外国投資家にとって、日本でのジョイントベンチャー設立は他にはない機会であり、同時に問題をもたらすことにもなります。大規模な日本経済は、安定したビジネス環境や先進的なインフラ、高度に熟練した労働力を提供してくれます。しかしながら、日本には特に外国為替及び外国貿易法や、スタートアップを含む多様な事業領域での事業連携に関する指針など、外国直接投資についての複雑な規制があり、それに対処していくには慎重に計画し、実行することが求められます。本稿では「外国為替及び外国貿易法」の見落とせない側面と、最近の規制強化など、外国投資家に対する実務上の影響を探っていきます。また、日本の交渉先とのジョイントベンチャー設立における実務的な交渉のポイントと、2022年5月に経済産業省より発表されたスタートアップ企業への合弁投資に関する新しい指針についても解説します。
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外国投資家が日本でのジョイントベンチャー設立にともなって株式を取得しようとする時は、主に外国為替及び外国貿易法によって定められる外国直接投資(FDI)制度に従わなければなりません。
同法は、外国投資などの取引の管理と調整によって、日本や国際的なビジネス社会における対外取引の適切な発展を確保することを目的としています。その目的は、日本経済の健全な発展に貢献することです。
日本政府のFDIに関する政策と措置は、国家安全保障上の懸念の可能性のある新規投資を精査しつつ、 を促進することを目的としています。
他のアジアの法域とは異なり、日本の規制下においては、メディア、通信、航空事業など厳しく規制された事業分野への投資でない限り、対内投資は目標持株比率に関係なく無制限に行うことができます。ただし同法では特定のFDIについて、財務省や他の所管省庁による審査を義務づけています。
事前届出
外国為替及び外国貿易法の下では、日本と対内直接投資 に関する条約を結んでいない国からの投資については、FDI事前届出書を提出して、日本政府の承認を得ることが必要になる場合があります。一部の指定機密業種への投資については、外国投資家は事前に日本銀行を通じて当局に届出をする必要があります。

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届出の後、通常30日間の待機期間が課され、その間、当局はその投資が及ぼす国家安全保障上の潜在的な影響について審査します。待機期間はその投資の機微性に応じて短縮、または延長されることがあります。そのような事前届出が不要な場合でも、外国投資家は通常、当局に事後報告書を提出するよう求められます。
同法は、日本の当局がFDIについての今後の規制変更を発表し始めた2019年後半以降、注目を集めることになりました。中でも最も関心を集めた変更点は次のとおりです。
- 事前届出書の提出が必要な取引の範囲が、情報通信技術(機器、ソフトウェア、サービス)、特定の医薬品、高度管理医療機器の製造に関連する事業にまで拡大
- 一部の限定的な例外を除き、事前届出義務の閾値が、上場企業の株式または議決権の10%から1%に引き下げ
- 特定の業種での取締役の任命、事業の譲渡または廃止について、事前届出書の提出の義務づけ
これらの動きは、最近の米国、EU、その他の経済圏での対内投資に対する制限強化に歩調を合わせたものです。筆者は、対内投資に関する日本の法的枠組みは、今後もより強く他国政府の今後の政策に影響され続ける可能性があると感じています。
ジョイントベンチャーへの影響 日本への投資を検討している外国投資家は、提案されたジョイントベンチャーが、拡大された指定機密業種のリストに該当する可能性はないのか、日本政府によって審査を受ける可能性はないのか、徹底的に分析するようお勧めします。これら求められる要件を早期に特定することで遅延を回避し、日本での法律遵守を確保することができます。
実務上の問題 対内投資についての日本の規制は比較的ゆるやかで、潜在的な投資を著しく阻害するものではありません。しなしながら、日本の交渉相手と満足のいく契約上の合意を得ることは、投資を検討している外国投資家にとって重要なポイントとなります。
外国投資家へのアドバイス

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ジョイントベンチャーの契約交渉での実務上の問題は他の法域と大きく異なるわけではありませんが、外国投資家にとって重要な注意点がいくつかあります。
- 全体的な構造 日本人や日本企業のよく知られた特徴として、紛争や対立を非常に嫌う傾向が挙げられます。この特徴のため、日本人や日本企業はジョイントベンチャーの契約交渉の場においても、多くの困難な問題を最終的に誠実な議論を通じて解決することを好み、独自の姿勢で挑みます。外国投資家はこの考え方を十分に尊重しつつも、重要事項については不確実性が残ることを避けるため、適切な条項を要求する必要があります。
- 経営構造 合弁契約では、外国投資家がジョイントベンチャーの経営陣を任命できるかどうかを明確にする必要があります。外国投資家にとって望ましい経営管理を実現することが重要ですが、彼らの指名する候補者が日本独自のビジネス文化を十分に理解していることを確保することも、また重要になります。
- 紛争防止とその解決 主に日本人で構成されるであろうジョイントベンチャーの従業員間に、協力・尊重し合う姿勢を育むことは、ジョイントベンチャーを実務的に機能させる上で重要なもう一つのポイントとなります。ジョイントベンチャーのパートナー同士が経営について意見が異なり衝突することを想定して、合弁契約にはデッドロック条項など、当事者間の紛争を防止・解決するための条項を含めることは欠かせません。
- 合弁契約の条項への反映 合弁契約の条項は、多くの法域においてジョイントベンチャー企業の設立関連書類に反映されることになります。しかし、日本企業では一般に、設立関連書類に直接、株主間の契約に関連する条項を記すことはありませんし、それが違法になるわけでもありません。外国投資家は、日本の交渉相手が合弁契約の条項を会社の設立関連書類に反映させることに抵抗することを前提に、個別の具体的な状況においてバランスの取れた解決策を検討する必要があります。
また、日本には、米国の全米ベンチャーキャピタル協会のモデル契約のような、株主間の契約についての「モデル契約」がないことにも留意する必要があります。多くの場合、契約の交渉はケースバイケースで自由に行われます。
スタートアップ投資
日本では、スタートアップ企業への投資に、ジョイントベンチャーの枠組みが用いられることが増えてきました。そこでも、投資を検討している外国投資家は、他国とは異なる慣行や規定の存在に留意しなければなりません。
日本政府は、いわゆる「オープンイノベーション」促進のための取り組みの一環として、スタートアップと成熟企業間の協力を促進するための措置を講じています。2022年3月、経済産業省はスタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針を発表しました。
この指針では、日本でのスタートアップとの事業連携と投資を成功に導くために、いくつかの主要な原則と推奨される事項について解説しています。
- オープンイノベーションの促進――成熟企業のリソースとスタートアップの革新的な能力の統合を奨励すること
- 相互利益の確保――連携により当事者すべてが利益を確保できる契約を構築すること
- 柔軟なビジネスモデルの採用――機敏性と、市場の変化に対する迅速な適応を可能にすること
契約条項
指針では、スタートアップ企業への投資と合弁契約に盛り込むべき典型的な条項についても解説しています。また、上記のような合弁契約に関する実務的な内容に加え、以下のような、事業の支配権をバランス良くコントロールし、投資を保護するための指針の条項も挙げられています。
- 経営について 投資家と(資金提供を受ける)スタートアップ間の経済的立場の違いを考慮して、指針では、業務の調整を行い、スタートアップ企業の経営陣の職務と報酬を定義することが本質的に重要であると説いています。
- 営業秘密について どの情報が「機密情報」なのかを曖昧にしたままでは、投資家はスタートアップの機密情報を他の投資家を含む第三者に意図せず漏洩する危機にしばしば直面します。したがって、事業内容を徹底的に理解し、契約書では機密情報の範囲を正確に明らかにし、定義する必要があります。
結論
全体として、日本では法的にも経済的にもジョイントベンチャーに適した環境が整っています。とはいえ、外国投資家が日本市場の複雑さを克服し、日本において強力で、相互に利益を生むジョイントベンチャーを育むためには、契約、規制、文化的な考慮事項を理解し、対処することが極めて重要です。

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