パンデミックの混乱から地域的な拡大にいたるまで、Arlene Lapuz-Ureta氏が、アジア太平洋地域の企業内弁護士を統合させる取り組みについて、Sheryl Ubanaに語りました。
世界がパンデミックによって停滞した時期にあっても、Arlene Lapuz-Ureta氏はAsia Pacific Corporate Counsel Alliance(APCCA)の歩みを続けました。数多くのネットワークが連携の維持に苦労する中で、同氏はこの地域全体の企業内弁護士を結集し、文化の違いや急速に変化する法的環境を乗り越える橋渡し役を果たしました。
現在、事務局長としての2期目を終えようとしているLapuz-Ureta氏は、静かな粘り強さと大胆なビジョンに彩られた自身の在任期間を振り返ります。国境を越えた対話の推進から、In-House Counsel Worldwide(ICW)での自身の活動を通じて、アジア太平洋地域の弁護士の国際的な発信を高める取り組みに至るまで、同氏のリーダーシップのスタイルは安定して地に足のついたものでありながら、世界的な視座を備え、将来を見据えたものになっています。
同氏の功績は誌面上ではきわめて目を引くものに映るかもしれませんが、APCCAで同氏と働く人々は、同氏を、気品と真摯な思いやり、そして自身が関わるコミュニティに対する揺るぎない責任感を持って、他を導く人物だと評しています。
「私たちがパンデミックからまだ回復の途上にあったとき、LMCP(Legal Management Council of the Philippines/フィリピン法務管理協会)は初めてのAPCCAカンファレンスを主催しました。しかしそれは、決して容易なことではありませんでした」と、LMCP会長のAlicia Salita氏は語ります。
2023年、Thai Corporate Counsel Association(Thai-CCA)がアライアンスに参加する動きを見せた際、舞台裏で道筋をつけたのはUreta氏でした。「それがArleneという人物です。静かでありながら力強く架け橋を築くリーダー。彼女は役職によってではなく、存在感によって他を導くのです」と、Thai-CCA会長のSahachai Wibuloutai氏はABLJに語ります。
Singapore Corporate Counsel Association会長のDaniel Choo氏によれば、Ureta氏の影響は、同氏が築いた絆の強さに最も表れています。「彼女のリーダーシップの下で、APCCAはコミュニティとして、より強固になりました」とChoo氏は話します。
Indonesian Corporate Counsel Association(ICCA)会長のSeradesy Sumardi氏にバトンを渡すに当たって、Ureta氏が残した「人のつながり」という遺産は、不確実な時代にあっても、目的意識と粘り強さがひとつのアイデアを、地域を超え、さらには世界規模の力へと変え得ることを示しています。
Asia Business Law JournalはUreta氏に、不確実な時代において国境を越えたアライアンスを率いることの課題、同氏のリーダーシップを形づくった節目、そして後任に引き継ぐに際して望むことを聞きました。
Asia Business Law Journal:APCCAの事務局長として2期目を終えようとする中で、在任中におけるアライアンスの最も重要な成果は何だと考えますか。
Arlene Lapuz-Ureta氏:私の任期中にAPCCAが成長し、強固になったことは、本当に私が最も誇りに思うことです。
パンデミックは、法的および規制上の問題を議論する場の継続を妨げることはありませんでした。2024年には、私自身が所属する組織であるLegal Management Council of the Philippinesが主催して、フィリピンのマニラで初めてのAPCCAカンファレンスを成功させました。2025年10月2日~3日には、インドネシアのバリで、Indonesian Corporate Counsel Associationが主催する別のAPCCAカンファレンスも成功しました。
APCCAが存在感のあるアライアンスへと成長していることは、私の任期中に、Thai Corporate Counsel Associationと日本組織内弁護士協会という重要な2つの企業内弁護士団体が加盟したことからも明らかです。これにより、当初はインドネシア、シンガポール、マレーシア、スリランカ、フィリピン、インドで構成されていた当アライアンスに属する協会数が8団体となりました。
ABLJ:LMCPとAPCCAのリーダーを務める以前、ご自身のキャリアの歩みはどのようなものでしたか? 企業内法務のみに専念するのではなく、組織のリーダーシップの役割に踏み出したきっかけは何でしたか?
Lapuz-Ureta氏:LMCPとAPCCAでリーダーシップの役割を担う以前、私のプロフェッショナルとしてのキャリアは、幅広く発展的なインハウス業務を基盤としていました。フィリピンで第2位の銀行であるMetrobankのジェネラル・カウンセル(法務責任者)を務め、その後、Nissan Philippinesの法務・コンプライアンス部門の責任者を務めました。事業部門と緊密に連携しながら、企業法務、商務、規制にまたがる業務に携わり、これらの企業が複雑な業務運営上・コンプライアンス上の課題に取り組む際の支援をしてきました。
時間の経過とともに、私の役割は法務アドバイザリー業務にとどまらず、ガバナンス、ポリシー立案、リスク管理、戦略立案といった分野にまで広がりました。これにより、企業内弁護士が単なる法務アドバイザーとしてだけではなく、ビジネスパートナーや組織のリーダーとしてどのような貢献をしているのか、その全体像を理解できるようになりました。
私が組織やコミュニティのリーダーシップへ進むきっかけとなったのは、企業内弁護士として直面する課題の多くが、業界や法域を越えて共通しているという気づきでした。コミュニティを築き、リソースを共有し、専門性の向上のためのプラットフォームを構築することで、どれほどの影響が生まれ得るかを実感しました。
自分自身の実務だけに注力し続けるのではなく、企業内弁護士という専門職をより広く強化し、その進化する役割を提唱するとともに、企業内弁護士間の連携を促進し、キャリアのあらゆる段階にいる弁護士たちを支える基準やプログラムの発展に貢献したいと考えるようになりました。
こうしたリーダーシップの役割に踏み出したのは、企業内弁護士のコミュニティを強化し、地域的・世界的な視点を支持し、私たちの専門職の未来を形づくることに貢献をしたいという私のコミットメントから自然に生まれたものでした。
ABLJ:APCCAは、この地域全体の協会を束ねています。異なる法域間での連携を育むための鍵は何でしたか?
Lapuz-Ureta氏:多様な法域を越えて連携を育む鍵は、信頼と相互の尊重を築き、共通の目標に対するコミットメントを共有することにあります。
アジア太平洋地域は、法的枠組み、規制環境、文化的文脈が非常に多様なため、効果的に連携するには、異なる視点に対する開かれた姿勢や、互いから学ぼうとする真摯な意欲が求められます。
明確なコミュニケーション・チャネルを確立し、透明性を維持することも同様に不可欠です。専門性、誠実さ、それぞれの地域の実務に対する配慮を取り組みの基盤とすることで、私たちは多様性を強みの源泉へと変えることができます。そうすることで、価値観の共有と、卓越性を追求する集団的なビジョンによって結ばれた、企業内弁護士の一体感あるネットワークをつくり出しているのです。
ABLJ:あなたはAPCCAの初のフィリピン人事務局長でした。このように評価されたことは、フィリピンの企業内弁護士コミュニティにとって何を意味するのでしょうか?
Lapuz-Ureta氏:APCCA初のフィリピン人事務局長であることは、個人的にはもちろん、フィリピンの企業内弁護士コミュニティ全体にとって非常に意義のある名誉です。これは、地域の法的環境における価値あるパートナーとしての評価を得るために、私たちがどれほど前進してきたかを象徴しています。
当時、フィリピンの企業内弁護士協会であるLMCPの会長として、私は常に、LMCPが「侮れない力(force to reckon with)」となるというビジョンを追求してきました。同様に、私が事務局長を務めた任期中にLMCPがこの地域アライアンスを主導したことで、LMCPとAPCCAの双方が、企業内弁護士の世界的組織であるIn-House Counsel Worldwideの一員となることが実現しました。私はそこで事務局兼財務担当を務めるだけでなく、2023年5月1日付での法人化に際して、その創設理事会のメンバーとなるという栄誉も賜りました。
私にとってこれは、困難に直面しても高い水準の仕事を維持し続けるフィリピン人企業内弁護士の献身、強靭さ、誠実さを反映するものです。この評価は、私たちの視点や貢献が、アジア太平洋の舞台にとどまらず、世界的な法曹コミュニティにおいても意義深いものであることを示しています。これが、より多くの同僚が一歩を踏み出し、専門知識を共有し、国境を越えて私たちの専門職の未来を形づくるリーダーシップの役割を担うきっかけになることを願っています。
ABLJ:In-House Counsel Worldwide(ICW)の創設理事会メンバーとして、あなたはその設立においてどのような役割を果たし、この組織が世界的に企業内法務の将来にどのような影響を与えると考えていますか? また、あなたのグローバルな活動は、APCCAとLMCPの取り組みをどのように補完し、形づくることになりましたか?
Lapuz-Ureta氏:創設理事会メンバーとして、私はICWの執行委員会と緊密に協力して、組織の中核となる目的を明確にし、長期目標を定義し、ICWを正式なグローバル機関および法人として設立するための設立文書の起草を支援しました。私の役割は、強固な基盤を築くことに他なりませんでした。つまり、使命を明確にし、法域をまたいだ整合性を確保し、企業内法務専門家の進化するニーズに応じて発展できるような組織構造の形成に寄与することでした。
当組織は、統一された国際的な発信を創出し、ベストプラクティスの交換を奨励し、国境を越えた専門職の基準を強化することによって、企業内法務の将来に影響を与え続けると信じています。さまざまな国の多様な法務コミュニティを結集する能力を有することから、ICWはソートリーダーシップを発揮し、企業内弁護士という専門職の地位を世界的に高める役割を担う存在となり得ます。
私のグローバルな活動は、必然的にAPCCAやLMCPの取り組みを補完することになりました。世界各地の企業内弁護士との交流を重ねることで、企業内弁護士が直面する共通の課題に加え、地域固有の特性や事情についての洞察を得ることができ、それがこれらの組織のプログラムを構想し、磨きをかける助けとなりました。これにより、異なる視点の架け橋となり、連携を促し、地域において意義があるだけでなく、世界的な広がりのある取り組みを支えることができました。
APCCAとLMCPは、2024年にマニラで開催された地域カンファレンスにおいて、ICWとそのパートナーであるMondaqから支援を受けました。さらに重要なのは、ICWの事務局兼財務担当、そして理事会メンバーとしての立場で、2024年10月にパリで開催された戦略立案セッションを主導した中核グループの一員であったことです。
私はこのセッションの期間中、私たちがICWの使命とビジョンを明確化し、包括的なSWOT[強み、弱み、機会、脅威]分析を行い、SMART[具体性、計量性、達成可能性、関連性、期限]目標および目的を定義し、協会の将来の取り組みを導く行動計画を策定することで、フィリピンおよび、より広いアジア太平洋地域の法的視点が適切に反映されるように努めました。
ABLJ:今後数年のAPCCAについて、特にアジア太平洋の法務およびビジネス環境の変化を踏まえ、どのような課題と機会があるとお考えですか?
Lapuz-Ureta氏:最近バリで開催されたAPCCAカンファレンスの開会の挨拶で述べた通り、APCCAの企業内弁護士が直面している課題は多く、これには、例えば以下が含まれます。
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- 特に政府がデータ・プライバシー、贈収賄防止、クロスボーダー取引などの分野で規制を強化する中、複数の法域にわたる規制変更に対応していくこと
- 倫理基準やデータ・セキュリティを損なうことなく、AIおよびリーガルテックを日常業務に統合すること
- ビジネスの観点から法務の価値を示し、法的リスクを戦略的意思決定に整合させること
- 単なるコンプライアンスにとどまらず、環境・社会目標への積極的な貢献が求められる時代におけるESGへの期待に対応すること
- コスト制約がある中で運営される多くの法務部門にとっての懸念である、増大する業務量と限られたリソースとのバランスを取ること
- 企業内法務チームに対して、「単なる法的リスクの軽減」以上を求める期待の高まり。つまり、戦略アドバイザーとして行動すること、事業部門とパートナーシップを組むこと、法務オペレーションを管理すること、コンプライアンス、サステナビリティ、ソーシャルライセンスなどを支援することなど
- 法的リスクとコンプライアンスの負担に影響を及ぼす、地政学的リスク、サプライチェーンの不安定化、貿易摩擦、経済環境の変化(インフレ、為替リスク、成長格差など)
- アジアにおけるクロスボーダービジネスの増加。これには、より多くの多国籍および地域的な事業展開、サプライチェーン、投資、合弁が含まれ、より多くの法域にまたがる法的問題が生じる
アジア太平洋地域における法務およびビジネス環境の発展は、APCCAが同地域におけるリーダーシップをさらに強化する絶好の機会を提供するものです。急速なデジタルトランスフォーメーション、サステナビリティへの関心の高まり、ますます複雑化する国境を越えた規制の下で、APCCAは知見の共有、ベストプラクティスの形成、企業内弁護士全体としての対応力向上のための重要なプラットフォームとなり得ます。
今後数年間で、APCCAは、法域と業界の橋渡となるトレーニング、ソートリーダーシップ、パートナーシップを通じて、その活動領域を拡大していくでしょう。イノベーションを受け入れ、連携と継続的学習の文化を育むことで、APCCAは企業内弁護士が変化に対応するだけでなく、誠実さと目的意識を持ってその変化を主導できるよう企業内弁護士に力を与え、この地域におけるビジネスと法の未来を形づくる上で、私たちのコミュニティが存在感や強靭性を持ち、影響力を保ち続けることを確かなものにできます。
ABLJ:引継ぎに当たり、アジア太平洋の企業内弁護士コミュニティにどのようなメッセージを残したいですか?
Lapuz-Ureta氏: APCCAの事務局長としての任期を終えるに当たり、この地域全体にわたる活力ある企業内弁護士コミュニティの皆様に深く感謝いたします。APCCAにおいて、各国の加盟する企業内弁護士組織に属する、才能にあふれ、原則を重んじ、先見性のあるプロフェッショナルの皆さんとともに活動できたことは光栄でした。皆様は今も私たち専門職の水準を継続的に高めています。
この数年を通じて、私たちは連携を強化し、ベストプラクティスを共有し、国境を越えて橋を架けてきました。それは共有された知識を影響力のある行動に変えるものでした。私たちは共に、アジア太平洋全域における企業内弁護士の実務において、高水準の専門性、倫理的なリーダーシップ、イノベーションを促進するという使命を推し進めてきました。私たちが共に成し遂げたことを誇りに思いますし、この成長するコミュニティの将来に広がる可能性に、大いに刺激を受けています。
APCCAのリーダー仲間の皆様には、示してくださった信頼、友情、揺るぎない献身に感謝いたします。次のリーダーシップに引き継ぐに当たり、APCCAが、誠実さ、洞察力、目的意識を持って企業内弁護士がリードできるよう力を与えるダイナミックなプラットフォームとして、今後も発展し続けることを確信しています。
私のグローバルな活動は、必然的にAPCCAやLMCPの取り組みを補完することになりました。世界各地の企業内弁護士との交流を重ねることで、企業内弁護士が直面する共通の課題についての洞察を得ることができました
























