シンガポールにおける倒産および事業再生の最新動向

    By Shem Khoo • Mimi Ahn • Veronica Teo/Focus Law Asia
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    シンガポールの包括的な2018年「倒産、再編、精算に関する法律」(IRDA)は、2020年7月30日に施行され、それまで別個の法体系で規定されていた法人および個人の倒産手続きを統合しました。IRDAはまた、国連国際商取引法委員会の国際倒産モデル法(以下、モデル法)をシンガポール法に組み入れたものです。

    IRDAは、新型コロナウイルス感染症パンデミックによってもたらされた混乱や倒産の長期的な影響と相まって、シンガポールの裁判所での倒産事案をめぐる訴訟件数が増加する結果となっています。本稿では、シンガポールの最高裁判所であるシンガポール上訴裁判所(SGCA)の4つの判決を考察していきます。

    実際の債務超過の判定基準

    Shem Khoo
    Shem Khoo
    マネージング・ディレクター
    Focus Law Asia
    シンガポール
    Tel: +65 6950 0842
    Email: shemkhoo@focuslawasia.com

    2021年のSun Electric Power対RCMA Asiaのケースにおいて、SGCAは、当時の会社法第254条第2項(c)〔現IRDA第125条第2項(c)〕の下で、会社が債務支払不能にあるか否かを判断する基準を明確にしました。同裁判所はこの条項に基づいて、実際に支払不能性を判断する唯一かつ決定的な基準がキャッシュフロー・テストであると判示しました。

    キャッシュフロー・テストとは、「会社の流動資産が流動負債を上回り、債務の支払期日にすべての債務を履行できるか否か」を評価するものです。「流動資産」および「流動負債」は通常、12カ月以内に現金化または支払い期日を迎えるものを指します。SGCAは、会社のキャッシュフローの評価にあたっては柔軟なアプローチを取るべきだと強調し、以下のような要素を挙げていますが、あくまで例示であり、これらに限定されるものではありません。

      1. 支払い期限が到来している、または合理的に近い将来に到来する債務額
      2. 支払い請求がなされているか、または請求される可能性があるか
      3. 債務不履行の有無、不履行の金額および期間の長さ
      4. 清算手続開始からの経過時間
      5. 流動資産および合理的に近い将来に現金化可能な資産の価値
      6. 予想される純キャッシュフローに基づく会社の事業状況
      7. 合理的に近い将来に見込まれるその他の収入または支払い
      8. 資産不足を後日返済可能な借入れによって補填できるかを判断するための、会社と、銀行および株主等、将来の貸手との間の取り決め

    モデル法の適用

    Mimi Ahn
    Mimi Ahn
    ディレクター兼韓国デスク責任者
    Focus Law Asia
    シンガポール
    Tel: +65 6890 0843
    Email: mimiahn@focuslawasia.com

    2021年のUnited Securities Sdn Bhd(管財・清算中)対United Overseas Bankのケースにおいて、SGCAはモデル法第20条第1項および第2項を検討し、外国倒産手続の承認後にシンガポールの法的手続の停止を認めるための要件を明確にしました。

    SGCAは、訴訟手続の停止は、シンガポールにおける同種の倒産手続において停止が認められる場合に限って承認されると判示しました。言い換えれば、手続の停止が認められるか否か、もしそうならば認められる範囲はどこまでかについては、引き続きシンガポールの国内倒産法が適用されるということです。

    そのため、シンガポール裁判所がマレーシアの清算手続を、シンガポールでの訴訟手続きを停止できる外国の主たる手続として認めていたにもかかわらず、United Overseas Bank(UOB)がUnited Securitiesに対してシンガポールで提起した訴訟手続の停止は認められませんでした。これは、UOBが“一応(prima facie)”有担保債権者であると認められたためです。シンガポール法の下では、たとえ債務者の清算手続に伴って訴訟手続の停止が生じていたとしても、担保権者が担保権を実行するための訴訟を継続することについては、裁判所の許可が容易に得られます。

    SGCAはまた、モデル法第2条(h)の下で外国手続が承認されるために必要な累積的要件をあらためて確認しました。それは以下の通りです。

      1. 債権者全体の権利、義務および請求権の検討と処理を目的とする集合的手続でなければならない
      2. 倒産または財政的困難を扱うか、それに対処するという点において、倒産に関する法律に基づくものでなければならない
      3. 外国裁判所が債務者の財産および業務について管理または監督しなければならない
      4. その目的が債務者の再建または清算でなければならない

    仲裁対再編

    倒産制度と仲裁制度の相互作用の重要性は、2025年のSapura Fabrication Sdn Bhd対GASのケースからも明らかです。ここでは当事者が和解に達し、上訴が取り下げられたにもかかわらず、SGCAは判決を下しました。この判決において、SGCAはシンガポール裁判所が仲裁に有利なモラトリアムの適用除外(カーブアウト)を自動的に認めることはないと明確に示しました。

    このケースは、仲裁請求を進めることを可能にするために自動モラトリアムからの適用除外の申請を含むものでした。SGCAは、このような適用除外を認めることは裁判所の裁量事項であると判示しました。

    適用除外を認めるためには「例外的事情」がなければならないとの主張を退け、SGCAは、シンガポール裁判所が、2023年のWang Aifeng対Sunmax Global Capital Fund 1 and anotherのケースで定められた要素を考慮することを明確に示しました。これらの要素には以下が含まれますが、これらに限定されるものではありません。

      1. 適用除外申請の時期
      2. 請求の性質
      3. 既存の救済手段
      4. 請求の根拠
      5. 債権者または再編手続の円滑な遂行に対する不利益の有無
      6. 許可の付与により大量の訴訟が誘発される可能性、スキーム会社の資源に対する手続費用の妥当性、多数債権者の見解など、その他の諸要素

    Sapura Fabricationのケースでは、仲裁請求が複雑であったため債権認定手続には適さないと判断されました。したがってSGCAは、もし上訴が続行していたとしても、上訴を棄却し、モラトリアムの適用除外(カーブアウト)を認める判断をしただろうとの見解を述べました。

    スキームと債権者

    Veronica Teo
    Veronica Teo
    アソシエイト・ディレクター
    Focus Law Asia
    シンガポール
    Tel: +65 6890 0868
    Email: veronicateo@focuslawasia.com

    このケースは、コロナ禍中に経営破綻し、問題となった石油取引会社Hin Leong Trading(HLT)の清算で生じたものです。2025年のUT Singapore Services Pte Ltd対Goh Thien Phong and othersのケースにおいて、HLTの清算人は、HLTの資産約8000万米ドルを仮配当として債権者に分配するためのスキーム・オブ・アレンジメントを提案しました。

    注目すべきは、このスキームが、担保権の存否が争われている債権者に対しても、その担保権の事前の簡易判定なしに配当を行うことを規定していた点です。したがって、SGCAは、債権者の権利が不確実であるか、係争中の場合におけるスキーム・オブ・アレンジメントでの債権者の分類について判断を示しました。

    SGCAは、担保権の存否や内容が不確実で係争中の債権者についても、スキーム・オブ・アレンジメントにおいて単一のクラスにまとめることができると判示しました。

    この文脈において、債権者の権利を評価するための適切な比較対象は、債権者が自らの請求を確定するために訴訟を提起した場合に直面するであろう状況でした。その状況には結果の不確実性および関連する訴訟費用が含まれていました。

    適切な比較対象は、各債権者の確立された権利および優先順位に従った資産の分配ではありませんでした。したがって、本スキームは、担保権に関して不確実な請求を妥結する内容となっていました。

    上記の見解に従い、SGCAはまた、こうした不確実な請求を対象とするスキームについては、特に請求が複雑で簡易判定に適さない場合、分類のためにそれらの請求を決定する組み込み型の審理メカニズムを備える必要はないと判示しました。

    債権者による多様な請求から生じる複雑さ、並びに、関連する費用、財産価値が希薄化する可能性を考慮した上で、SGCAは、HLTの清算人が提案するスキームがHLTの債権者に重大な利益を提供するものであるとして、そのスキームを支持しました。

    今後の展望

    シンガポールは、倒産および債務再編に関する主要な国際的な拠点となるという野心を明確に掲げてきました。2021年のIRDA導入後も、事業再編および倒産の枠組みは改良され、発展し続けています。

    2025年3月という直近のタイミングにおいて、シンガポールの企業再編および倒産制度の強化を目的とする委員会は、司法管理制度の強化、スキーム・オブ・アレンジメントにおけるクロスクラス・クラムダウン基準要件の改善、全体としてより効率的な債務再編の実現等を目的とする9項目の勧告を提出しました。

    今後もさらなる立法上の改善や判例法上の実質的な進展が期待されます。

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