中国、インド、日本では、特許の有効期間や適用範囲、執行を監督する法律の改善のために、日々努力が行われています。
SEPライセンス料の動向と比較可能な裁判手法
私たちが電子音声・映像の時代に生きていることは疑いの余地はありません。携帯電話、ヘッドフォン、ステレオ、マイク、テレビ、その他の音声・映像機器が常に私たちを取り囲んでいます。

アシスタント・ディレクター
CPIT Patent and Trademark Law Office
北京
Email: jinx@ccpit-patent.com.cn
異なるデバイスが相互運用されるためには、音声・画像の送信が可能なすべてのデバイスが、特定のコーディングとデコーディングの標準規格に沿っている必要があります。これらの標準規格で使用される特許技術が、標準必須特許(SEP)に該当します。
SEPは技術標準の一部であることから、SEPの所有者はFRAND宣言を行う必要があります。つまり、自分たちの特許技術が標準規格に採用された場合、公正で合理的、非差別的(FRAND)な方法で特許をライセンスすることを約束します。
しかし、どのような文章も当然ながら曖昧で、解釈の余地があります。SEPの所有者と実施者の立場は必然的に対立しており、両者はライセンスの交渉中に、相手がFRAND原則に準じていないとして非難し合う事態が、日常的に起こります。その結果、訴訟が世界中で増加しています。急速な技術発展と巨大な市場を持つ中国も、当然ながら例外ではありません。
2024年1月、中国最高人民法院(SPC)はAdvanced Codec Technologies LLC v OPPO Guangdong Mobile Communication Co.について、最終判決を下しました。これはSPCが下した標準必須特許ロイヤリティ率に関する2番目の判決で、音声・映像のコーディングとデコーディング分野での標準必須特許ロイヤリティ率に関する最初の判決になりました。
背景
この紛争は2018年11月に始まりました。Advanced Codec Technologies(ACT)は、OPPOが6件のSEPのライセンス交渉を意図的に遅らせたと主張して、南京市中級人民法院に訴訟を提起しました。ACTは3億4200万ウォン(4800万米ドル)の賠償を求めました。
2019年12月、OPPOは裁判所に反訴しました。OPPOは裁判所に、ACTのライセンス交渉中の行動がFRAND義務に違反していることを認めるよう求めました。OPPOはまた、中国におけるOPPOに関わる標準必須特許のロイヤリティ率を決定し、ACTがFRAND義務に違反したとされることで生じた経済的損失の賠償を命じるよう、裁判所に求めました。
第一審は、本件に関わる6件の特許が標準必須特許であることを認め、OPPOが対応するライセンス料を支払うべきだと判断しました。両当事者は最高人民法院に上訴することを選びました(中国では、技術に基づく知的財産訴訟の第二審は直接SPCに提訴されます)。
判決の要旨
SEPのライセンス料を算出する一般的な方法には、トップダウン型、比較可能な契約型、ボトムアップ型があります。したがって、本件でSPCが最初に解決すべき問題は、いかに算出方法を選択するかの規則を確立することでした。SPCが確立した規則は、当事者が提出した証拠に基づいて裁判所が算出方法を選択するというものでした。
本件では、ACTはこの事例以外の異なる当事者と締結した複数の特許ライセンス契約を提出し、本件には比較可能な契約型を適用するよう、裁判所にはっきりと要請しました。提出された契約とその情報によって、この事例の方向性を比較可能な契約型へと誘導することに成功し、SPCは最終的に、本件では比較可能な契約型を使用することを認めました。
これによって、今後、ロイヤリティ率の適用や適切な算出方法に関する証拠を、積極的に提供するよう、SEPの所有者と実施者に強く促すことになるだろうと、私たちは考えています。なぜなら、当事者が証拠と事実を提出することによって、裁判所による方法論の選択に効果的に影響を与えることができるからです。
最適な比較可能な契約
算出方法が確定したら、次に解決すべき問題は手元にある契約の中から最も適切な比較可能な契約を選択して、それをもとに本件における具体的なロイヤリティ率を算出することでした。これについて、SPCは以下の4つの検討事項を定めました。
- ライセンス交渉の環境
- ライセンシーの類似性
- ライセンスされた特許の類似性
- ライセンス契約の条件の類似性
ライセンス交渉の環境というのは、具体的には取引の両当事者間による交渉の背景と条件を指します。これには、比較可能な契約が自然で友好的な交渉によって締結されたかどうか、例えば、比較可能な契約が訴訟や訴訟の脅威、裁判所による差し止め命令やそのリスクを伴う状況で行われたかどうかなどが含まれます。
言い換えればSPCは、比較可能なライセンス契約を選ぶ際に、合意の上での交渉を通じて得られた契約に、より重きを置くことを確立しました。
ライセンシーの類似性については、SPCはその他の要因の中でも、ビジネスモデル、事業の範囲、ライセンサーと各ライセンシーとの関係などを考慮に入れました。
ライセンスされた特許の類似性とは、例えば、比較可能な契約においてライセンスされた特許が本件の特許と同じか、少なくとも本件の特許をカバーしているかどうか、また、比較可能な契約における特許が本件の特許と数量・品質の点で同じか、類似しているかどうかを意味します。
この判決において、SPCはライセンス条件の類似性を、ロイヤリティ率の算出方法、ライセンスの地理的範囲、ライセンスの期間、ライセンスの方法、ロイヤリティの支払い方法の観点から考慮する必要があることを示しました。
特に、最初の要因(交渉の環境)については、SPCの判決で初めて詳細に分析が行われました。SPCは、比較可能な契約が訴訟、または少なくとも訴訟の脅威と関連しているかどうか、また、比較可能な契約が公正で合理的な雰囲気のもとで締結された契約であるかどうかを考慮する必要があることを明確にしました。
筆者は、この要因に関するSPCの考え方が、米国の仮想交渉アプローチと一定の類似性を持っていると考えています。SPCは、商習慣に基づいて当事者が合意に達したであろうライセンス料に近い金額を裁定する傾向にあります。
本件では、SPCは2つの比較可能な契約に特に注目しました。これらはACTが他の実施者と締結した契約で、ここでは契約B、契約Cとしましょう。
契約Bは、最終的にSPCによって、本件に最も適切な比較可能なライセンス契約として見なされました。その理由は、契約Bの交渉過程でいくつかの訴訟が進行中であったものの、それらの訴訟で依拠された特許は、本件に関係する特許と重複していなかったためです。さらに、それらの訴訟は契約Bの交渉よりもかなり前に起こされたものでした。したがって、SPCはそれらの訴訟が契約Bに与える影響は最小限であると考えました。
言い換えれば、契約Bは他の訴訟の影響を受けずに当事者間の自然で友好的な交渉の結果です。SPCは契約Bが、商業的な判断のみをもとに当事者が締結した契約に最も近いと考えました。
対照的に契約Cは、特許の数、ライセンシーのプロフィール、契約の範囲などのいくつかの重要な要因に関して、本件のライセンス契約とかなり重複していました。しかし契約Cの交渉は、ドイツと米国において契約Cの当事者間の特許侵害訴訟が同時に進行していました。
したがって、SPCの見解では、契約Cは並行する他の訴訟の存在下で締結された契約であり、ライセンサーとライセンシーの商業的な判断のみを反映しているとは見なされませんでした。その結果、最終的に契約CはSPCによって除外されました。
本件は、SEP、ライセンス料の算出方法、FRAND、FRANDの約束の違反など、注目すべき要素がすべて含まれています。今後、長期間にわたって注目されることになるでしょう。筆者は、SPCが本件で確立したSEPのロイヤリティへの裁定に関する規則と方法論が、SEPの所有者と実施者によって慎重に検討され、長期間にわたって、このような案件での指針として検討・引用されるだろうと信じています。

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グローバル特許エコシステムにおけるインドの位置付け
インドの知的財産(IP)の状況は、国際的なイノベーションの舞台における同国の存在感が増していることを反映して、著しい変革を遂げています。強固な法的枠組みと最近の改正により、インドは世界的な特許エコシステムの主要なプレーヤーとしての地位を確立しつつあります。本稿では、インド特許法の重要な側面について、最近の動向、手続き上の細かな違い、特許保有者や出願者に向けた戦略的な考慮事項を詳しく解説します。
外国出願許可

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インドに居住する発明者が海外で特許出願を行う場合は、外国出願許可(FFL)が必須です。この条件は、国際的なイノベーションの目標とのバランスを保ちつつ、国益を保護することの重要性を明確に示しています。
FFLを取得するには、発明の概要をインド特許庁(IPO)に提出して審査を受ける必要があります。IPOが異議なしと判断すれば、通常3週間以内に許可が与えられ、発明者は外国出願を行うことができます。あるいは、発明者は最初の出願をインドで行い、IPOから秘密保持命令が出されない限り、6週間待ってから海外で出願することもできます。重要なのは、FFLは遡って取得することはできないため、特許出願をタイムリーに行うことが必須になります。
最近、特許法の一部規定が非犯罪化されたとはいえ、FFLの要件は依然残されており、違反には重い罰則が科されます。
IPOまたは第三者が違反を発見した場合、発明者は最長2年間の懲役、罰金、またはその両方が科される可能性があります。さらに、インドでの特許出願は取り下げられ、既に付与された特許は取り消されることもあります。
このことは、特許出願者と特許所有者がインドの規制を理解し、遵守することが重要であることを示しています。
特許出願と修正

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ニューデリー
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インドは特許出願において、特に、母国語での出願という条件が経費の増加につながっている他の法域と比較すると、費用対効果の高い環境を提供しています。英語を出願言語として受け入れることで、特許出願の複雑性と費用が大幅に削減されています。インドの公式の出願料は世界平均よりも低く、特許取得を目指す者にとって魅力的な国となっています。
インド特許法の他にはない特徴の一つは、出願手続きにおける柔軟性です。出願者は国内段階で、特に特許性の基準を満たさない可能性のある特定の請求項を取り下げることができます。この戦略的な選択肢があることで、コストを節約し、審査手続きを簡素化することができます。ただし、出願後の補正は厳しく規制されており、当初の明細書で裏付けられた放棄、説明、訂正に限定されています。重要なのは、補正によって請求項の範囲を広げることはできず、当初の出願の一貫性が維持されることです。
審査手続き
インドにおける特許審査手続きは、効率的で出願者に配慮したものになっています。手続きは、優先日から31カ月以内に審査請求を提出することで開始されます。最近の改正により、審査が開始される前に審査請求を取り下げた場合には、手数料の大部分を払い戻す規定が導入され、出願者にとって、より高い柔軟性とコスト削減の機会が提供されるようになりました。
IPOは、特許出願の未処理案件を大幅に削減し、近年では記録的な特許付与数を達成しています。最初の審査報告書が発行されると、出願者は6カ月以内に、提起された異議に対して回答する必要があります。異議が解決されない場合、口頭審理が予定されることがあり、出願者は特許庁に直接、自分の主張を提示することができます。審理の後で決定が下されます。出願が不成立になった場合は、出願者にはIPOに再審請求を提出するか、高等裁判所に上訴するかの選択肢があります。
分割出願
分割出願はインドの特許法において不可欠なものであり、出願者は単一の特許出願で開示した複数の発明を保護することができます。しかし、これらの出願は二重特許に関する異議を回避するために、明らかに異なる発明であることを示さなければなりません。その証明責任は出願者にあり、分割出願の請求項を親出願の請求項とは明確に区別する必要があります。
審査中での請求項の修正は認められていますが、一定の制限があります。したがって、分割出願の請求項は、最初から明確で異なる範囲において作成することが望ましいです。分割出願は、分割される出願が審査中である間にのみ提出できるため、親出願が突然許可されることで機会を逸してしまわないように、早期に提出することが重要です。
外国出願の開示
インド特許法の下では、出願者は同一または類似した発明に関連する外国特許出願は、その詳細を開示することが義務付けられています。この開示は、インド出願の提出時またはその後6カ月以内に、様式3を使用して行わなければなりません。出願者は、最初の審査報告書を受け取ってから3カ月以内に、この情報を更新する義務もあります。
IPOは最初の開示が不十分と見なした場合、様式3の更新を要求することがあります。この様式3の更新の提出には3カ月の猶予期間が与えられており、特許取得手続きにおいて透明性が重要であることが強調されています。この開示要件は最近簡素化されたもので、関連する国際出願すべてについてIPOが完全に情報を把握することを保証し、同時に出願者に過度の負担をかけないようにしており、インドの特許制度の完全性を維持するための重要な要素です。
実施状況報告書
インド特許法において、実施状況報告書の提出義務は最も重要な特徴で、付与された特許の実用性を重視していることが反映されています。最近の改正により、これらの報告書の提出頻度が年1回から3会計年度に1回へと延長され、特許権者の管理上の負担が軽減されました。
改正された規則131条の下で導入された新しい様式27は、売上高や収益データの開示要件が削除され、実施状況報告書の手続きが簡素化されました。特許権者は、該当期間中に特許が実施されたかどうかを申告するだけで済むようになりました。もし特許が実施されていない場合は、特許権者は実施されていない理由を任意で提供し、該当する場合はライセンスの連絡先情報を提供することになるかもしれません。
このような簡素化にもかかわらず、新しい規則に基づく期日の解釈に関して、いくつかの混乱が生じました。IPOはこの問題に関して、FAQを公開して明確化を図っています。2023年3月31日以前に付与された特許については、実施状況報告書の提出期限は2026年9月30日です。この報告書では、2023年4月1日~2026年3月31日の期間をカバーする必要があります。延長は2026年12月31日まで、または2027年6月30日まで可能で、追加料金が必要です。2023年4月1日~2024年3月31日に付与された特許については、期限は2027年9月30日であり、さらに延長も可能です。
行使
インドにおける特許権の行使は、特に訴訟の点において著しい進展を遂げています。インドの裁判所は国際的なベスト・プラクティスを採用しつつ、それを地元の法的・文化的環境に適合させています。最近の画期的な判決は、インドが特許権者に対して不親切である、または複雑な特許紛争に対処できないという認識を払拭する上で、重要な役割を果たしました。顕著な進展を見せているのが、標準必須特許(SEPs)をめぐる訴訟の処理です。インドの裁判所は、特許権者と実施者の両方が確実に公平に扱われるように、バランスの取れたアプローチを示しています。専門の商業裁判所や知的財産部門を設立することによって、特許紛争の解決をさらに加速させ、迅速な判決と法的確実性の向上につながっています。
今後の方向性
インドの特許環境は、成長と近代化への明確な軌道に乗っています。特に行使と手続きの効率性という面では課題は残っているものの、インドは近年、大きな進展を遂げています。特許出願の未処理案件の削減、手続き要件の簡素化、透明性重視の強化が、より強固で予測可能な特許制度に貢献しています。
インドが特許法と実務をより改善し続けることで、利害関係者は、法規制の枠組みがさらに改善することを期待できるでしょう。これらの発展と、インドがイノベーションやテクノロジーをより重視する姿勢が一体となることで、特許権者が世界最大で最もダイナミックな市場の一つで自らの知的財産を保護しようとする際に、インドはますます魅力的な目的地として位置づけられます。
結論として、インド特許法の細かな特徴を理解し、最近の動向を遅滞なく把握することで、特許権者や出願者は、イノベーションが進む国際経済の中心的な役割を果たす準備が整ったこの法域で、貴重な知的財産権を確保することができるのです。

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日本の特許における属地性の拡大
近年の日本における判例法の進歩により、状況次第では、日本の特許が国外のインターネット関連の活動に及ぶ可能性があります。

弁護士
大野総合法律事務所
東京
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2023年5月26日、知的財産高等裁判所は、サーバと端末がインターネットなどのネットワークを介して接続され、全体として有機的に動作するネットワークシステムの発明に関する日本の特許権の属地性について、大合議による注目すべき判決を下しました(株式会社ドワンゴ対FC2,INC.〔(ネ)第10046号〕)。
本判決は、(ネットワークシステムの要素の一つである)サーバが日本国外にあっても、後述する4つの要素やその他の関連する状況を考慮して、その行為が日本で行われたとみなされる場合には、新しいネットワークシステムを作成する行為が日本特許法第2条3項1号の「生産」に該当すると結論付けました。
本判決によれば、サーバなどの請求項の構成要件が日本国外にあっても、残りの構成要件が日本にある場合、日本の特許権がそれに及ぶ可能性があります。
事案の概要
控訴人であるドワンゴ(一審原告)は、コメント配信システムに関する特許第JP6526304号の特許権者です。被控訴人であるFC2,INC.(一審被告)は、インターネット上で動画・コメントの配信サービスを運営しています。
控訴人は、被控訴人が運営する動画配信サービスに関連するシステム(被告システム)が特許発明の技術的範囲に含まれ、被控訴人が米国にあるサーバから日本にあるユーザ端末にファイルを送信する行為が、システムの「生産」(日本特許法第2条3項1号)に該当し、特許発明を侵害していると主張しました。
訴訟の争点
この案件では、被告システムの一部であるサーバが米国にあるため、日本にあるユーザ端末だけでは本特許の請求項の全ての要件は満たしません。被控訴人が被告システムを「生産」(日本特許法第2条3項1号)したか否か、そして日本の特許権がこのような場合に被告システムに及ぶか否かが争点となりました。
属地主義の原則
日本の特許にも属地主義の原則が適用されます。この原則は、各国の特許権の成立、移転、効力などは当該国の法律によって定められ、特許権の効力は当該国の領域内においてのみ認められるというものです。
サーバが米国にあり、ユーザ端末が日本にあるため、米国と日本の両方に存在する被告システムを作成する行為が日本特許法第2条3項1号の「生産」に該当するかどうかが、属地性に関連する争点でした。
裁判所による判決

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大野総合法律事務所
東京
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上記の争点に関して、原審裁判所である東京地方裁判所は、日本特許法第2条3項1号の「生産」に該当するためには、属地主義の原則のもと、特許発明の全ての要素を満たすものが日本で新たに生産される必要があるとして(ドワンゴ株式会社対FC2,INC.、東京地方裁判所2019年〔(ワ)第25152号、2022年3月24日判決〕)、被控訴人(一審被告)は日本で被告システムを「生産」していないと結論付けました。
これに対し、控訴審判決では、被控訴人が米国にあるサーバから日本にあるユーザ端末にファイルを送信する行為が、日本特許法第2条3項1号の「生産」に該当すると結論付けました。
本判決は、ネットワーク型システムの発明に関連する特許権を適切に保護する観点から、新しいネットワーク型システムを作成する行為が特許法第2条3項1号の「生産」に該当するかどうかを判断する方法を、以下の2つの理由を踏まえて示しました。
第一に、本判決は、ネットワークシステムではサーバが日本国外にあることがいまや一般的であり、サーバが日本国外にあっても、端末が日本にある場合には日本でシステムを利用することが可能であり、そのような利用は、日本で発明を利用することで特許権者が得るべき経済的利益に影響を及ぼす可能性があるとしました。
したがって、サーバが日本国外にあるという理由だけで、新しいネットワーク型システムを作成する行為が特許法第2条3項の「生産」の範囲に含まれないと結論付けるために、属地主義の原則を厳格に解釈することは特許権の保護が不十分になることから、妥当ではありません。
第二に、本判決は、ユーザ端末が日本にあるという理由だけで、新しいネットワークシステムを作成する行為を特許法第2条3項の「実施」と解釈することも、特許権の過剰な保護をもたらし、経済活動に支障をきたすため妥当ではないとしています。
これら2つの理由に基づいて、本判決は、新しいネットワークシステムを作成する行為に関して、ネットワークシステムを構成する要素の一部であるサーバが日本国外にあっても、(1)行為の具体的な方法、(2)発明におけるシステムの構成要件のうち国内にあるものの機能や役割、(3)システムを利用することによって発明の効果が得られる場所、(4)システムの利用が発明の特許権者の経済的利益に及ぼす影響、その他の関連する状況を裁判所は考慮すべきであり、その行為が日本の領域内で行われたと評価できる場合には、特許法第2条3項の「生産」に該当すると判断すべきであるとしました。
その上で本判決は、
(1)については、米国にあるサーバからのファイルの送信が、日本にいるユーザによるファイルの受信と一体となって被告システムを完成させるため、送信と受信は日本で行われたとみなすことができるとしました。
(2)については、本判決はまた、日本にあるユーザ端末が発明の主要な機能を実現するために必要な構成要素の機能を果たしているとしました。
(3)については、本判決は、被告システムが日本からユーザ端末を介して利用でき、発明の効果が日本で発現しているとしました。
(4)については、本判決は、被告システムの日本からの利用が、本発明のシステムを日本で利用することによって控訴人が得るべき経済的利益に影響を及ぼす可能性があるとしました。
(1)~(4)を考慮し、本判決は、被告システムを作成する行為が本発明に関して日本特許法第2条3項1号の「生産」に該当すると結論付けました。
本判決の影響
本判決は、考慮すべき要素(1)~(4)を列挙し、ネットワークシステムを構成する要素の一部が日本国外にあるとしても、新しいネットワークシステムを作成する行為は、日本特許法第2条3項1号に基づく「生産」に該当する可能性があるとしました。
これは、ネットワークを介して日本でネットワークシステムを作成する際に、たとえ一部の要素が日本国外にあるとしても、日本の特許を侵害しないように、注意を払う必要があることを意味します。
結論
本判決の下では、ネットワークシステムに関連する事業を行う際に、一部の構成要件が日本にある場合、日本の特許を侵害する可能性があります。したがって、そのような事業者は、本判決の(1)~(4)の考慮すべき要素に基づいて、日本の特許を侵害するリスクを適切に評価することが推奨されます。

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