インドネシアにおけるM&A:電力、鉱業、ヘルスケア

    By Eva Djauhari・Bondan Nugroho・Peiyun Deng/DeHeng ARKO
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    インドネシアの国内外の資本に対する需要は、衰える兆しが見られません。筆者が2025年の記事「インドネシアにおけるM&A:リスクとメリット、そしてロードマップ」で詳述したとおり、インドネシアは東南アジアで最もダイナミックな経済国の一つであり、そこで持続的な商業的プレゼンスの確立を目指す投資家にとって、M&Aは依然として好ましい選択肢です。

    その勢いを引き続き支えているのは、電力、鉱業、ヘルスケアの3つのセクターです。インドネシアの電力セクターは、同国が有する膨大で未開発の再生可能エネルギー資源を背景に、一層魅力的な投資対象となっています。一方、鉱業は依然としてインドネシア経済の基盤であり、豊富な天然資源に加えて積極的な下流産業化の推進により、投資家に長期にわたる価値創出の機会を提供しています。ヘルスケア・セクターもまた、インドネシアの大規模な人口と、全国民を対象とする国民皆保険制度の導入に支えられ、急速な成長を遂げています。

    もっとも、これらのセクターはいずれも、取引がそもそも成立するかどうかを左右し得る、厳格に設計された規制枠組みの下で運営されています。本稿では、それぞれのセクターにおけるM&Aの主要な「交通ルール」を整理し、投資家が契約締結前に従うべき実務上のロードマップを示します。

    PLNの規則に基づいた再生可能エネルギーIPPの買収

    Eva Djauhari
    Eva Djauhari
    シニア・パートナー
    DeHeng ARKO
    ジャカルタ
    Tel: +62 21 2911 0015
    Email: eva.armila@armilarako.com

    インドネシア国営電力会社であるPerusahaan Listrik Negara(PLN)は同国の電力セクターの中核に位置し、全国の電力の発電、送電、配電を使命としています。独立系発電事業者(IPP)の多くは、電力購入契約(PPA)に基づいてPLNと直接契約することで市場に参入します。これらIPPのうち再生可能エネルギー案件が占める割合は増加しており、これは政府のエネルギー移行目標に向けたPLNの取り組みを反映したものです。その結果、IPPの買収は、拡大を続けるインドネシアの再生可能エネルギー市場へ参入するために、さらに魅力的な手段になっています。

    しかし、インドネシアの電力セクターは依然として厳格に管理されています。現行法の下では、IPPは商業運転開始日(COD)を迎える前に株式を譲渡することが禁止されています。ただし例外が一つあり、プロジェクトのスポンサーまたは譲渡株主が90%以上を所有する関係会社への譲渡で、かつPLNの承認を得た場合です。

    その理由は明快です。PLNは技術力や財務力に関して審査済みのスポンサーにプロジェクトを付与しているため、COD前の所有者変更は、同等の実績を持たない当事者を招き入れるリスクを伴います。

    COD後はルールが大幅に緩和されます。株式は、PLNの承認を条件として、関連会社以外の買主へ譲渡することが可能となり、その後、該当する場合には電力総局または新エネルギー・再生可能エネルギー・省エネルギー総局に対して届出を行います。

    COD前か否かが取引規則を左右する

    IPPの買収を検討している投資家は、何らかの契約に署名する前に、対象会社がライフサイクル上どこにあるのか、すなわちCOD前かCOD後かを、まず正確に特定すべきです。この一点が、適用される規則を決定するからです。その後は、プロジェクトのオフテイカーであるPLNが取引を厳格に精査することを、想定しておく必要があります。

    実務上、PLNは通常、買主側に対し、売主の立場を引き継いでPPA上の義務を確実に履行できることを証明するため、財務面と技術面の裏付け情報を示すよう求めます。

    もっとも、PLNの承認は問題の半分にすぎません。支配権の変更が融資契約書に明記された同意要件を発動させる可能性があるため、資金調達の条件にも同程度の注意が必要です。インドネシアの貸し手は通常、スポンサーの財務基盤や技術的専門性を前提にIPPを与信判断するため、貸し手側も、買主となる株主がプロジェクトのバンカビリティを維持できるという確証を求めます。

    これを誤ると、深刻な結果を招きます。無承認の支配権変更は、ファイナンス関連書類上のデフォルト事由に該当し得ます。その結果、貸し手が、ステップイン権の行使や担保権の実行など、契約上の救済手段を行使できる余地が生じます。

    鉱業・エネルギー分野のM&A承認

    Bondan Nugroho
    Bondan Nugroho
    アソシエイト
    DeHeng ARKO
    ジャカルタ
    Tel: +62 21 2911 0015
    Email: bondan.nugroho@armilarako.com

    特定の未加工鉱物に対する輸出規制が、インドネシアの鉱業セクターにおけるM&Aを減速させることはありません。むしろその逆です。ニッケル、ボーキサイト、コバルト資産は、EV用電池に対する世界的な需要と、統合型EV電池エコシステムを構築しようとする政府の野心に後押しされ、とりわけ高い需要があります。

    この需要の高まりにより、規制上の手続きを正確に進めることの重要性が一層高まっています。鉱業会社の株式譲渡には、まずエネルギー・鉱物資源省(MEMR)の承認が必要です。これは、支配権の変更によって会社の規制上の義務が損なわれることのないようにするためのチェック機能です。

    ここでもタイミングは重要です。一般に、探鉱段階にある鉱業会社は株式譲渡を行うことができないため、対象会社の操業段階を特定することは、初期段階で不可欠なステップとなります。それによって、取引が望ましいかどうか以前に、そもそも実現可能かどうかさえも決まることがあります。

    探鉱段階というハードルをクリアすることは、第一歩にすぎません。MEMRの承認には、売買契約書の草案、非税歳入および/またはロイヤルティの支払証明、最終探鉱報告書、鉱量に関するデータなど、行政面、財務面、技術面の資料一式の提出も求められます。

    外国投資家にはさらにもう一つ課題があります。鉱業会社における外資比率が50%を超えると、インドネシアの強制的なダイベストメント制度が適用されます。したがって、外国株主は、生産開始後に持分を段階的に国内の当事者へ売却し、最終的に外資比率49%にまで下げなければなりません。

    鉱業のダイベストメント上限が買収を左右する

    特に外国投資家にとって、生産稼働中の鉱業会社で過半数株式を伴う買収を検討する場合、ダイベストメント制度は最初に考慮すべき変数となります。実務上、対象会社が外国投資家の参入前にすでに数年間にわたって生産をしている場合、MEMRは当初から外資比率を49%に上限設定する傾向があり、後から、より高い比率を交渉できる余地はほとんどありません。

    もっとも、外国資本が鉱業M&Aから締め出されたわけではありません。投資家は、インドネシアの外国資本規制の枠内に収めつつ、実質的な商業的メリットを確保できるよう、慎重に設計された取引やジョイントベンチャーを通じて参入を続けています。

    鉱業は引き続き注視されるセクターであるため、初期段階でのデューデリジェンスは不可欠です。投資家はまず、対象会社が環境関連義務を適切に履行しているか、強固な労働安全衛生体制を維持しているか、周辺地域のコミュニティと良好な関係を構築しているか、政府に対する法定の支払いが最新の状態であるかを確認すべきです。

    製薬M&Aにおける所有権とライセンス

    Peiyun Deng
    Peiyun Deng
    外国カウンセル
    DeHeng ARKO
    ジャカルタ
    Tel: +62 21 2911 0015
    Email: dengpy@dehenglaw.com

    インドネシアは東南アジア最大の医薬品市場を擁していることから、M&Aは、この分野で確固たる商業的地位を確立しようとする投資家にとって、一貫して人気のあるルートです。ポジティブ投資リストの下では、医薬品と医療機器の流通はいずれも外資による100%所有が認められています。

    しかし、市場への参入は話の半分にすぎません。医薬品と医療製品には、流通許可やインドネシア食品医薬品監督庁による承認など、広範なライセンスや登録要件が適用されます。さらに、インドネシアが国産化率(Tingkat Komponen Dalam Negeri)要件をより一層重視していることから、輸入資材の使用や、生産面での輸入依存は制限されています。

    医薬品については、国産化率の算定において、例えば、国内調達の原材料の使用に50%の比重が、国内で実施される研究開発活動に30%の比重が、それぞれ付与されるのが一般的です。これに対し、医療機器については、国産化率の算定において、製造活動に80%の比重が、国内で実施される製品開発活動に20%の比重が、それぞれ割り当てられるのが一般的です。

    投資家に求められる規制対応力

    投資家にとっての出発点は、市場への参入ではなく、規制への対応力です。投資家はまず、保健省とインドネシア食品医薬品監督庁が課す、進化を続ける規制要件を遵守しながら事業を維持する運用能力を有しているかどうかを判断すべきです。

    国産化率制度の遵守についても、同様に細心の注意を払う必要があります。政府のローカライゼーションの方針は、国内製造、現地調達、技術移転をさらに重視する傾向にあります。

    したがって、投資家は、自社の製造、研究開発、調達活動が、適用される国産化率の閾値を満たすよう、国内のサプライチェーンや事業展開を慎重に構築しなければなりません。これを怠ると、関連する事業許可の有効性が損なわれ、事業活動の停止、さらには関連許可の取消しなど、規制上の制裁を受ける可能性があります。

    規制の複雑性が守るM&Aの好機

    電力、鉱業、ヘルスケアは、参入が容易なセクターではありません。これらは複数の規制当局の厳格な監視下に置かれており、標準的な株式譲渡をはるかに超える水準のデューデリジェンスが求められます。しかし、その複雑性こそが、まさに機会が失われずにいる要因です。安易な参入者を排除し、下準備をいとわない投資家にとって魅力的なリターンを維持しています。

    インドネシアがEVやバッテリー製造の世界的拠点を目指すという野心と、同国のライフサイエンス分野の急速な拡大は、M&A活動が継続し、おそらく加速していくことを示しています。規制という複雑な地形を乗り越える準備ができている投資家にとって、それは稀有な機会となります。すなわち、世界で最も資源が豊富で、最も急速な成長をみせる経済国の一つで、その一角を占める機会となるのです。

    DEHENG ARKO
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