投資家やその法律顧問たちは、アジアで最も注目されている不動産市場に注目していますが、そこには独自の課題もいくつか存在していると、Brian Yapは伝えています。
アジアにとって2025年は、継続する地政学的な不確実性と、トランプ政権の世界的な相互関税政策に象徴される貿易上の不確実性によって、国境を越えた課題に直面しています。これにより、この地域の先進市場および新興市場の双方に影響が及んでいます。しかし、不動産分野はアジア各地で活発な動きを見せており、この地域やグローバルな機関投資家はホスピタリティ、物流、住宅、工業、商業など、多様なアセットクラスに資本を投入しています。
日本とオーストラリアはアジア地域の不動産投資を牽引しており、ブラックストーンが西武ホールディングスから複合施設「東京ガーデンテラス紀尾井町」を26億米ドルで取得した案件や、ブルックフィールド・アセット・マネジメントがオーストラリアの高齢者向け住宅運営会社AveoをThe Living Companyに25億米ドルで売却した案件など、世間の注目を集める大型取引が相次いでいます。インド、シンガポール、韓国、マレーシアでも、この地域やグローバルな機関投資家による活発で国境を越えた不動産投資が展開されています。
シドニーのClayton Utzの不動産パートナー Eva Oraham氏は、自身の事務所が多くの日本およびシンガポールの投資家に対して、オーストラリアでの不動産取引について助言していると述べています。
昨年末、Oraham氏は、日本上場の多国籍商社である住友商事が、オーストラリアの不動産に初めて投資する際のアドバイザーの一人を務めました。この投資案件は、住友商事がMirvacとの合弁で、シドニーのウェスト・ペナント・ヒルズのHighforest住宅開発(165戸の戸建て・連棟式住宅および249戸のアパートメントで構成)に参画するものでした。
Asia Business Law Journalが、アジア太平洋地域の9つの法域にまたがる不動産分野のシニア弁護士に取材を行った際、繰り返し話題に上ったのが「ニュー・エコノミー」や「オルタナティブ」と位置づけられる、ある一つのアセットクラスでした。すなわち、データセンターです。
データセンターのブーム
「(日本において)投資家が注目している多様なアセットクラスの中でも、現在最も関心を集めているのは、ホスピタリティとデータセンターのアセットです」と、Greenberg Traurigのアジア不動産プラクティス責任者であり、東京で国際不動産やストラクチャード・ファイナンスを専門とするJoel Rothstein氏は語ります。
西村あさひ法律事務所の不動産プラクティス・パートナーの前田憲生氏も、データセンターは投資家の間で「非常に」注目度の高い投資の機会になっていると指摘しています。同氏は、投資規模の大きさゆえに、データセンター案件は通常、複数の融資トランシェを用いた資金調達が行われるため、債券などを通じた多様なデータセンターへの投資の機会が生まれると話します。
「データセンターは不動産投資の一種と見なされますが、非常にオペレーショナルな資産です」と前田氏は言います。「データセンターにはプロジェクト・ファイナンス型の資金調達を活用した投資機会がある一方で、ホテルや住宅、オフィスビルなどの他の不動産資産は通常、ノンリコースの不動産融資によって資金調達が行われます」
グローバルなITサービスおよびコンサルティング企業であるIBMは、データセンターを、アプリケーションやサービスを構築、運用、提供するためのITインフラを収容する物理的な部屋、建物、または施設と定義しています。また、これらのアプリケーションやサービスに関連するデータの保存と管理も行います。
Dealogicのデータによれば、2023年初頭から本年8月19日までに、アジアでは合計で108億米ドルに上る、10億米ドル規模のデータセンター取引が5件発表されています。これには、グローバル投資会社KKRとシンガポールの統合通信サービスプロバイダーSingtelが、シンガポールに本拠を置くデータセンター運営会社STT GDCの非公開株式を12億9000万米ドルで共同取得(昨年完了)した案件も含まれます。また、昨年6月に発表された、米国の特別買収目的会社のCartica Acquisitionがインドのデータセンター・プロバイダーNidar Infrastructureと27億5000万米ドルで合併する案件は、本年10月に完了予定です。
日本から数千㎞離れたインドでも、不動産ポートフォリオの拡大を目指す投資家の関心が高まっています。米国を拠点とするグローバル商業不動産サービス・投資会社のCBREと英国発祥のグローバル不動産仲介会社のSavillsによれば、この成長は、堅調なプライベートエクイティ投資の流入と住宅販売によって支えられています。
データセンターは、不動産ポートフォリオを拡大する投資家にとって重要な焦点となっていると、Khaitan & Coのニューデリー・オフィスで不動産プラクティス・グループのパートナーを務めるAvnish Sharma氏は語ります。
「データセンターにも多くの関心が集まっており、主にムンバイとチェンナイに集中しています」とSharma氏は言い、ブラックストーンによるインドでの独自データセンター・プラットフォーム「Lumina」の立ち上げなどを例に挙げています。「これは主に、これら(沿岸都市)が最良の海底光ファイバーケーブル接続を提供しているためです」
香港では、過去2年間は不動産活動が全体的に沈静化していましたが、直近の四半期ではその活動や取引量が大幅に増加したと、JSMの不動産弁護士陣は述べています。
JSM香港オフィスの不動産プラクティス・パートナーであるEugene Wong氏は、同氏のチームが不動産関連の不良債権案件、特に銀行の不良債権執行、資産売却における管財人の代理、銀行の執行手続き、不良資産の取得を検討する潜在的な買い手の代理業務などで多忙になっていると語りました。
Wong氏は、自身の事務所でもコールドストレージ、データセンター、物流、セルフストレージ施設など「ニュー・エコノミー」資産への関心が高まっていると言います。この関心の高まりにより、JSMの不動産プラクティスではファイナンス関連業務が増加しています。
香港およびクロスボーダー不動産取引のファイナンスを専門とするパートナーのJasmine Chiu氏は、ディール・オリジネーションの観点から、新たな投資資金がオルタナティブ・アセットクラスに流入していると語ります。「新規取引の資金調達において、銀行は慎重であり、データセンター、コールドストレージ、学生寮や学生向け住宅などのオルタナティブ資産を好む傾向があります」
では、なぜこの地域のさまざまな場所で、データセンターが急速に増えているのでしょうか?
「AIやハイパースケール・クラウド事業者の影響で、データセンターは近年、多くの外国人投資家にとって強力な戦略的資産として注目されています」と、ソウルのYulchonのコーポレート・ファイナンスグループの不動産・オルタナティブ投資チームの責任者で、パートナーのTae Jin Cha氏は述べています。
Rajah & Tann Singaporeの不動産プラクティスのシニア・パートナーであるNorman Ho氏は、データセンターはデータ保存の需要が増加していることにより、非常に活発な分野になっていると言います。また、クアラルンプールを拠点とするWong & Partnersの不動産プラクティス・グループのパートナーであるAi Leen Tang氏は、データセンターをデジタル化の進展とAIの利用拡大の中で不可欠な存在であると表現しています。
課題
ABLJの取材に応じたシニア弁護士陣によると、投資家がデータセンターを取得する際、商業ビルやホテルなどの従来型の不動産資産を取得するときとは異なる経験をするといいます。
GreenbergのRothstein氏は、日本は電力が確保された開かれた市場である一方で、データセンターの取引は複雑で莫大な資本を必要とするため、構想から完成に至るまで、自身の事務所の支援が必要となる課題がしばしば生じていると言います。
こうした課題の一つに、データセンター・プロジェクトの建設・開発に必要な開発権限や承認の取得があります。データセンターは比較的新しいアセットクラスであるため、既存の建築規制やゾーニング規制では、特定の土地にデータセンターを建設可能か否かが明確に示されていないと、Rothstein氏は指摘します。
「その結果、私たちは、データセンター・プロジェクトの推進するために、クライアントが関係当局から必要な開発権限や承認を取得できるか、またその手続きを確認するサポートを頻繁に求められています」とRothstein氏は語ります。
マレーシアを拠点とするWong & PartnersのTang氏は、過去18カ月間に自身の事務所が多数のデータセンター取引に携わり、国内で大規模な土地購入を目指すテック企業を支援してきたと言います。Tang氏はまた、マレー半島全域でWong & Partnersが今年上半期に、5件のデータセンター取引のクロージングをサポートしたことも付け加えました。
Savillsの2025年第1四半期の投資四半期報告書によると、マレーシアは特にデータセンター分野で引き続き好調であり、Microsoft、Google、Open DCによる注目すべき用地取得が複数行われたと指摘しています。
Tang氏は、マレーシアのデータセンター投資への投資家の関心の強さは、同国に適切な土地が豊富にあることや、シンガポールに近いことなど、いくつかの要因によるものだと説明しています。「そのため、(データセンターは)とりわけ私たちが多忙を極めている分野であり、私の不動産業務の80~90%を占めています」とTang氏は語ります。「特にジョホール州は投資家の強い関心を集めており、データセンター投資のハブとして非常に注目を集める場所となっています」
Tang氏は、データセンター開発の多くがまだ未開発地(グリーンフィールド)であるために、新たな規制やガイドラインが導入され、それにより新たな課題が生じていることにも触れています。データセンターは通常、膨大な電気と水を消費することから、これらの資源の持続可能性も懸念されています。
こうした懸念に対処するため、マレーシア政府は連邦レベルと一部の州レベルの両方で新たな要件を導入し、データセンターの計画・開発には特定の承認を取得する必要があるとTang氏は述べています。
「通常、私たちはデューデリジェンスの一環として、データセンターの運営に必要な水と電力が開発用地に十分に供給されているかを確認するよう、クライエントに助言しています」とTang氏は語ります。「例えば、ジョホール州には、ジョホール・データセンター開発調整委員会があり、開発者は土地取得とデータセンター開発を進める前に、同委員会から事前承認を得る必要があります」
タイでもデータセンターは現在、活発な分野となっており、バンコクのTilleke & Gibbinsの企業・商事グループのパートナーで、不動産プラクティスの責任者であるChaiwat Keratisuthisathorn氏は、昨年以降、データセンター用地の取得に対する関心が大幅に高まり、問い合わせが著しく増加していると言います。
「(データセンターの分野は)まだ初期段階ですが、データセンター開発のための土地の取得に大きな関心が寄せられており、その後で、必要な電気通信や関連する許認可の申請が行われています」とKeratisuthisathorn氏は語ります。「私たちの不動産プラクティスは、現在こうした取引のために非常に多忙な状況です」
オーストラリアを拠点とし、高速インターネット、データセンター、クラウドサービスを網羅するグローバルな独立系ディレクトリのCloudsceneによれば、この地域のデータセンター・ハブであるシンガポールには現在99のデータセンターが設置され、548のサービスプロバイダーが活動しています。
シンガポールで事業を展開するKing & Wood Mallesonsは、7月16日付の「アジア太平洋地域におけるデータセンターの機会をナビゲートする - シンガポール」と題する報告書を発表しました。その中で、シンガポールには強力な海底ケーブルのインフラが備わり、外国資本による完全所有が認められ、アジアで事業を提供するハイパースケーラーや事業者を対象とした税制優遇措置があることに言及しています。
Rajah & Tann SingaporeのHo氏は、シンガポールにある多くのデータセンターは、工業用地を管理する政府機関のJurong Town Corporation(JTC)が所有する土地に立てられているとABLJに語っています。
「データセンターに投資・開発したいのであれば、JTCの承認を得る必要があります。(JTCは)また、ある地域の工業用地の供給状況を検討したり、データセンター開発のための地域を指定したりしています」とHo氏は言います。「つまり、どこでも好きな場所にデータセンターを開発できるわけではないということです」
Ho氏は、自身の事務所が助言を提供してきたデータセンター案件では、主な焦点は、特定の事業運営に関する容量の確保、土地の権利、規制当局からの承認の取得など、現地の土地問題だったと付け加えました。これには、公共インフラの確保や、特に容量配分や開発期間に関連する、データセンターに関するより具体的な問題への助言も含まれています。
ASEANにおけるシンガポールの近隣国であるベトナムは、工業・住宅部門での堅調な実績や物流資産への安定した需要が評価され、Savillsに特に注目されています。また、米国に拠点を置くグローバル商業不動産サービス企業 Cushman & Wakefieldが今年7月に発表したレポートによれば、経済が急成長するベトナムのコスト収益率はシンガポールに次ぐ高水準で、アジアにおけるデータセンター投資先として急速に台頭しています。
ホーチミン市にあるLNT & Partnersの不動産・インフラストラクチャ・プラクティスグループの責任者で、パートナーのTran Thai Binh氏は、データセンター分野へ投資する投資家が直面する主な課題の一つとして、今年6月に可決された同国の新たな個人データ保護法(PDPL)の遵守があると、自身の法律事務所は認識していると述べています。
「この法律には、解釈と運用の面でいくつか不確実性が残されています」とTran氏は語ります。「例えば、ベトナム政府、国家の安全保障や国防、またはベトナムにおける組織や個人の合法的利益に反すると見なされる方法での個人データの収集や利用など、特定の禁止事項について、さらなる解釈上の明確化と公式な指針が必要です」
投資の源泉
アジア各地を席巻したデータセンターへの投資ブームや、より広範な域内不動産投資の流れは、主として、シンガポールを拠点とする、またはシンガポールを経由する、域内およびグローバルな機関投資家によって大きく牽引されていると、この地域の不動産分野のシニア弁護士数名がABLJに語っています。
東京、ソウル、シンガポール、上海で業務を行っているGreenbergのRothstein氏によれば、アジアや世界を拠点とするプライベート・エクイティ・ファンドや資産運用会社は、租税条約や優遇措置を活用できる持株会社の仕組みを利用して、シンガポールにアジアの事業拠点を置いているとのことです。
シンガポールの国内市場は比較的小さいため、投資家は国境を越えた投資の選択肢や機会を探す必要があると同氏は付け加えています。
現地拠点での業務経験から、Rothstein氏はまた、シンガポールには、シンガポールを拠点とする政府系ファンド、不動産開発業者、不動産投資信託(REIT)、ファミリーオフィスなど、不動産投資に積極的に関心を持って注力している、多額の資金を有するさまざまな投資家たちが、すべて一国に存在していると指摘しています。
「一部の国では、REITは設立国以外での投資が制限されていますが、シンガポールではこのような制限は適用されません」とRothstein氏は話します。「ファミリーオフィスの分野では、アジアに拠点を置く富裕層がシンガポールで資産を管理するケースが増えており、不動産はオルタナティブ・アセットクラスとして好まれるようになっています」
10の法域を網羅する地域事務所ネットワークを運営するRajah & Tann SingaporeのHo氏は、管理上の利便性に優れていることから、外国人投資家がASEAN地域での不動産資産投資のためにシンガポールに特別目的事業体を設立することが、非常に多いと述べています。
「私たちは、シンガポールを拠点とし、シンガポールでジョイントベンチャー契約を締結しながらも、その事業自体はベトナムやマレーシアなどの他国で行っているクライアントの代理を務めてきました」とHo氏は語ります。
「彼らは、シンガポールの当事務所を活用して、枠組み契約の内容を取りまとめ、私たちの地域オフィスと連携して地域投資を進めているわけです」
同氏は、地域企業や国際的な企業を含むこのようなクライアントの多くが、シンガポールにアジア太平洋地域の統括拠点を置き、この国をこの地域での不動産およびM&A取引の事業基盤として活用していると付け加えています。これらの地域企業については、その本社は主に中国本土、香港、シンガポールにあるとHo氏は指摘しています。
タイでは、Tilleke & GibbinsのKeratisuthisathorn氏も、中国の投資家がデータセンター投資に非常に積極的であるのを目の当たりにしています。同氏によれば、中国を拠点とする投資家は、特に海外投資や中国の外国為替規制による制限など多くの理由から、シンガポールまたは香港の持株会社を経由して投資するのが一般的だといいます。
「これらの理由に加え、一部のクライアントから、シンガポールと香港はアジアにあって中国語も使用するため、中国の投資家にとって、より魅力的であるとの情報を得ています」とKeratisuthisathorn氏は語っています。
シンガポールに本社を置く企業も、タイのデータセンター投資に非常に積極的であると、Keratisuthisathorn氏は付け加えています。








