台湾のAI戦略と規制の枠組み

    By Ken-Ying Tseng/Lee and Li
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    台湾政府は、AI産業を支援するために先を見据えた積極的なアプローチを採用し、政策措置とそれに対応する法的枠組みを通じて産業発展を促進してきました。2024年後半、国家科学技術委員会(NSTC)はAI基本法草案を発表、草案は2025年初頭に、行政院(台湾の内閣)に審議のために提出されました。

    並行して、台湾はAIを悪用した詐欺、ディープフェイク活動、選挙操作に対処するために関連法を改正しました。政府はまたデータガバナンスおよびオープンデータに関して新たに法整備を行い、AIのデータ駆動型という特性に対応していく計画を立てています。

    AIに関する政府の政策

    Ken Ying Tseng
    Ken-Ying Tseng
    パートナー
    Lee and Li
    台北
    Tel: +886 2 2763 8000 ext. 2179
    Email: kenying@leeandli.com

    台湾政府は、AI研究と応用の広範囲にわたる成長を促進するため、専門的なAIチップ、AIハードウェア、大規模言語モデルの開発を積極的に支援しています。一方で、製造業、金融、医療、農業、小売業などの分野においてデジタルトランスフォーメーションを推進するためAIへの統合を奨励しています。具体的な施策は以下の通りです。

      1. 教育と人材育成:教育部は、義務教育段階でのAIリテラシー向上を目的とした「AIと友だちになる(Befriended with AI)」教育プログラムを立ち上げました。大学と産業界のパートナーが協力し、専門的なAI人材と学際的な人材を育成し、全体的な研究開発能力の向上を図っています。
      2. AIチップ技術と垂直統合型アプリケーションの開発:台湾の半導体およびICTハードウェア分野での競争優位性を活かして、台湾AIチップ連盟は最先端のAIチップ技術の開発と産業特化型アプリケーションの開発を支援しています。
      3. AIコンピューティングおよびローカライズされた大規模言語モデルの開発:国家高速ネットワーク・情報処理センターは民間セクターと協力して、AI専用スーパーコンピューター「TAIWANIA 2」を開発しました。
      4. このスーパーコンピューター「TAIWANIA 2」を使用して、国家実験研究院は台湾のデータに特化した大規模ローカライズ言語モデル「TAIDE」を立ち上げました。TAIDEは、公開データ(司法院による、判決、憲法裁判所の解釈、その他の裁判所の決定など)を使用して、従来の中国語モデルの精度向上を図っています。このモデルは台湾語や客家語などの言語をサポートし、農業、教育、自動化産業へのAI統合を目指しています。
      5. AI製品とシステムの評価:デジタル発展省(MODA)は、国家資通安全研究院と工業技術研究院と協力して人工知能評価センターを設立しました。

    同センターは、AI製品の認証の仕組みとガイドラインを確立し、より安全で解釈可能なAIアプリケーションを保証するシステムを構築します。

    AIの課題に対する法的対応

    AIテクノロジーの急速な進歩に比べ、法的課題は追い付いていません。立法院は、AIやディープフェイク技術が、詐欺や選挙操作の目的で悪用されるケースに優先的に取り組んでいます。一方、MODA(デジタル発展省)はデータガバナンスの法的枠組みの起草、改訂を進めています。NSTC(国家科学技術委員会)によるAI基本法草案は、各省庁間の協力とAIについての統一された規制の基盤を築くことを目的としています。これらの取り組みは、以下の3つの主要な領域で進められています。

      1. 詐欺の防止とディープフェイクの規制/AIは虚偽情報の拡散や詐欺行為の手段として悪用される可能性があります。これらのリスクに対処するため、政府はAIを活用してAI詐欺に対抗する戦略を採用しました。国家資通安全研究院は、ボットアカウントや疑わしい広告を検出するAIアルゴリズムを使用して、迅速なブロックと削除を図っています。

    ディープフェイクやその他の人工生成テクノロジーが選挙の公正性を損なったり、マネーロンダリングや詐欺を助長したりする可能性があることを認識して、刑法、詐欺犯罪危害防止条例、公職人員選挙罷免法、総統副総統選挙罷免法、マネーロンダリング防止法(洗錢防制法)に関連する改正が行われてきました。これらの改正は、虚偽情報の拡散や、ディープフェイク技術を使用した犯罪に対して刑事責任を定めています。また、これらの技術が使用された場合、オンライン広告プラットフォームに対してその事例の開示を義務付けています。

      1. データガバナンスと活用オープン政府データ:高品質なトレーニングデータセットは、AIの研究開発に不可欠です。MODA(デジタル発展省)は、公式記録(例えば政府の文書アーカイブや各種公共データ)へのアクセスを拡大し、TAIDEのような大規模言語モデルのために数万のデータセットを統合することを目指しています。

    データイノベーションに関する新たな立法:MODA(デジタル発展省)は「データイノベーションおよび利用促進法(Act for the Promotion of Data Innovation and Utilisation)」を起草しており、オープンデータへのアクセスを増やし、低コストまたは無償で共有データを提供して、信頼性の高い高品質なデータ交換を促進する産業横断的なデータ共有の仕組みを確立することを目指しています。

    データ利用リスクの軽減:データの利用は、著作権法、個人情報保護法、その他の関連規制の対象となります。智慧財産局はAIの利用に関する判断を示し、ロゴ画像の著作権者の同意または許可なしに、AI技術を用いて生成物を作成することは、他者の著作物の複製とみなされる可能性があるとしています。その結果、行政院の副院長は、より柔軟なデータガバナンスの枠組みを構築するために、関連する全ての省庁や機関を対象とした規制の再検討を指揮しています。

    並行して、大幅に更新された規定が盛り込まれた個人情報保護法の改正案が公表される予定であり、個人情報保護委員会準備室が設立され、「データはデジタル経済の新たな石油」という時代における個人情報保護の強化を図っています。

      1. 人工知能に関する基本法草案:AIテクノロジーが人権、プライバシー、産業競争力、公共の利益と適合するようにするため、NSTC(国家科学技術委員会)は2024年にAI基本法草案を策定、この草案は2025年に審査のため行政院に提出されました。行政院はこれを立法院に送付し、可決される見込みです。草案の主な要素は以下の通りです。

    AIの定義および範囲:AIの定義は規制の範囲を定めるために極めて重要です。本草案では、基本的な知識ベースのアルゴリズムから高度なニューラルネットワークに至るまで、AIの技法や手法を幅広く網羅する内容となっています。

    AIの指針原則:本草案は、持続可能性、人間の自律性、プライバシー、データガバナンス、セキュリティ、透明性、説明可能性、公平性、説明責任を含む、AIの研究開発の指導原則を定めています。これらはOECD、G7、欧州AI規制法などの国際的な枠組みを反映しています。特に本草案は、非機密データの促進と利用の必要性を強調しています。

    リスクベースの管理:MODA(デジタル発展省)は国際基準に基づいてAIリスクを分類する権限を与えられ、各分野の規制当局がこれを執行します。この規定は、児童福祉、消費者保護、労働市場、データプライバシーへ影響を及ぼす可能性を重視しつつ、安全基準の維持を前提にAIのイノベーションを促進することを目的としています。

    データプライバシーとオープン性:個人データを保護しつつ、AIモデルが適切で高品質な非機密データを利用できるようにするためには、データのオープン性とガバナンスを義務付けることが必要です。

    柔軟な立法と省庁間の横断的な連携:各省庁および機関は、AIの急速な技術進化への対応を確かなものにするため、規制の枠組みを見直して行政院に報告する義務があります。例えば、労働部はAIが労働力に与える影響に焦点を当てた職業訓練プログラムを実施するかもしれませんし、一方、環境部はAIの多大なエネルギー消費と環境の持続可能性とのバランスを取るために、他の機関と協力する必要があるかもしれません。

    結論

    台湾は、先進的で堅牢なICTおよび半導体産業、ならびにサーバー製造における専門性により、世界のAI分野において重要な役割を担っています。これらの成果は、台湾の産業のレジリエンスと技術的な奥行きを示すとともに、AI人材の育成や産業分野のイノベーションの促進からAI関連法の整備に至るまで、政府の政策立案による効果を際立たせています。台湾は、AIをめぐる包括的な政策および法的枠組みの構築を精力的に進め、AI時代への前進に向けて取り組む決意とその実効性を明確に示しています。

    Lee and LiLEE AND LI, ATTORNEYS-AT-LAW
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