インドネシアの仲裁制度は、仲裁及び裁判外紛争解決に関する法律 1999年第30号法によって規定されています。この法律は、国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)モデル法を採用していませんが、過去25年間にわたり、仲裁実務のための安定的かつ持続的な枠組みを提供してきました。この間に、仲裁はインドネシアにおける商事紛争解決の信頼できる手段へと発展してきました。

パートナー
SSEK
ジャカルタ
Tel: +62 21 2953 2000
Email: maharekshadillon@ssek.com
近年、仲裁関係者の間でインドネシア仲裁法の包括的な改革が依然として期待され続けている一方で、重要な改善も行われてきています。
最高裁判所規則 2023年第3号(以下、SC規則3/2023)は、国内および外国の仲裁判断の執行可能性を強化し、インドネシアの紛争解決分野における仲裁の重要性を強く示しました。憲法裁判所決定 2024年第100号は「国際仲裁判断」の意味を明確にし、国内での解釈を一致させて、長年の曖昧さを解消しました。これらの動きは、法的確実性を高め、投資家に安心感を与え、国際取引における仲裁の役割をさらに強固なものとしています。
制度面では、インドネシアには特定の分野に特化したさまざまな仲裁機関があります。最も著名な仲裁機関はインドネシア国家仲裁委員会(BANI)です。BANIは最近、新たな2025年仲裁規則および手続を導入しました。
近代化と課題
2025年は、インドネシアが東南アジアにおける仲裁を重視する法域としての地位を高めるための新たな節目となります。近年の司法や制度改革、そして裁判実務の変化は、仲裁を優先的な紛争解決手段として、より安定して受け入れる姿勢を示しています。これらの動きは国内外の利用者の信頼を徐々に高めています。
それでもなお、インドネシアが確立された地域仲裁拠点と肩を並べることを目指す取り組みは、いまだ道半ばにあります。その進展は、東南アジアの近隣法域における、より成熟した仲裁エコシステムと比較して評価されるべきです。
本稿では、2025年におけるインドネシアの仲裁制度の主な変更点、特に2025年1月に導入されたBANIの新たな2025年仲裁規則および手続きと、SC規則3/2023との関係性に焦点を当てて考察します。
2025年BANI規則
2025年BANI規則は2022年版を改訂し、同機関を国際基準にさらに近づけることを目指しています。新たなモデル仲裁条項が設けられ、利用者がBANIを紛争解決機関として指定する際の指針がより明確になりました。
BANIは、2025年1月2日以降に申し立てられた案件には新規則が適用されると示していますが、当事者が合意により従来の規則を選択できるか否かは課題として残ります。いかなる改革も同様に、規則の有効性は、最終的には新たな仕組みが実務でどのように運用されるかにかかっています。
緊急仲裁

パートナー
SSEK
ジャカルタ
Tel: +62 21 2953 2000
Email: nicomooduto@ssek.com
最も重要な革新は、緊急仲裁の導入です。この制度により、当事者は仲裁廷の設置前に緊急の暫定的救済を求めることができます。この規定は、主要な国際仲裁機関で既に確立されている実務に沿ったものです。
インドネシア仲裁法における緊急仲裁:インドネシアの仲裁法は、緊急仲裁手続を明示的に認めていません。同法は仲裁判断を最終的かつ拘束力のあるものと位置付けており、これは暫定的な性質を持つ緊急判断とは異なる独自の概念です。特に、SC規則3/2023が仲裁廷によって命じられた暫定措置の執行のみを規定していることから、その執行可能性は依然として明確ではありません。
2025年BANI規則における緊急仲裁:緊急仲裁により、仲裁廷が正式に設置される前に当事者が緊急の暫定的救済を求めることが可能になります。この制度は、仲裁廷の設置を待つことで回復不能な損害が生じる可能性がある場合に特に有用です。手続き上、BANIの会長は申立てを受理してから2日以内に緊急仲裁人を選任しなければなりません。仲裁人は14日以内に決定を下すことが求められ、必要であれば7日間の延長が認められています。この期間設定は、他の仲裁機関の規則に比べて柔軟なものになっています。
同規則では、緊急仲裁判断を「最終的かつ拘束力のあるもの」とし、地方裁判所への救済請求権の放棄も規定しています。これは執行力の強化を目的としていますが、この立場は、特定の状況下で仲裁判断の取消しを認める仲裁法第70条に照らして検討されるべきです。裁判所がこの放棄条項をどのように解釈するかは、依然として明確ではありません。
その後に設置される仲裁廷が緊急仲裁判断を修正または取り消すことができるかどうかについても、問題となる点があります。同様に、緊急仲裁人が付与できる救済の範囲や、通常の仲裁廷による保全命令の執行を明示的に規定しているSC規則3/2023の下での緊急仲裁判断の執行力についても、不明な点が残されています。
有用な比較対象として、2025年BANI規則第18条第5項が挙げられます。同条は、仲裁廷は保全命令、第三者への物品の預託、腐敗しやすい物品の売却などの暫定措置を命じる権限を有しています。緊急仲裁人が同等の権限を行使できるか、またそのような措置がインドネシアの裁判所でどのように認められるかは、依然として未解決の問題です。
同規則は緊急仲裁人に対する異議申立てを認めていますが、その申立てによって進行中の手続きが中断されるかどうかは明確には規定されていません。これに対し、他の仲裁機関の規則では異議申立て中の手続き停止が定められており、手続きの公正が確保されています。この点についてBANIからの指針が示されれば、より確実性が高まるでしょう。費用については、BANIは申立時に支払う一律2億ルピア(1万2000米ドル、VAT別)の手数料を設定しており、これは申立当事者が負担することが想定されています。
これらの不確実性はあるものの、緊急仲裁の導入は重要な近代化を表しており、BANIが国際的なベストプラクティスに合わせようとする意図を示しています。
仲裁手続きにおけるインドネシア弁護士の役割

アソシエイト
SSEK
ジャカルタ
Tel: +62 21 2953 2000
Email: raviamarendra@ssek.com
インドネシア独立記念日の精神に基づいて、2025年BANI規則は仲裁においても同様の精神に沿った大きな改革を反映させ、すべての手続きにおけるインドネシア弁護士の役割を拡大しています。従来は、インドネシア法が準拠法となる事件にのみ適用されていましたが、2025年規則では、準拠法を問わずすべてのBANI仲裁において地元弁護士の参加が義務化されました。
これによりインドネシアの実務家の役割が促進され、国内仲裁の能力の向上につながりますが、当事者自治の範囲が狭まる可能性があるという懸念も残ります。
多数当事者・多数契約
2025年BANI規則は、従来の裁量的な併合手続きに代わり、申立て段階で多数当事者・多数契約仲裁を開始できることを明文化しています。具体的には、当事者は以下の条件に該当する場合、仲裁申立てを提出することができます。
-
- 複数の当事者が関与し、当事者間に明確な関連性が認められる場合、
- 複数の契約に起因し、契約間に相互の関連性があり、すべてBANI仲裁を適用する旨が定められている場合。
この改革により、当事者は最初から多数当事者または多数契約仲裁を開始できるようになり、個別に申立てた後で併合を求める必要がなくなります。
しかしながら、2022年BANI規則の併合手続きが引き続き利用可能か否かは明確ではありません。2025年BANI規則には「併合」という用語がなく、その代わりにこのような手続きの開始のみが規定されています。これらの申立てがBANIの会長または事務局の裁量に委ねられるのか、申立て時に自動的に受理されるのかについては、さらなる明確化が必要となる可能性があります。
異議申立ての理由
2025年BANI規則は、BANIの会長の裁量により、仲裁人に対する新たな異議申立て理由を導入しました。これは法的権利に基づいて(de jure)または事実上の(de facto:権利の有無にかかわらず)職務不履行を理由として、申し立てることができるものです。この新たな規定により、仲裁人が職務を果たさない場合に異議申立てが可能となります。
結論
2025年BANI規則は、インドネシアの仲裁制度の近代化に向けた進展を示唆しています。緊急仲裁、多数当事者・多数契約仲裁、仲裁人の責任強化の導入により、BANIは国際基準に近づいています。
ただし、特に国内法の下での緊急仲裁判断の執行力や併合手続きに関しては、いくつかの疑問点が残されています。インドネシアの裁判所がSC規則3/2023の下でこれらの革新を認めるか否かが、その長期的な影響を決定づけるでしょう。
全体として、これらの改革はインドネシアがさらに仲裁に適した法域へと進化し続けていることを示しています。依然として確立された仲裁センターと比べて課題は残るものの、新たな規則は、インドネシア仲裁が紛争解決の有力な場として信頼性を高めるための前向きな一歩となっています。
SSEK LAW FIRM
Mayapada Tower I, 14th Floor
Jl. Jend. Sudirman Kav. 28
Jakarta 12920, Indonesia
Tel: +62 21 2953 2000
Fax: +62 21 521 2039
www.ssek.com





















