日本は長年にわたって、クロスボーダー取引のアジアで最も重要な市場の一つであり、多額の外国投資を呼び込み、対外貿易・投資の拠点としての役割を果たしてきました。円安を背景に、インバウンドM&Aの活動は引き続き堅調で、輸出量も増加を続けています。
クロスボーダー取引の増加に伴い、外国投資家は日本の規制の枠組みを慎重に検討する必要があります。本稿では、特に外国為替及び外国貿易法(以下、外為法)と独占禁止法に焦点を当て、主要な法的留意点を概説します。
対内直接投資

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外為法においては、日本企業に対して対内直接投資を行う「外国投資家」は、一般に事後報告の対象となります。こうした投資には、非上場会社の株式取得、上場会社の株式または議決権の1%以上の取得、ならびに日本企業からの事業資産の取得などが含まれます。
国家安全保障上の懸念がある場合、特定の限定的な例外を除いて、事前届出が必要となります。これが必要となる場合は、法定の待機期間中に取引を完了させることはできないため、取引のタイムラインにおいてはこれを考慮する必要があります。
- 事前届出:
- 指定業種:重要な点は、対象企業が「指定業種」に属する事業を行っているかどうかです。これらの業種は省令で定められており、半導体およびその関連装置など、国家安全保障およびサプライチェーンの強靭性に関連する事業などが含まれます。
- 1. 対象企業が指定業種に該当するかどうかは、定款上の事業目的ではなく、実際の事業活動によって判断されます。
- 2. 対象企業自体が指定業種を行っていない場合でも、その子会社が指定業種に属する事業を行っている場合には、外国投資家は事前届出を行うことが求められる場合があります。
- 罰則:必要な事前届出を怠った場合、または虚偽の情報を提出した場合は、取得した株式の売却命令などの是正措置が科されることがあります。
- 待機期間および手続:財務大臣および指定業種を所管する大臣が事前届出を受理すると、原則として30日間の待機期間が適用されます。追加審査が必要と判断される場合、この期間は短縮または延長(合計で最長5カ月まで)されることがあります。実務においては、この期間はしばしば短縮されます。
- 1. 事前届出が必要な場合、取引完了後45日以内に、財務大臣および指定業種を所管する大臣に対して、事後報告も提出する必要があります。
- 事前届出免除:一般に、外為法は、(i) 外国投資家が適格であり、かつ (ii) 対象企業の事業がコア業種に該当しない場合には、特定の外国投資家は事前届出なしで投資を行うことを認めています(ただし、後述する免除条件により免除が適用される場合があります)。
- 1. 不適格な外国投資家:外国の法令等に基づいて、日本の国家安全保障上重要とされる情報の開示によって外国政府に協力する義務を負う外国投資家は、対内直接投資を行う際の免除制度を利用することはできなくなりました。
- 2. コア業種への投資:武器製造およびサイバーセキュリティに関して特に機微性が高い「コア業種」への投資については、一般に事前届出が必要であり、免除は限定的です。
- 3. 免除基準:投資がその他の要件を満たしている場合でも、外国投資家は事前届出の免除を受けるために、特定の基準を満たす必要があります。
- 4. 免除には2種類あります。(i) 上場会社に対する外国金融機関による投資に関する包括免除、および (ii) より幅広い投資家が利用可能な一般免除です。
- 5. コア業種以外の一般免除については、一般の基準を満たしていれば通常、利用することができます。満たさない場合には、上場会社の株式または議決権の1%以上の取得、ならびに非上場会社の株式取得などについては事前届出が必要となります。
- 6.コア業種については、一般免除はより限定的で、上場会社の株式を1%以上10%未満取得する場合にのみ利用することができ、かつ一般の基準および上乗せ基準の双方が満たされる場合に限られます。
- 7.一般の基準には、株主総会において指定業種の事業の譲渡または廃止を提案しないこと、ならびに当該事業に関する非公開の技術情報へアクセスしないことなどが含まれます。上乗せ基準には、コア業種に関する取締役会へ参加しないことが含まれます。
- 指定業種:重要な点は、対象企業が「指定業種」に属する事業を行っているかどうかです。これらの業種は省令で定められており、半導体およびその関連装置など、国家安全保障およびサプライチェーンの強靭性に関連する事業などが含まれます。
- 事後報告:事前届出が不要な場合でも、法定の除外規定が適用されない限り、事後報告が必要となる場合があります。報告は、取引後45日以内に提出する必要があります。
- 事前届出および事後報告双方の免除:法定の基準未満の取得、または特定の状況下での合併など、一定の取引は、事前届出および事後報告の双方が免除される場合があります。
- M&Aにおける実務上の影響:外為法の分析は、クロスボーダーM&Aにおける重要なデューデリジェンス項目です。事前届出が必要な場合、財務大臣および指定業種を所管する大臣が届出を受理してから30日間は、取引を完了させることはできません。したがって、取引のタイムラインはこの法定の待機期間を考慮して構築される必要があり、事前届出が必要かどうかの判断は重大な論点となります。
そのため、投資家が外国投資家に該当するかどうか、また対象事業が指定業種に該当するかどうかを評価するために、慎重なデューデリジェンスが不可欠です。加えて、当事者は通常、株式譲渡契約や投資契約において、必要な外為法の手続の完了を条件とするクロージング条件を盛り込みます。
企業結合規制

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日本の独占禁止法は、外国企業が関与する場合でも、日本市場における競争を実質的に制限するおそれのある企業結合に適用されます。
国内売上高に基づく法定基準を満たす株式取得、合併、その他の企業結合については、事前届出が必要になります。
具体的には、取得者グループの国内売上高の合計額が200億円(1億2670万米ドル)を超え、かつ対象会社グループの国内売上高の合計額が50億円を超える場合、一般に届出が必要です。原則として、取得者グループは、公正取引委員会が届出を受理してから30日間は、当該取引を完了させることはできません。
届出義務が生じない場合でも、公正取引委員会は、外国企業と日本企業間の企業結合だけでなく、外国企業間の取引についても、その取引が日本市場における競争を実質的に制限するおそれのある場合には、審査を行うことがあります。懸念がある場合、公正取引委員会は、その懸念を解消するための是正措置を条件に、取引を承認することがあります。
アウトバウンド:輸出管理
外為法の下では、貨物の輸出および技術の提供について、経済産業大臣による事前許可が必要となる場合があります。
日本の輸出管理制度は、主に以下の要素で構成されています。
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- リスト規制:輸出貿易管理令および外国為替令に掲載されている貨物および技術を対象とする
- キャッチオール規制:リストに掲載されていない品目であっても、大量破壊兵器または通常兵器の開発に使用されるおそれのある場合には、許可が必要となることがある
さらに、国際条約および制裁制度の遵守を確保するため、特定の輸出については承認が必要となります。
決済の実行および受領:日本の居住者と非居住者間のクロスボーダー決済は、外為法の下で報告義務の対象となる場合があります。
実務上、決済が金融機関を通じて行われる場合、報告は通常、当該金融機関によって処理され、企業はコンプライアンスを確保するために取引銀行と連携をとります。
対外直接投資
対外直接投資とは、日本の居住者(日本に主たる事務所を置く法人を含む)による資本取引であって、外国企業の株式の10%以上の取得など、外国の事業体に対して永続的な持分を確立または維持することを目的としたものをいいます。
原則として、対外直接投資は事後報告の対象となります。ただし、特定の重要分野(漁業、皮革、武器、麻薬関連事業など)では、事前届出が必要となる場合があります。
事前届出の対象となる対外直接投資の原則的な待機期間は20日です(対内直接投資の場合は30日)。
特定の基準額未満の取得など、一定の小規模取引は報告が免除される場合があります。例えば、日本企業がすでに持分の10%以上を保有している外国会社の株式を取得する場合でも、取引価額が10億円未満であれば免除されることがあります。
結論
クロスボーダーM&Aおよび国際取引が拡大し続ける中、外為法および独占禁止法の遵守は、日本に関連する投資家にとって引き続き重要な検討事項です。
2020年の重要な改正以降、規制枠組みは地政学的な動向の変化に伴って進化を続けており、今後もさらなる規制の発展が見込まれます。
本稿では、クロスボーダー取引に関する主要な規制枠組みの一般的な概略を示しました。
実務においては、データ保護法、税法、労働法を含む他の法的検討事項も関連する可能性があります。したがって、日本が関与するクロスボーダー取引を円滑に遂行するためには、早期の法的評価と慎重なデューデリジェンスが不可欠です。
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