高度化する法律:フィリピンのeスポーツにおける法的発展

    By Ma Carla P Mapalo、Amber Shawn A GagajenaそしてMacario B Duguiang Jr、V&A Law
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    電子スポーツ、つまりeスポーツは、かつてはニッチな娯楽に過ぎませんでしたが、現在では世界的に認知された職業となり、商業ベースの産業へと進化を遂げました。フィリピンでは特にこの変化が顕著であり、数百万人におよぶプレイヤー、ファン、投資家が、この急速に拡大するデジタル・エコシステムに貢献しています。

    現在、フィリピンのeスポーツ市場には1650万人以上のアクティブなゲーマーが存在し、市場収益は2770万米ドルと推計されています。この成長は、電子ゲームをより便利で幅広い層の参加を可能にしている、手頃な価格のスマートフォンやモバイル・インターネットの普及によって大きく促進されています。

    しかしながら、政府がその発展に前向きな姿勢を示している一方で、法的および規制の枠組みは依然として限定的かつ断片的なものにとどまっています。本稿では、フィリピンでのeスポーツを規律する現行の規制の枠組み、直面する課題、この成長分野におけるガバナンス強化のために提案されている立法措置について概説していきます。

    現行の規制の枠組み

    Ma Carla P Mapalo
    Ma Carla P Mapalo
    パートナー
    V&A Law
    マニラ
    Tel: +632 8988 6088
    Email: mp.mapalo@thefirmva.com

    フィリピンでプロスポーツを規制する主要機関は、ゲーム・アミューズメント委員会(以下、GAB)です。2017年、GABはeスポーツを、その監督・規制の対象となるプロフェッショナル活動であると正式に認定しました。この認定は、GAB決議第2017-21号「フィリピンにおける電子スポーツの実施に関するガイドライン」によって実施され、その後、GAB決議第2018-15号「フィリピンにおけるプロフェッショナルな電子スポーツに関する改正規則」(以下、eスポーツ規則)により改正されました。

    eスポーツ規則の下では、プロフェッショナルなeスポーツの実施または運営に関わるすべての個人または法人は、そのような活動に参加する前に、GABからライセンスを取得しなければなりません。このライセンスの要件は、プロモーターや主催者、チームマネージャー、コーチ、アナリスト、キャスター、警備担当、連絡担当、医務担当など、多様な役割に及びます。

    プロフェッショナルなeスポーツ・イベントを開催する前に、プロモーターは競技の少なくとも10日前までにGABから許可を得る必要があります。プロモーターはさらにイベント中の平和と秩序を維持し、関連法令および規則の遵守を確保し、八百長や不正行為を防止し、大会の公正性を損なう恐れのある違反行為を報告する責務を負います。

    GABの枠組みはライセンスおよび監督のための基本的な仕組みを提供していますが、現時点ではeスポーツを統制する唯一の正式な規制となっています。これは主に行政上および運営上のコンプライアンスを扱っており、eスポーツ産業全体に関わる、より広範な問題は対象としていません。

    懸案事項と課題

    Amber Shawn A Gagajena
    Amber Shawn A Gagajena
    シニア・アソシエイト
    V&A Law
    マニラ
    Tel: +632 8988 6088
    Email: aa.gagajena@thefirmva.com

    eスポーツが正当なプロフェッショナル活動として広く受け入れられつつあるにもかかわらず、いくつかの規制上および制度上の問題が、依然として業界の本格的な発展を阻んでいます。

    規制の曖昧さと管轄の重複:eスポーツについて包括的な法的枠組みを提供する単一の法律や機関は存在しません。GABはその決議に基づいてプロフェッショナルeスポーツに対して権限を行使していますが、フィリピン娯楽賭博公社(以下、PAGCOR)やフィリピン・スポーツ委員会(PSC)など、他の政府機関も関連性はあるものの異なる権限を有しています。

    このような管轄の重複は、どの機関の規則が適用されるのか、関係者の間にしばしば混乱を生じさせています。たとえば、PAGCORの権限の下では、電子ゲームとは、電子ゲームプラットフォームを通じて提供される賭博性のあるゲーム(games of chance)を指し、スポーツ賭博、電子ビンゴ、オンラインポーカー、その他のカジノ型ゲームなどが含まれます。

    しかし、スポンサーシップ、広告、オンライン配信などを通じたeスポーツの商業化が進展する中、オンラインゲームの収益化の特定の形態が、PAGCORの管轄内に含まれるのかどうか、という疑問が生じています。

    断片的な基準およびコンプライアンス要件:既存の規制がGABの行政決議に限定されているため、イベント運営、プレイヤー登録、契約上の取り決めに関する統一された基準は現在、存在しません。大会主催者、スポンサー、チームは、標準化されたベストプラクティスや紛争解決の仕組みが整備されていない中、私的な契約に依存することが多いのが現状です。この断片化された規制により、イベントごとに一貫性のないコンプライアンス要件や監督基準がもたらされています。

    統一された規則の欠如により、小規模な主催者や地方大会はGABの監督がおよばない状況で運営される可能性があり、参加者が不公正な取り扱い、賞金の未払い、健康や安全面の保護措置を欠いた状態に置かれる恐れがあります。

    正式な定義の欠如:これにより、eスポーツをオンライン賭博と区別することが難しくなっています。両者はデジタル環境で行われ、金銭取引を伴う場合もありますが、法的にも概念的にも異なるものです。eスポーツは本質的にスキル、戦略、パフォーマンスを競う競技であるのに対し、賭博は主に運に左右される結果に賭ける行為です。

    しかし、観客が大会の結果に賭けることができるeスポーツベッティング・プラットフォームが台頭しており、一般の理解や規制上の分類が複雑化しています。明確な法的基準がないままでは、eスポーツは賭博と混同されるリスクがあり、正当な競技や参加者が、ゲーミング事業者に適用されるのと同様のライセンスおよび課税制度の対象となる恐れがあります。

    インフラの制約:フィリピンはモバイル・ファーストのeスポーツ市場とみなされていますが、信頼性の高い高速インターネット接続へのアクセスが地域によって均一ではなく、同産業の発展を依然として妨げる要因となっています。マニラ首都圏以外の多くの地域では、大規模な大会を開催したり、高性能なゲーム環境を支えたりするための必要なインフラが整っていません。

    立法の動向

    Macario B Duguiang Jr
    Macario B Duguiang Jr
    ジュニア・アソシエイト
    V&A Law
    マニラ
    Tel: +632 8988 6088
    Email: mb.duguiang@thefirmva.com

    上記のような問題や課題を認識しつつ、上下両院の議員たちは、同業界のための規制や政策の枠組みを制度化することを目的に、いくつかの法案を提出しています。

    下院法案第05401号および下院法案第03751号 ―「eスポーツ法」:第19回議会の下院法案第05401号および第20回議会の下院法案第03751号は、いずれも「eスポーツ法」という名称で「eスポーツ」の定義を示し、フィリピンeスポーツ委員会(Philippine Esports Commission、以下、PEC)の設立を提案しています。PECは、フィリピン国内のeスポーツを規制、運営、促進する責任を負う政府機関として、フィリピン・スポーツ委員会から独立して運営されることが想定されています。提案されているPECには、以下のような権限および機能が与えられる予定です。

    1. フィリピン国内のeスポーツ活動に関する、統一的な方針および規則の策定と実施
    2. eスポーツ産業の中長期的な発展のためのマスタープランの策定
    3. eスポーツに関連する国際大会やイベントの振興
    4. eスポーツのインフラに関する研究および技術革新の推進
    5. eスポーツ発展のための財源の確保
    6. eスポーツ産業支援センター(esports industry support centre)の設立

    下院法案第05401号は2022年10月4日に提出され、以来、政府再編委員会に係属中です。下院法案第03751号は、2025年8月14日に新たに提出されました。

    下院法案第07411号 ―「eスポーツ・ゲーマーのためのマグナ・カルタ」:eスポーツ法の下で提案されている制度的枠組みを補完する形で、第19回議会の下院法案第07411号、すなわち「eスポーツ・ゲーマーのためのマグナ・カルタ」は、eスポーツに従事する個人の権利、利益、福祉に焦点を当てています。

    この法案では、eスポーツを国内または国際レベルで行われる組織的な競技型ビデオゲームと定義づけています。同法案ではまた、eスポーツ・プレイヤーを、プロまたはアマチュアとしてeスポーツ競技に参加する者と定義しています。同法案では、以下のようにeスポーツ・プレイヤーの権利をいくつか列挙しています。

    1. 公正かつ正当な報酬ならびに利益を受ける権利
    2. 性別、性的指向、年齢など、いかなる理由による差別も受けない権利
    3. 安全で健康的な環境のもとで働く権利
    4. 自身のゲーミング・プロフィールおよびペルソナについて知的財産保護を受ける権利

    同法案ではまた、主要な国際eスポーツ大会で勝利を収めたeスポーツ・プレイヤーに対する奨学金給付など、ナショナルeスポーツ・プレイヤーへの特典および優遇措置を定めています。さらにプレイヤーに無料の医療サービスや、契約交渉や知的財産権などeスポーツに関連する法的問題について、無料の法律相談を提供することも規定しています。

    この法案はまた「国家eスポーツ・ゲーマー福祉基金(National Esports Gamers’ Welfare Fund)」の設立を定めており、競技への参加またはその準備に起因する負傷、疾病、障害を負ったナショナル・ゲーマーに対して、経済的支援および奨励金を提供することを規定しています。

    この法案は、規則委員会から青少年・スポーツ振興委員会に付託され、2023年以降、係属中です。

    上院法案第2121号 ―「2023年eスポーツ法」:第19回議会の上院法案第2121号は、同様にeスポーツを定義し、全国的にeスポーツ活動を監督・モニタリングする中央機関として、フィリピン電子スポーツ委員会(Philippine Electronic Sports Commission、以下、PESC)の設置を提案する並行法案です。この法案の下でPESCは以下の責務を負うことになります。

    1. eスポーツの組織および参加者の認定
    2. eスポーツ・イベントに関する統一的な規則および方針の策定と実施
    3. 国際的なeスポーツ大会および交流の振興
    4. eスポーツ分野における科学的研究およびインフラ整備の奨励
    5. 産業の成長を支援するための財源の確保
    6. eスポーツ産業支援センター(esports industry support centre)の設立

    同法案は2023年5月3日に提出され、スポーツ委員会に係属中です。

    立法の見通し

    これら係属中の法案を総合的にみると、eスポーツには、GAB(ゲーム・アミューズメント委員会)による既存の行政命令を超える、専属的なガバナンスおよび政策支援が必要であるという議会内でのコンセンサスが高まっていることがうかがえます。これらの法案が成立すれば、eスポーツに法的承認が与えられ、プレイヤーの権利は強化され、一貫した規制枠組みが制度化されることで、フィリピンのeスポーツ産業にとって転換点となるでしょう。

    VILLARAZA & ANGANGCO (V&A LAW)
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