的財産調整センター(National IP Co-ordination Centre)の設立を引き続き提唱しています」

今年は同氏のリーダーシップの下で、INTAは南アジアに特化した偽造対策小委員会を通じて、インド知財当局との継続的な取り組みと連携を図っていきます。Bradley氏は、これら懸命な取り組み全てが、インドによるより強固で、より連携の取れた偽造対策の枠組み構築を支援することを目的としている、と述べています。

しかし、Bradley氏が関心を寄せるアジアの主要な知財の法域は、インドと中国だけではありません。アジア全域の動向は多くのINTA会員にとって関心事項です。

「年次総会やその他のイベントに加え、私は2025年には複数のアジア諸国を訪問する機会があり、そのような訪問や会員の皆様から多くを学ぶことになるでしょう」と同氏は述べています。

日本は今年のINTA年次総会の参加者数の上位国の一つで、アジア太平洋地域全体の約15%を占めており、IPの審査・執行の両面でBradley氏は強い印象を受けています。

INTA会長は日本を模範的なIP法域と評し、日本がIP関連法を常に最新に保っていること、最近の営業秘密に関する法律(不正競争防止法)の改正も含めて評価しています。

「(日本の不正競争防止法は)非常に先進的であり、営業秘密の保護を強化するとともに、この分野で知的財産権を行使できる企業の力を高めていると考えています」

日本の特許庁はTM5と呼ばれる協力枠組みの一員であり、5月18日のINTAアジア太平洋パネルに招かれ、IP制度の最新施策を紹介する予定です。

Bradley氏にとってアジア太平洋地域とは、シンガポールのように高度に発展した経済圏もあれば、インドネシアのような急成長する経済圏、また、ラオスのように市場は拡大しているものの行政機関のリソースが限られている発展途上国などもあり、各地域が異なる発展段階で共存する、非常に多様性に富んだエリアです。

このような多様性のために、INTAやその他の関係機関は、それぞれに応じた異なるアプローチをとる必要があります。「執行が(ASEAN地域における)横断的な課題の一つであることは、特にこの地域での強力なeコマースの普及を考慮すれば、確かなことです。消費者を偽造から守り、ブランドオーナーがeコマースにおいて公正に競争できる環境をつくることは、絶え間なく続く戦いなのです」

Bradley氏はまた、小口配送の急増が、執行機関やブランドオーナー双方にとって大きな課題となっていることも付け加えています。規制の観点からも、IP関連法だけでなくその運用において、大きなばらつきがある点に対応する必要があると述べています。

すなわち、シニアIP弁護士としてBradley氏は、知的財産はビジネスの成功に不可欠なものと捉えており、イノベーションを保護し、投資や戦略に確実性をもたらすものだと考えています。

Elisabeth StewartBradley

「IPはビジネスのほぼすべての側面と深く結び付いています。それは基盤であり、推進力であり、価値創造の源でもあるのです」

このようなIPの多面的な性質をテーマに掲げ、INTAは今年の年次総会に1万人以上の参加者を見込んでいます。IPがどのようにビジネスを推進し価値を生み出すのか、それを知ることを切望している全ての参加者のために、5月17~21日に開催される企業内実務家向けシリーズや、5月20日の特許シリーズなど、多彩なテーマ別セッションが用意されています。

世界で最も急速に成長している地域の一つであるアジアは、ブランドオーナーからこの地域で業務に携わるIP弁護士まで、幅広い利害関係者が最大の関心を寄せる最もホットで最新のトピックを扱うセッションにおいて、主要テーマとなっています。

5月18日に予定されている「アジア太平洋IPの鼓動:この地域の主要IP当局による洞察」と題する企業内実務者向けシリーズの法律・政策セッションでは、フィリピン知的財産庁長官のBrigitte de Costa-Villaluz氏とシンガポール知的財産庁の最高責任者Tan Kong Hwee氏など、著名な講演者が登壇します。

INTAシンガポールのチーフ・レプレゼンタティブ・オフィサー、Walter Chia氏がモデレーターを務め、日本、韓国、フィリピン、シンガポールなど、アジアの主要なIP制度を代表するパネリストが参加します。Bradley氏は、パネリストたちが最近のIP関連法の改正や、デジタル変革の取り組み、新たなビジネス支援サービス、そして、それぞれの法域での関連する最新情報を取り上げることを期待しています。

特に中国やインドなど特定のアジアの法域に関心のある人のために、それぞれに特化した企業内実務家向けシリーズのセッションも用意されています。5月17日のブランドオーナー向けの「中国でのブランドの拡大とマネジメント:成功への戦略」と題されたセッションは必見です。New Balance Chinaのブランド保護担当顧問のAmelie Chen氏や、Wanhuida IP China(万慧達知的財産権)のパートナーであるHaiyan Ren氏などの講演者が登壇し、中国における消費者行動やブランド戦略に影響を与えるトレンドから、IP関連法、商標手続き、世界第2位の経済大国におけるコンプライアンス要件まで、専門的な見解に触れることができます。

5月19日の「インドIP関連法の新たなフロンティアを切り拓く」と題したインド判例法に関する最新情報のセッションでは、参加者はデリー高等裁判所の判事であるAmit Bansal氏やSaurabh Banerjee氏をはじめとするインドの判事や訴訟弁護士から、同国の最近の判例法について直接、見識を得ることができます。

インドが世界有数の商標出願の法域として台頭している中、KRIA Lawの創設者兼マネージング・パートナーであるMS Bharath氏やS Majumdar & CoのパートナーであるSuhrita Majumdar氏らパネリストが、AIによる創作物に関する著作権保護からファッション業界の知的財産権執行まで、多岐にわたる法体系の最新動向を分析します。

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