マレーシアの金融セクターのゆるやかな統合が進む

    By Pamela Kung ‧ Sathya-Kumardas / Shearn Delamore & Co
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    世界的な潮流と整合し、マレーシアの規制環境では、金融分野を含む各セクターの規制枠組みに環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を組み込む動きが一段と強まり、透明性、持続可能性、倫理的慣行への注目が高まっています。

    マレーシア国立銀行(BNM)

    Pamela Kung
    Pamela Kung
    パートナー
    Shearn Delamore & Co
    Kuala Lumpur
    Tel: +603 2027 2688
    Email: pamela@shearndelamore.com

    マレーシア中央銀行であるBNMは、金融機関が気候関連リスクを管理し、持続可能なファイナンス慣行を促進するための主要な政策枠組みおよびガイダンスを発表しました。主なものは以下の通りです。

      1. 気候リスク管理および概要分析に関する政策文書(CRMSA PD)。直近では2025年3月17日に最新版が公表され、ライセンス銀行、投資銀行、イスラム銀行(国内外)、指定開発金融機関、保険会社および再保険会社、タカフル事業者およびリタカフル事業者(シャリーア準拠のイスラム保険)、金融持株会社を含む金融機関を対象に、気候関連リスク管理と持続可能なファイナンスの運用への組込みを指導します。CRMSA PDでは、以下の6つの中核領域に沿って気候関連リスクを管理するための14の原則を定めています。
        • (a) ガバナンス:気候リスクの管理・理解および内部統制への統合。
        • (b) 戦略:事業戦略への気候リスクの組込み。
        • (c) リスクアペタイト:リスクアペタイトおよび資本評価への気候リスクの統合。
        • (d) リスク管理:全社的リスクフレームワークへの気候リスク組込み;気候リスク報告のためのデータ能力、ツール、方法論の継続的構築;リスクの総合的評価;重要かつ潜在的な気候リスクの監視・報告;気候リスクコントロールの実施および既存リスクへの影響評価;リスク管理システムおよびプロセスへの気候リスク考慮の確保。
        • (e) シナリオ分析:シナリオ分析による気候リスクのレジリエンス評価および効果的な分析手法の適用。
        • (f) 情報開示:信頼性の高い気候関連情報の開示。
    1. 気候変動と原則に基づく分類法 (CCPT)。CCPTは2021年にBNMが気候変動合同委員会と協働し、WWF(マレーシア・シンガポール事務所)の環境持続可能性に関する専門的助言を受けて策定したものです。CRMSA PDと同様、同じカテゴリの金融機関を対象とし、気候変動目標に合致する経済活動を特定・分類するためのフレームワークを提供します。また、CCPTは気候変動が金融システムに及ぼす潜在的リスクを示すとともに、低炭素・気候レジリエント経済への移行を支援する取り組みへ金融資源を再配分することを促しています。

    証券委員会(SC)

    SCはESG統合に向け、以下の主要施策を導入しています。

      1. 国家持続可能性報告フレームワーク(NSRF)。2024年9月24日に発表されたNSRFは、マレーシアにおけるサステナビリティ開示基準の向上を目的としています。段階的かつ発展的なアプローチで導入を進め、幅広い企業カテゴリによる開示の質の継続的改善と定着を図ります。国際サステナビリティ基準審議会が発行するIFRS S1「サステナビリティ関連財務情報開示の一般要件」とIFRS S2「気候関連開示」を、企業の最低限の開示基準と位置づけます。
      2. マレーシア資本市場のための原則に基づく持続可能な責任投資(SRI)分類法(SRI Taxonomy)。2022 年にマレーシア証券取引委員会(SC)によって発行された SRI 分類法は、マレー シアの資本市場とその構成員が、環境、社会、持続可能性の目的に沿った経済活動を特定する際の指針 となり、市場参加者が持続可能な投資として適格となり得る活動を特定する際の明確性と指針を提供します。

    SRI分類法は、環境目標に貢献する経済活動の分類において、最低基準値を満たすかどうかの定性的評価基準を提供する。経済活動は、SRI分類法の環境要素の下で、環境目標への貢献度に基づき、3つの大分類に分類されます。

    マレーシア証券取引所

    マレーシア証券取引所の運営主体であるブルサ・マレーシアは、2022年に「メイン・マーケットおよびエース・マーケットの上場規則強化策」を導入し、上場企業のサステナビリティ開示と実践の向上を図っています。

    この策は、上場企業に対して年次報告書内で気候変動関連情報の開示を義務づけています。

    さらに2024年12月23日には、 IFRS S1「持続可能性に関連する財務情報の開示に関する一般要求事項」とIFRS S2「気候変動に関連する開示」を上場発行体の持続可能性報告の基本基準として使用することを奨励する強化策を発表しました。

    ガバナンスと紛争

    Sathya Kumardas
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    Shearn Delamore & Co
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    Tel: +603 2027 2855/2027 2860 (direct); +60122221749
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    マレーシア金融セクターでは、環境・社会面のESG訴訟はまだ多くありませんが、ガバナンスに関する法的・規制上の注目度は高まっています。

    ここでいう「ガバナンス」とは、金融機関の規制における説明責任、透明性、コンプライアンスを指します。

    主な関連法令には以下があります。2016年マレーシア会社法、2013 年金融サービス法 (FSA)、2013年イスラム金融サービス法 (IFSA)、2009年マレーシア中央銀行法。これらは内部統制、取締役会の監督、開示義務、公正な顧客対応など、厳格なガバナンス要件を課しています。

    著名な訴訟分野のひとつは、守秘義務に関するものであrいます。FSA第133条(およびIFSAのそれに相当)に基づき、金融機関は顧客情報を保護しなければなりません。違反した場合、民事訴訟や規制措置がとられる可能性があります。Protasco Bhd v Tey Por Yee & Anor and another appeal [2021]において、連邦裁判所はこの義務の厳格なパラメー タを再確認し、限られた法令上の例外のみを認めました。

    繰り返し起こる別の問題は、ミスセリングと商品開示の失敗です。裁判所や規制当局は、金融機関が適切な適合性評価を行わなかったり、十分でないリスク開示を行ったりしたことについて、ますます厳しく追及するようになっています。

    これらの義務は、BNM の「金融消費者の公正な処遇に関する政策文書」や SC の「非上場資本市場商品の販売慣行に関するガイドライン」に明記されています。金融機関は、その商材が意図する投資家に適しており、明確に説明されていることを保証しなければなりません。

    金融サービスの複雑化に伴い、裁判外紛争解決への需要も高まっています。証券取引委員会が設立した証券業界紛争解決センター(SIDREC)(現在は金融市場オンブズマン・サービスとして知られ、BNMと証券取引委員会の共同管轄下で運営)は、重要な役割を果たしてきました。

    2011~2024年には3900件超の申し立てを扱い、うち700件超が正式紛争として受理されています。2024年は半数がケースマネジメントや調停で解決し、効率的かつ低コストの解決手段としての有用性を示しました。

    並行して、オンラインバンキング詐欺の増加に伴い、銀行が負うQuincecare義務(顧客資金を不正引き出しから保護するコモンロー上の責任)の適用範囲が法廷で争われています。

    ガバナンス関連の訴訟は、BNMの反マネーロンダリング、テロ資金供与対策、拡散資金対策、金融機関に対する標的型金融制裁に関する政策文書の遵守も包含しています。KYC手続きや金融犯罪報告における失敗は、強制執行や風評被害を引き起こす可能性があり、効果的なガバナンスの重要性を浮き彫りにしています。

    要点

    ESGの要因がマレーシア金融セクターで重要度を増していく中、政策の導入から実効性ある実装、定量的なインパクト、説明責任へと焦点が移りつつあります。

    規制当局の期待は高まり、特にガバナンスについての訴訟が増加傾向にあるため、金融機関は監視のさらなる強化やステークホルダーからの要求の高まり、サステナビリティと法令遵守の収斂に備える必要があります。

    今後は、強靱性(レジリエンス)、透明性、倫理的基盤を備えた組織づくりが鍵となり、ESGを単なる規制義務ではなく戦略的な経営の必須事項として捉えることが求められます。

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